378 / 539
第376話 汚れ役は底辺男子に適した職業(5) at 1995/12/15
しおりを挟む
「――っ!?」
ロコがはじめて動揺をあらわにし、目の前の少女を恐れるように一歩あとずさった。だが、桃月の怒りはその程度で治まるようなレベルのものではなかったのだ。
「ごめん、ってどういう意味!? あたしの方が一番でごめん!? いつもセンターでまたかって思っちゃってごめん!? あたしの方があんたより上でごめん!? ふざけんなよっ!!」
「あ……」
「対等に扱ってよ! ライバルだと思ってよ! 獲ったら大喜びして、獲られたら思いっきり悔しがりなさいよ! どうしていつも平気なの? あんたのその余裕ぶった顔が大っ嫌い!」
ロコはもう何も言えず、ただ桃月から叩きつけられる言葉を無言で受けるだけだった。
「あんたが来るまで、ロコがあたしの前にあらわれるまでは、あたしがみんなの『一番』だったのに! あたしがどんなに努力してたのか、あんたにはわからないでしょうね、きっと!」
そうか――。
底辺陰キャ男子である僕、古ノ森健太では到底理解できないことだったけれど、それは桃月にとってはとても受け入れがたい、絶対に認めたくなんてない厳しい『現実』だったのだ。
「ロコがやった、ただそれだけで、みんなは納得するじゃない!? 兼部のことだって、今までは認められてなかったもの! 校外活動の班決めだって、みんなロコ目当てで集まって取り合いしてたんじゃない!? ダッチとムロと、モリケンの勝負だってそうだったじゃない!」
「だ、だって、それは――」
「事実でしょ!? 違う、って言い切れるの!?」
「――っ」
「あたしだけ残って、それで喜ぶ奴なんていないもの! だって、『二番目』なんだから!」
「……それは、違うよ、桃月」
僕は、静かに絞り出すように、その言葉を口に出した。
「桃月天音って女の子は、誰にでも愛想がよくって気さくに話しかけられて、いつも優しくてまわりを楽しくしてくれる、そんな女の子だ。誰だっていいからって選ばれてるわけじゃない」
「……っ!」
「そんな桃月だから、守ってあげたい、そう思ってる奴だっているんだ。不器用で、乱暴で、ひねくれてて間違いばっかりしてるけど、君のことが『一番』だ、って、いつも思っている」
こんな時だから、と、僕は都合のいい、耳ざわりのいい言葉だけを並べたつもりはなかった。
実際、桃月はクラスの男子連中にも人気があって好かれている。たしかに少しばかり性的な魅力という一面に偏っているような気がしないでもなかったが、それでも好ましく思われているのは事実だった。むしろ、『高嶺の花的』なロコよりも話しかけやすい、そういう奴もいた。
しかし、それも桃月なりの努力が実った結果だったのかもしれない。
し……ん、とつかの間の静けさが訪れた。
が、桃月の握り締めた拳は震えていた。
「でも……でも……っ!」
桃月は、耐え切れずに血を吐くような叫びを上げる。
「それでもっ! あたしの『一番』には届かなかったのよ! どんなに好きでも、想っても!」
ああ――そうか。
そうだったんだな。
「あたしはムロのことが好きなのよ! ずっと好き! 他の誰よりも! ずっと、ずっと!!」
そう。
『西中まつり』での『電算論理研究部』の出し物の、最後のコンピュータ―相性占いで桃月が相手に選んだのは、一緒に付き合ってくれた小山田徹ではなく、あの室生秀一だったのだから。
そこで――ロコが思いもかけないセリフを放った。
「……でも、モモは……その気持ちを卒業するまで一度も口に出さなかったじゃない。違う?」
ロコがはじめて動揺をあらわにし、目の前の少女を恐れるように一歩あとずさった。だが、桃月の怒りはその程度で治まるようなレベルのものではなかったのだ。
「ごめん、ってどういう意味!? あたしの方が一番でごめん!? いつもセンターでまたかって思っちゃってごめん!? あたしの方があんたより上でごめん!? ふざけんなよっ!!」
「あ……」
「対等に扱ってよ! ライバルだと思ってよ! 獲ったら大喜びして、獲られたら思いっきり悔しがりなさいよ! どうしていつも平気なの? あんたのその余裕ぶった顔が大っ嫌い!」
ロコはもう何も言えず、ただ桃月から叩きつけられる言葉を無言で受けるだけだった。
「あんたが来るまで、ロコがあたしの前にあらわれるまでは、あたしがみんなの『一番』だったのに! あたしがどんなに努力してたのか、あんたにはわからないでしょうね、きっと!」
そうか――。
底辺陰キャ男子である僕、古ノ森健太では到底理解できないことだったけれど、それは桃月にとってはとても受け入れがたい、絶対に認めたくなんてない厳しい『現実』だったのだ。
「ロコがやった、ただそれだけで、みんなは納得するじゃない!? 兼部のことだって、今までは認められてなかったもの! 校外活動の班決めだって、みんなロコ目当てで集まって取り合いしてたんじゃない!? ダッチとムロと、モリケンの勝負だってそうだったじゃない!」
「だ、だって、それは――」
「事実でしょ!? 違う、って言い切れるの!?」
「――っ」
「あたしだけ残って、それで喜ぶ奴なんていないもの! だって、『二番目』なんだから!」
「……それは、違うよ、桃月」
僕は、静かに絞り出すように、その言葉を口に出した。
「桃月天音って女の子は、誰にでも愛想がよくって気さくに話しかけられて、いつも優しくてまわりを楽しくしてくれる、そんな女の子だ。誰だっていいからって選ばれてるわけじゃない」
「……っ!」
「そんな桃月だから、守ってあげたい、そう思ってる奴だっているんだ。不器用で、乱暴で、ひねくれてて間違いばっかりしてるけど、君のことが『一番』だ、って、いつも思っている」
こんな時だから、と、僕は都合のいい、耳ざわりのいい言葉だけを並べたつもりはなかった。
実際、桃月はクラスの男子連中にも人気があって好かれている。たしかに少しばかり性的な魅力という一面に偏っているような気がしないでもなかったが、それでも好ましく思われているのは事実だった。むしろ、『高嶺の花的』なロコよりも話しかけやすい、そういう奴もいた。
しかし、それも桃月なりの努力が実った結果だったのかもしれない。
し……ん、とつかの間の静けさが訪れた。
が、桃月の握り締めた拳は震えていた。
「でも……でも……っ!」
桃月は、耐え切れずに血を吐くような叫びを上げる。
「それでもっ! あたしの『一番』には届かなかったのよ! どんなに好きでも、想っても!」
ああ――そうか。
そうだったんだな。
「あたしはムロのことが好きなのよ! ずっと好き! 他の誰よりも! ずっと、ずっと!!」
そう。
『西中まつり』での『電算論理研究部』の出し物の、最後のコンピュータ―相性占いで桃月が相手に選んだのは、一緒に付き合ってくれた小山田徹ではなく、あの室生秀一だったのだから。
そこで――ロコが思いもかけないセリフを放った。
「……でも、モモは……その気持ちを卒業するまで一度も口に出さなかったじゃない。違う?」
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
元おっさんの幼馴染育成計画
みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。
だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~
root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。
そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。
すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。
それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。
やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」
美人生徒会長の頼み、断れるわけがない!
でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。
※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。
※他のサイトにも投稿しています。
イラスト:siroma様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる