異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪

文字の大きさ
61 / 85
第四章:ひとまずの解決

その60 高名な魔法使いとの接触

しおりを挟む
 
 ――リキトウ山からアリーの屋敷まで一気に走らせ、家の継承権は見事彼女のものとなった。
 従兄と叔父に関してはあくまでも失敗をした時の保険程度なので片田舎に戻る以外の策は無いとのこと。

 同じ貴族ではあるがやはり上位と下位が存在し、アリーの家の方が上なので従兄が上に行くためには結婚するしかないため躍起になっていたわけだ。

 その時の一部始終を紹介したいと思う。


 ◆ ◇ ◆


 「久しいなアリー。諦めて逃げ帰って来たのかな?」
 「いいえ叔父様。この通り、ドラゴンの巣から鱗を持ち帰ってきました」
 「……え?」

 庭に出て来てもらい、拾ったり貰ったりした鱗に牙、爪などなど……
 それらを全部広げて見せてやると、親子は鼻水を垂らして立ち尽くす。いい表情だ、胸がスッとするやつよ。

 「い、いや、そこに居る者達に手伝ってもらったのだろう? それでは認められない」
 「ああ、それについてはこいつを見てくれ」
 「なんだね君は? ……うお!? 大迫力……!」
 「あ、あ、アリーが危ない!? って、なんだよこれ……魔道具か!?」

 ちょいちょいと肩を叩いて二人に動画を見せてやると、色々なことに度肝を抜かれていた。
 ひとしきり見せた後にスマホをしまう。

 「まあそんなところだ。見ての通り俺達は見守っていただけで、手伝っちゃいない」
 「ですです! 三人がドラゴンさんに襲われながらも手に入れた鱗なんです!」
 「ぐぬ……! これが本物とは――」

 まだ抵抗する素振りを見せる叔父が鱗が本物か分からないと言いかけた瞬間、初老の男性がスッと現れて頭を下げて口を開く。

 「いえ、旦那様。これらは全て本物でございますよ」
 「カーークス!? お前なんですぐ本当のことを言うんだ!? ちょっとは主人のために嘘つくくらいするだろ!」
 「わたくしは旦那様に仕えておりますが、自分の信念に従うべき時はその限りではありません。鑑定の目に自信がありますゆえ、嘘はつけません」
 「おのれ……かっこいいことを……!」
 「パパ、アリーは僕のモノにならないの……!?」
 「「まあ無理だな」」

 一同が声を揃えてそう言うと、叔父が発狂しそうな勢いで持っていた杖を振り上げた。
 しかしその時、庭に影が差す。
 曇りかと思っていると――

 <おお、見つけたぞ人間達! 美味いものを食わせてくれるのを待ちきれんかったからついてきたわい>
 「シルバードラゴン!?」
 「あわわわわわ……うーん……」
 「パパァ!?」


 ◆ ◇ ◆


 ……という感じで完封したというわけ。

 アリーの親父さんもビリーのことは認めていて、結婚を許されていた。
 まあ、ドラゴンが町中に現れたということで現場は一時騒然となったが結果的にすべてが丸く収まってなによりだ。

 「こんな格好で申し訳ない。私が病気でなければアリー達に苦労をかけることもなかったのだが……」
 「いえ、俺も母親が病気で薬を探していますからね気になさらずに」

 ベッドで上半身を起こした状態で親父さんがすまなさそうに頭を下げてきたので、俺達はやんわりと返す。

 「ありがとう。それと窓からドラゴンの頭らしきものが見えるのだがあれは……」
 「お気になさらず」
 「そ、そうかい?」

 サリアが笑顔でやんわりと返す。
 まだ飯を食わせるような間ではないため、ベヒーモス親子と待ってもらっている。町の外に居てもらえばよかったような気がするが、説明もしたし、もはや後の祭りなのでこのままにしとこうと思う。

 そして親父さんは困惑しながら咳ばらいをすると俺達に向かって話し出す。

 「君たちには世話になった。なにかお礼をしたいのだが、要望はないか?」
 「それなら……アリーにとっての祖母にお会いしたいと思っています」
 「母に?」

 そこでアリーが親父さんへ俺の意図を告げる。
 病の治療薬を俺が欲していること、その材料について婆さんが知っていること、そしてそれは親父さんにも使えるであろうという話をした。

 「なんと、そなたの母君もか」
 「病状は違うと思いますけど、治りにくい病気って意味では同じかなと」
 「私はともかく、母君のために作ってもらいたいな。母は屋敷の裏庭に居を構えているので会いに――」
 「話は聞かせてもらったよ! 人類は繫栄する!」
 「おう!?」
 <きゅん!?>

 背後の扉が開いて声高らかに叫ばれ驚く俺達と、目見開いて驚くアリーが口を開く。

 「おばあ様!?」
 「おお、アリーや無事じゃったか良かったわい。私が手伝えれば良かったんだけどねえ」

 アリーの横でカラカラと笑う婆さんがどうやらそうらしい。
 サリアとあまり変わらない身長で顔は相応に老けてはいるが、昔は美人だったろうと思わせる顔立ちで、背筋もピンと張っていて想像の10倍若いと感じた。

 「で、あんたが私の知識を欲しているやつかい?」
 「ああ、俺はヒサトラ。母親を助けるため治療薬を探している異世界人だ」
 「へえ! また、面白いことを言うヤツが来たもんだよ。若いころの爺さんに似ているねえ、もう少し私が若かったら付き合ってもいいくらいだよ」
 「今でも結構美人だと思うけどな? だけど俺にはサリアが居る、残念だ」
 「あ」

 俺がサリアを引き寄せると、婆さんは目を丸くした後、高らかに笑いながら俺の尻をバシバシ叩く。

 「あっはっは! 素直だねあんた! 気に入った、治療薬について話をしてやるよ。もっとも、半分くらいは終わってそうな感じはするがね?」
 「?」
 「ま、ゆっくり話そうか。私はマトリア、この国でもそこそこの名を持つ魔法使いさ」

 そう言ってマトリアさんは俺にウインクをしながらサムズアップをする。元気でノリのいい婆さんだなと思いながら、裏庭にある家へと向かう。
 
しおりを挟む
感想 167

あなたにおすすめの小説

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

処理中です...