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第448話 悪事、千里を走る at 1996/2/2
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「おお、わが主よ!
全知全能の神よ!
今ひとたび、ケンタに命の息吹をあたえたまえ!」
「――はっ!? 僕は……って、もういいよ、そのネタは」
はぁ……と盛大な溜息をついた僕に、体型的に神父役がぴったりな渋田がこう続ける。
「いやぁ! 笑った笑った! 僕らも形無しだよ。ね? サトチン!」
「……あン? もっと過激にしろ、と? ……なるほど、わかった!」
「いやいやいやいや! 違う違う違いま――げぶぅ!?」
見事な即オチ。
やっぱり本家にはまだまだかなわないなぁ。
豪快に部室の隅まで吹っ飛んでいく渋田のカラダを張ったパフォーマンス(?)に驚いて首をすくめつつ、僕の隣で小さくなって座っていた純美子が心底済まなそうに言いわけをする。
「ご、ごめんね、ケンタ君……。あ、あたし、すっかり気が動転しちゃって……。ううう……」
「いやいや。僕が正直にホントのことを話せばよかったんだし……スミちゃんは悪くないって」
「そーだそーだ! ケンタが悪いんじゃんねー!」
「えっと……ロコ、お前はお前で、火種を大きくした罪は軽くないぞ?」
「………………マジでごめんなさい」
放課後になった今でこそ多少笑う気力が戻ってきたものの、なにしろ朝っぱらからあんな騒ぎだ。ウチの教室どころか、学校中の話題を独占してしまった『二股陰キャクソ野郎』こと僕――古ノ森健太は、まるで指名手配犯になったようなマイナス方面に振り切りまくった注目されっぷりに、思わず自分の生まれを呪ったほどだ。教室を出るのすら怖くてトイレも我慢した。
なんたって、根暗オタクのくせにまんまと文学系美少女のカレシの座をゲットしたと思いきや、なんと幼なじみという立場を悪用して(誤解である)、学年トップの美少女の家に深夜突撃し(誤解である)、嫌がるカノジョと一緒にお風呂に入って(誤解である)、お手製のクッキーまでごちそうになったにも関わらず(何も言えない)、後片付けも手伝わずに朝イチから本妻カノジョとイチャついている(何も言えない)、それが僕だというわけだ。もう死にたい。
ありとあらゆる手を使って、そのウワサはタチの悪い冗談でーす! と上書きしたものの、まだとうぶんの間は消えることはないだろう。とりあえず、帰りに下駄箱を覗くのが超怖い。
「……ま、一番肝心な、スミちゃんとムロにわかってもらえたからよかったものの……はぁ」
それだって、かなり高難易度のクエストだった。
なにせどちらも筋金入りのヤンデ――じゃない、ヤキモチ妬きだ。それだけスキだという気持ちはうれしいものの、チカラの行使はよくない。特に脇腹への攻撃は骨折の恐れがあります。
「でも、大変だね、ケンタ君。その『両家共通の知り合い』の子の病状、よくないんでしょ?」
「え? ………………あ、ああ、うん。心配なんだよ、ホントに」
(………………あぁん? それって一体、どういうことよ!?)
(コトセのことなんだから嘘じゃないだろ? 合わせろって!)
「んー? なんのおハナシしてるのカナー?(にこにこ)」
「なっ!? ななななんでもないですなんでもないです!(にこにこ)」
「そ、そうだよー!? やだなーもー! スミったらー!(にこにこ)」
デスゲームかよ、僕の人生。
ほんの少しの油断とミスが命取りになりかねない。
しかもGMがカノジョだときた。
「そ――それはさておきさ、僕ら『電算論理研究部』の三学期の目標である『仕様書づくり』の進捗具合を知りたいんだけど……。あ、あれ? さっきまでハカセいたよね? いない?」
「な、なんか気になることがある、って言いながら、ツッキーと出かけたみたいですけど……」
「出かけた、って……」
こんなことを言いたくはないが、なにせ校内屈指の変わり者カップルである。ウチの部室以外に腰を落ち着けられる場所なんてないと思うんだけど……。いいや、そういえば技術工作部には知り合いがいるみたいだったな。『西中まつり』の時にも何度か足を運んでいたっけ。
「じゃあ仕方ない。ハカセがいないと、他にスケジュール管理できる人がいないから待とうか」
だが、その日ハカセとツッキーは、二度と部室に戻ってくることはなかったのだった。
全知全能の神よ!
