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第413話 大みそか(1) at 1995/12/31
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――きゅきゅきゅっ。
と、気づけば夏休みとほぼ変わらない生活を過ごしているうちに、あっというまに大みそかになってしまっていた。親父とお袋は昨日の晩千葉から帰っており、今は年に一度の大掃除に精を出している。換気扇や網戸窓ガラスなんてところはこんな時でもないと触れもしないものだ。
「ええと……いや、ここはちょっと違ったな……こう。うん、これならわかりやすいな」
僕は僕で、この一年間、つまり『リトライ』の中学二年生の生活を振り返り、スマホに日記のように記録していたメモを整理していた。
「まあ……あらためて見返すと、とんでもない一年間だったなぁ……」
特に使い道があると思って記録しているわけではないけれど、これはこれで、進行中のタスクがどれかを整理するにはもってこいなのだ。
たとえば純美子攻略について。『→完了?』と書かれているところが僕の不安をうまくあらわしていると思う。それからロコの『リトライ』について。『→経過観察中』。読んで字のごとくである。水無月家の絵について。『→報告待ち』。なにげに一番気になっていたりする。
ただこの作業の難点は、はたからみると何もしていないように見える点だ。
なにしろ僕の所持する未来ガジェット・スマホは、『リトライ者』にしか見えないわけで。
「ねぇ、健太! ヒマだったら、お届け物を頼まれてほしいんだけど? いいわよね?」
「ヒ――ヒマってわけじゃ――! ……い、いやいやいや! お母様のためなら喜んで!」
「なによ、気持ち悪いわねぇ」
急に手のひらを返したように揉み手をしはじめる息子を見ると、たいていの親はこう言う。
「はぁ……ま、いいわ。じゃあ、買ってきたお土産、ロコちゃんちに届けてくれないかしら?」
「………………え?」
「なによ。なんでもするって言ってたじゃない。嫌なの? だったら大掃除を――」
「いえいえいえ! 嫌だなんてそんな! 喜んでそのお役目、拝領いたします、はい!」
余計なことを言われる前に退散を決め込む僕。ていねいに包装された菓子箱――たぶん、中身は毎度おなじみの『とみい』の『ピーナッツサブレー』だろう――の入った紙袋をキッチンのテーブルの上からひったくるようにして、大急ぎで靴を履きながら冷たい鉄製ドアを開けた。
――だだだだだん!
――だだだだだん!
――だだだ――とん、とん。
「なんか……顔合わせづらいなぁ……。あんなこと、あった後だし……」
イキオイよく駆け出したまではよかったのだけれど、三階にたどり着く頃には僕の足取りはめっきり遅くなっていた。おわびの手紙をもらっているだけかなりマシだったが、それよりなにより、ロコのココロに秘めていたキモチを知ってしまった事実と、それから鉄柵越しの――。
「い、いかんいかん! 僕が微妙な空気出してたら、ロコだって気まずくなってくるだろ!」
ぴしり、と頬をイキオイよく両手で挟んで気合いを入れると、右手を振り上げた。
ゴンゴン――。
「はぁい。今行きます。……あら? ケンタ君じゃない。どうしたの?」
「あの、ウチ、里帰りしてたんで、お土産持ってきました。どうぞ召し上がってください」
「あーら! いつも悪いわねぇ! あたし、これ好きなのよ! ……広子ー? 健太君よー?」
「ちょ――!?」
ロコのお母さんに、いやいやいや! 呼ばなくても結構です! とも言えないわけで。さほど待たないうちに、やたら上機嫌にみえるロコが姿をあらわした。
「おっ、ケンタじゃーん! じゃあ、あたしたち、ちょっと遊びいってくるねー!」
「え? え? お、おいっ! ひ――引っ張んな、引っ張んな! 行くなんてひと言も――!」
と、気づけば夏休みとほぼ変わらない生活を過ごしているうちに、あっというまに大みそかになってしまっていた。親父とお袋は昨日の晩千葉から帰っており、今は年に一度の大掃除に精を出している。換気扇や網戸窓ガラスなんてところはこんな時でもないと触れもしないものだ。
「ええと……いや、ここはちょっと違ったな……こう。うん、これならわかりやすいな」
僕は僕で、この一年間、つまり『リトライ』の中学二年生の生活を振り返り、スマホに日記のように記録していたメモを整理していた。
「まあ……あらためて見返すと、とんでもない一年間だったなぁ……」
特に使い道があると思って記録しているわけではないけれど、これはこれで、進行中のタスクがどれかを整理するにはもってこいなのだ。
たとえば純美子攻略について。『→完了?』と書かれているところが僕の不安をうまくあらわしていると思う。それからロコの『リトライ』について。『→経過観察中』。読んで字のごとくである。水無月家の絵について。『→報告待ち』。なにげに一番気になっていたりする。
ただこの作業の難点は、はたからみると何もしていないように見える点だ。
なにしろ僕の所持する未来ガジェット・スマホは、『リトライ者』にしか見えないわけで。
「ねぇ、健太! ヒマだったら、お届け物を頼まれてほしいんだけど? いいわよね?」
「ヒ――ヒマってわけじゃ――! ……い、いやいやいや! お母様のためなら喜んで!」
「なによ、気持ち悪いわねぇ」
急に手のひらを返したように揉み手をしはじめる息子を見ると、たいていの親はこう言う。
「はぁ……ま、いいわ。じゃあ、買ってきたお土産、ロコちゃんちに届けてくれないかしら?」
「………………え?」
「なによ。なんでもするって言ってたじゃない。嫌なの? だったら大掃除を――」
「いえいえいえ! 嫌だなんてそんな! 喜んでそのお役目、拝領いたします、はい!」
余計なことを言われる前に退散を決め込む僕。ていねいに包装された菓子箱――たぶん、中身は毎度おなじみの『とみい』の『ピーナッツサブレー』だろう――の入った紙袋をキッチンのテーブルの上からひったくるようにして、大急ぎで靴を履きながら冷たい鉄製ドアを開けた。
――だだだだだん!
――だだだだだん!
――だだだ――とん、とん。
「なんか……顔合わせづらいなぁ……。あんなこと、あった後だし……」
イキオイよく駆け出したまではよかったのだけれど、三階にたどり着く頃には僕の足取りはめっきり遅くなっていた。おわびの手紙をもらっているだけかなりマシだったが、それよりなにより、ロコのココロに秘めていたキモチを知ってしまった事実と、それから鉄柵越しの――。
「い、いかんいかん! 僕が微妙な空気出してたら、ロコだって気まずくなってくるだろ!」
ぴしり、と頬をイキオイよく両手で挟んで気合いを入れると、右手を振り上げた。
ゴンゴン――。
「はぁい。今行きます。……あら? ケンタ君じゃない。どうしたの?」
「あの、ウチ、里帰りしてたんで、お土産持ってきました。どうぞ召し上がってください」
「あーら! いつも悪いわねぇ! あたし、これ好きなのよ! ……広子ー? 健太君よー?」
「ちょ――!?」
ロコのお母さんに、いやいやいや! 呼ばなくても結構です! とも言えないわけで。さほど待たないうちに、やたら上機嫌にみえるロコが姿をあらわした。
「おっ、ケンタじゃーん! じゃあ、あたしたち、ちょっと遊びいってくるねー!」
「え? え? お、おいっ! ひ――引っ張んな、引っ張んな! 行くなんてひと言も――!」
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