私がガチなのは内緒である

ありきた

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4章 高校最初の夏休み

10話 クレープの甘さ

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 ショッピングモールで食品や日用品の買い物を済ませた私たちは、駐車場横の空きスペースでクレープの移動販売車を見かけた。
 ただでさえ二人ともクレープが大好きなのに、店内を歩き回った直後だから小腹が空いている。
 ほのかに漂う甘い香り、写真付きのメニュー表、リーズナブルな価格。
 こんなの、素通りして帰れるはずがない。

「「いただきますっ」」

 いとも容易く誘惑に負けたものの、後悔は微塵もなかった。
 近所とはいえ家に着くまで待ち切れず、さっそく食べ始めることに。
 並々ならぬ期待を抱き、口を大きく開けてかぶりつく。
 私が選んだのは、定番のチョコバナナ生クリーム。
 一口食べた瞬間、濃厚な甘さが口の中いっぱいに広がる。焼きたての生地はもちもちとしていながら歯切れがよく、バナナとチョコと生クリームが混然一体となった甘みは至高としか言えない。
あぁ、幸せ。

「んー、やっぱりクレープは最高だね。おいしすぎて疲れが吹き飛んじゃった」

 決して短くない時間歩き続けた疲労は、クレープを一口食べただけで消えてしまった。

「あたしのもすっごくおいしいよ~! 真菜も食べてみて!」

 萌恵ちゃんが瞳を輝かせながら、手に持ったクレープを私の口元に近付けてくれる。
 期間限定のフルーツミックス生クリーム。パイン、グレープフルーツ、オレンジといった酸味のある果物をふんだんに使った一品で、見るからにおいしそう。
 加えて、いま食べれば萌恵ちゃんとの間接キスになる。
 キス同様、間接キスにも未だにドキドキしてしまう。
 胸が高鳴るのを感じつつ、萌恵ちゃんが口を付けたところに狙いを定めてかぶりつく。
 生地や生クリームの甘さとフルーツの甘酸っぱさが見事に調和していて、まったりしつつも爽やかな味わい。
 萌恵ちゃんとの間接キスという最高の調味料も加わり、再び口の中が幸福で満たされる。

「おいしいっ。萌恵ちゃんも、あーん」

 分けてもらったお返しに、私も萌恵ちゃんの口にクレープを運ぶ。

「ん~っ、おいしいっ! チョコとバナナの相性って最強だよね!」

 萌恵ちゃんが満面の笑みを咲かせる。
 私は心から同意し、深くうなずいた。
 おしゃべりしながらモグモグと食べ進め、たまに食べさせ合いっこしながら家に向かう。
 アパートが見える頃には、欠片も残さずお腹に収まっていた。

「次はおかず系にしてみようか」

「うんっ! たくさん種類あるから迷うな~っ」

 さっそく次回の話をしながら、玄関の扉を開ける。
 ハムチーズや照り焼きチキンも魅力的だけど、生クリームに誘惑されたら勝てないかもしれない。
 甘いのとしょっぱいのを一つずつ買って、半分こするという手もある。

「萌恵ちゃん」

 靴を脱ぐ前に、萌恵ちゃんの名前を呼ぶ。
 それだけで私の意思が伝わり、瞳を閉じて顔をこちらに近付けてくれる。

「ちゅっ」

 クレープを食べた後のキスは、いつもより少し甘かった。
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