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第三章:最強種と
その56 温泉に浸かろう!
しおりを挟む「あ、やべ、とりあえず抜いてきたけど保存できんのかね?」
「魔力を込めた水に漬けておけば問題ありませんよ。これで足りるかどうかの方が問題ですね」
「なるほど、やり方は後で教えてもらうとしよう」
さらに言うなら薬も誰かに作って貰わないといけないのでその人材探しもしないといけないんだよな。
アリーの祖母がそういう図鑑を持っていたというなら、作れそうだし聞いてみるのもいいかもしれない。
ダロンの背中に乗って悠々とトラックまで戻ると、騎士達が焚火をして待っているところに出くわした。
やっぱり寒かったのかと思っていると、
「おお、戻ってきましたか。丁度焼けたところなのでどうですか?」
<ほほう、美味そうだ>
チラリと視界を動かしたら大きな猪の毛皮があった。
襲撃されたのかどうか分からないが、余裕で焼ける肉を見ている限りさして苦労もせず殺ったのだろう。
アロンとダイトが尻尾を振りながら焚火の前で待機するのを横目に、俺はアリアの花をとりあえず助手席のダッシュボードへ入れておく。
「ソリッド様、戻りましたよ」
「お帰りヒサトラ君。それが探していた花かね?」
「キレイですわね。お母様のお薬に一歩近づいたのは良かったです」
「ええ、ありがとうございますリーザ様。残りの情報もあるといいんですけどね。あ、なんか肉を焼いたみたいですけど」
「む、それは気になるな。毒見役も居るし食うか」
トラックから降りた二人と入れ違いに助手席へ乗り込むと、ダッシュボードに花を置いてから俺も合流。
毛皮は他に使えるらしいので、俺が採って来たアイオライトと一緒にコンテナに積んで一路王都へ……ということはなく、ソリッド様達の目的である温泉を探すため下山した後、周辺の町へ移動。
◆ ◇ ◆
「ああ、ここから少し登ったところにありますよ。その乗り物じゃちょっと無理ですが、町から道が出ているんで、歩いて行けます。……というか陛下がなぜここに……」
「天然の風呂というのを体験したくてな」
「いや、ゴルフバッグを担ぐのは関係ないですよ」
「では人払いをするよう町長へ
やはりゴルフセットはおじさんには魅力的なのだろうか?
使い方を知らないのに担いで歩くソリッド様にツッコミを入れるが気にした風もなく歩いていく。
ということで山の麓にある町から徒歩で温泉へ向かっているんだけど意外や意外、道は整備されていて山のある一定の範囲は魔物が入って来れないように壁を作っているのだとか。ついでにキノコや山菜、果実なども採取できるため温泉以外でも潤っているようだ。
「男女別みたいだからわたくし達はこっちですね」
「それと毒見役のフェイシュさんと私、アリーさんですね」
「気を付けてな」
「お風呂だけですから大丈夫ですよ!」
「アロン、一緒に行ってこい」
<うぉふ!>
俺の言葉に威勢よく鳴いてドヤ顔で女性陣の足元に移動。ちなみにダイトも居るが、風呂には入れないのでその辺で寝ててもらう。
<我、不憫>
「なら小さくなる技を掴めって。んじゃ、見張りは頼むぞ、飯はいい物食わせてやるから」
<承知した>
最強種の一角は涎を垂らしながら頷いていた。
風呂へ入ると、ヒノキの湯船に程よい温度のお湯が並々と溢れていて、俺は思わず感嘆の息を漏らした。
「……あ”あ”ー……気持ちいいなこりゃ……」
「熱すぎずぬるすぎずってのがいいっすね。騎士達が全員入れないのは惜しいけど」
「人数が多いから仕方ない。ともあれ、ひとつでも手がかりが手に入ったのは良かったな」
並んで湯船に浸かっていたソリッド様が不意にそんなことを口にし、俺は苦笑しながら答える。
「そうですね。次の休みはデッドリーベアの蜜を採りに行きますし、その後のことも考えないといけませんからまだまだですよ」
「もう少し手伝えればなあ」
「いやいや、ソリッド様にはかなり助けてもらってますから……後は自分でやりますよ」
「そうか? ま、困ったことがあったらなんでも言ってくれ」
ソリッド様はお湯をすくって顔を洗いながらそんなことを言ってくれる。
正直、十分すぎるからお礼を言ってから口まで湯船に浸かって温泉を堪能することにした。
ルアンのヤツ、そろそろ出てこないか?
そう思っていると、同じく黙って温泉に入っていたビリーが口を開く。
「すみませんヒサトラさん、少しお話があるのですが――」
「ん? なんだ?」
◆ ◇ ◆
「普通のお湯と違いますのね?」
「お肌に良かったり、ケガに効いたりするって書いてありましたよ。特殊なお湯みたいです」
「それは面白いですわね」
「サリアさん肌きれいですねー」
ヒサトラさんがオンセンと呼んでいた天然のお湯に浸かってまったりする私達。女性同士で話をするのが久しぶりだなと思いながらアグリアス様を思い浮かべる。元気にされているだろうか?
それにしてもお薬は材料が必要というのは盲点だったかな? でも、この調子でいけばお母様の治療薬はできそうな気がします。材料について聞こうとしたところで、アリーが口を開きました。
「……多分、今頃ビリー達が頼んでいると思いますがサリアさんからもヒサトラさんにお願いをして欲しいんです」
「お願い、ですか?」
「あらあら、なにか深刻な顔ですけど?」
リーザ様の言う通り、アリーが言い出しにくそうな顔で私の顔を見つめていた。しばらく黙っていたけど、すぐに決意の表情に変わり私の手を取って言う。
「……私の家は代々後を継ぐ際、試練があるのですが課せられたものがとても難しく、手をこまねいておりました。ですが、あの『とらっく』なら成し遂げられるかもと思い今回アリアの花について情報を提供しました。もちろんお礼もありますが、この件が終われば報酬もお渡しします」
「ちょ、ちょっと待ってください! あなたは一体何者なんですか?」
「それは――」
その正体に一番反応したのは……リーザ様だった――
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