ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

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第218話 『西中まつり』(5) at 1995/9/15

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「どう? ツッキー? お客さんの集まり具合は?」

「え、えと……。まあまあ……ってカンジですかね……」


 蒸し暑い視聴覚室の中にいさせるのは体調に影響するだろう、と思って外の受付を任せていた水無月さんのところへ急いで向かうと――確かに、並んでいる人の数はあまり多くなかった。

 例年と比べて来客者が少ない、というわけではなさそうだ。廊下の窓から校舎の裏手の空を見上げると、快晴! とまではいかないものの、良い天気だと言っても過言ではなかった。昇降口から入場してくる人たちを見ても、ぞろぞろまではいかなくてもそこそこ数は来ている。


「何かで注意を惹きつけないと、みんなすぐ二階に上がっていっちゃうみたい。……どーする?」

「うーん……ちょっと考える。サトチンは大事なガイド役だ、戻ってくれ。ここは僕が――」



 その時だった。



『~~~♪』



「――!? この曲って……まさか!」

「さぁ! この先の『電算論理研究部』では、ただいま近未来体験型アトラクション『電脳空間からの脱出』を開催中だ! 君はすべての謎を解き明かして王国を救うことができるのか!」


 僕と水無月さんの視線の先に、とても手作りとは思えない本格的なポスターパネルを掲げ、メガホンで流暢な宣伝文句を並べ立てているジャージ姿の長身の女性と、その足元でどこか見覚えのある黒いラジカセを操作しているもう一人の女性の姿があった。あれってもしかして!


「さぁさぁ! ここでしかできない未来体験をしてみないか!? おい、そこの君たち――!」


 昇降口を入るなりご指名を受けた少年たちがどぎまぎしている。そこに割って入るように僕が現れると、これ幸い、と少年たちは恥ずかしそうに何度もお辞儀をしながら去っていった。


「せ――せりさんにしのぶさん!? ど、どうしてここに……?」

「今すぐ――おっと、古ノ森リーダー君じゃないかね!? ひさしぶりだな! あっはっは!」

「あっはっは! じゃないですよ! ここでなにしてるんですか!?」

「なぁに――」


 せりさんとしのぶさんが言うには。

 大事でかわいい弟の頑張りを見て、自分たちにも何かできないものかと考えていたのだそうだ。メイクにしろ衣装合わせにしろ、今まで自分たちにされるがままに任せていたかえで君が、土下座してまですべての技術を教えて欲しいと頼みこんできた。そんなことなんて、今まで一度もなかった、という。つまりそれだけ、本気なのだ、という気持ちに共感したんだそうだ。


「き、君たちが人手不足なのは知ってるッス」


 人見知りで引っ込み思案な性格だといっていたしのぶさんは、僕をちらちら見ながら言った。


「だ、だから、せりちゃんの弁舌と僕の音楽で、お客さんをいっぱい集めてみせますッスよ! あのゲリラライブの時だって、僕たち二人で、ゼロからあそこまで集めたんッスからね!」

「で、でも――」

「君たち少年少女は、おねーさんたちにもっと甘えたまえ! なぁに、この学校指定のジャージ姿なら、教師だと勘違いしてくれるだろうさ。ちなみに私たちもこの学校の卒業生だからな」


 かっかっか、と高笑いするせりさんの姿は、僕の目にはとても頼もしく映った。
 ほんの一瞬ためらったが、僕はうなずいた。


「……ありがとうございます! 遠慮なく甘えさせてもらいます! ここはお任せしました!」


 ぱしぃん――。

 振り向いた背中に勢いよく平手打ちが入った。それを合図にするかのように、僕は走り出す。


「急げ、古ノ森少年! すぐ長蛇の列を作ってやる! あとは君らのチカラの見せどころだ!」

「はい!」


 じん――とする痛みがじわじわと背中じゅうに広がり、熱く僕を焼き焦がす。
 熱く、熱く――。


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