今ひとたび、ケンタに命の息吹をあたえたまえ!」
「――はっ!? 僕は……って、もういいよ、そのネタは」
はぁ……と盛大な溜息をついた僕に、体型的に神父役がぴったりな渋田がこう続ける。
「いやぁ! 笑った笑った! 僕らも形無しだよ。ね? サトチン!」
「……あン? もっと過激にしろ、と? ……なるほど、わかった!」
「いやいやいやいや! 違う違う違いま――げぶぅ!?」
見事な即オチ。
やっぱり本家にはまだまだかなわないなぁ。
豪快に部室の隅まで吹っ飛んでいく渋田のカラダを張ったパフォーマンス(?)に驚いて首をすくめつつ、僕の隣で小さくなって座っていた純美子が心底済まなそうに言いわけをする。
「ご、ごめんね、ケンタ君……。あ、あたし、すっかり気が動転しちゃって……。ううう……」
「いやいや。僕が正直にホントのことを話せばよかったんだし……スミちゃんは悪くないって」
「そーだそーだ! ケンタが悪いんじゃんねー!」
「えっと……ロコ、お前はお前で、火種を大きくした罪は軽くないぞ?」
「………………マジでごめんなさい」
放課後になった今でこそ多少笑う気力が戻ってきたものの、なにしろ朝っぱらからあんな騒ぎだ。ウチの教室どころか、学校中の話題を独占してしまった『二股陰キャクソ野郎』こと僕――古ノ森健太は、まるで指名手配犯になったようなマイナス方面に振り切りまくった注目されっぷりに、思わず自分の生まれを呪ったほどだ。教室を出るのすら怖くてトイレも我慢した。
なんたって、根暗オタクのくせにまんまと文学系美少女のカレシの座をゲットしたと思いきや、なんと幼なじみという立場を悪用して(誤解である)、学年トップの美少女の家に深夜突撃し(誤解である)、嫌がるカノジョと一緒にお風呂に入って(誤解である)、お手製のクッキーまでごちそうになったにも関わらず(何も言えない)、後片付けも手伝わずに朝イチから本妻カノジョとイチャついている(何も言えない)、それが僕だというわけだ。もう死にたい。
ありとあらゆる手を使って、そのウワサはタチの悪い冗談でーす! と上書きしたものの、まだとうぶんの間は消えることはないだろう。とりあえず、帰りに下駄箱を覗くのが超怖い。
「……ま、一番肝心な、スミちゃんとムロにわかってもらえたからよかったものの……はぁ」
それだって、かなり高難易度のクエストだった。
なにせどちらも筋金入りのヤンデ――じゃない、ヤキモチ妬きだ。それだけスキだという気持ちはうれしいものの、チカラの行使はよくない。特に脇腹への攻撃は骨折の恐れがあります。
「でも、大変だね、ケンタ君。その『両家共通の知り合い』の子の病状、よくないんでしょ?」
「え? ………………あ、ああ、うん。心配なんだよ、ホントに」
(………………あぁん? それって一体、どういうことよ!?)
(コトセのことなんだから嘘じゃないだろ? 合わせろって!)
「んー? なんのおハナシしてるのカナー?(にこにこ)」
「なっ!? ななななんでもないですなんでもないです!(にこにこ)」
「そ、そうだよー!? やだなーもー! スミったらー!(にこにこ)」
デスゲームかよ、僕の人生。
ほんの少しの油断とミスが命取りになりかねない。
しかもGMがカノジョだときた。
「そ――それはさておきさ、僕ら『電算論理研究部』の三学期の目標である『仕様書づくり』の進捗具合を知りたいんだけど……。あ、あれ? さっきまでハカセいたよね? いない?」
「な、なんか気になることがある、って言いながら、ツッキーと出かけたみたいですけど……」
「出かけた、って……」
こんなことを言いたくはないが、なにせ校内屈指の変わり者カップルである。ウチの部室以外に腰を落ち着けられる場所なんてないと思うんだけど……。いいや、そういえば技術工作部には知り合いがいるみたいだったな。『西中まつり』の時にも何度か足を運んでいたっけ。
「じゃあ仕方ない。ハカセがいないと、他にスケジュール管理できる人がいないから待とうか」
だが、その日ハカセとツッキーは、二度と部室に戻ってくることはなかったのだった。
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