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神の湯
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仕事を辞めてブラブラしているのも飽きたので幼いころ住んでいた街に引っ越すことにした。
理由は特にないが、ただ楽しかった子供時代を懐かしみたかっただけなのかもしれない。
3歳のときに父が亡くなってから小学4年生まで母と祖母と3人で暮らした家はもう建て替えられて別の家族が住んでいた。
祖母が亡くなってからここに来ることはなかったが相変わらず田舎だな。
母は今の仕事を辞めたくないからと付いては来なかった。
なんとなく元実家の近くのマンションに住むことにして、休みの日にはなんとなく見覚えのある道を散策した。
しばらくして小さな会社に就職した。面接で俺の履歴書を見た社長は「なんでこんな大手からウチに!?」と言って引っくり返った。
仕事内容は顧客を周る営業で挨拶回りとサポートが中心なのですぐに慣れた。
その日は冬の寒さも和らぎ、暖かい日差しに気分が良くなって近くの山にハイキング気分で足を踏み入れた。そして迷った。
おかしいな、小学生時代しょっちゅうこの山で遊んでいたはずなのに。そもそも、どんな遊びをしていたっけ?いつも1人だったような気がする。
いや、友達がいなかったわけではない。それでも山には1人で入っていた気がする。
なぜ?
歩いても歩いても獣道。スマホも圏外。さすがに焦ってきた。
すると目の前の草むらからガサガサと物音がした。そこには動物の気配。
イヌ?ネコ?タヌキ?イタチ?
緊張で一歩も動けなくなって草むらを凝視しているとそこから出てきたのはカピバラだった。
いや、ヌートリアか?いやいや、この大きさはカピバラだろう。なぜこんなところに?動物園から脱走してきたのか?
頭の中がパニックになっているのは、いるはずのない場所にいるはずのない動物がいることだけではなく、そのカピバラが『二足歩行』だったからだ。
おまけに風呂敷を肩に担いでいる。
しばらく無言でカピバラと見つめ合っているとカピバラはゆっくり歩き出した。少し歩いてチラッとこっちを見て、再び歩いてチラッと見るを繰り返している。もしかして付いて来いってこと?
このままここにいても迷っていることに変わりはないので付いて行くことにした。
山道を歩いていくと草むらを抜けて視界が開けた。そこには小さな鳥居と、とても長い階段。え?登るの?
えっちらおっちら階段を登り、たどり着いた場所は小さな神社だった。つ⋯疲れた。
アラフォーにはこの階段はキツい。
神社の境内はこじんまりとしていたが、沢山の椿の木が神社を囲むように生えていて、赤い花が見事に咲き誇っていた。
「こんな山の中に神社があるなんて⋯お参りに来るのが大変だな。」
「うむ、確かに。それもあって参拝者が随分減ってしまったな。」
独り言に反応されてひどく驚いた。
いつの間にか隣に立っていたその人は真っ白な髪と真っ赤な瞳で赤い袴を着ていた。
「この神社に入れるとは珍しい。シゲが招いたか?」
「ええ、椿様。幸薄そうな童が迷子になっていたからつい連れて来てしもたんじゃよ。」
カピバラが喋っている。
唖然としてしまったが、随分とジジ臭い喋り方だなと頭の片隅では冷静な自分に驚く。
それと俺は童と呼ばれる歳ではないぞ。
「ふん。確かになかなか難儀な縁の持ち主だな。おや?お主まさか⋯」
赤い瞳でじっと見られると何となく落ち着かない。
「あの、難儀とは?」
「あ、ああ⋯お主は基本的に人との縁には恵まれているが、ある一部の縁に対しては破綻している。心当たりはあるだろう?」
番運の悪さのことを言われているのだろうか?
しかしこの見透かされているような感覚は何なのだろう。
それにこの人は一体誰なんだ。
「あの⋯」
「人間、お主の名前は?」
「片瀬満です。」
「なるほどおミツか。」
「満ですってば。」
「おミツもうちの湯に入っていけ。」
人の話を聞かない人だな。っていうか湯?
「童こっちじゃ。付いてきぃ。」
好き勝手に呼ぶなぁ。いいけど。
神社の境内を歩くカピバラの後を追う。お社をチラリと見ると随分と痛みと汚れが目立つ。 まるで長い間人の手が入っていなかったような⋯。
お社の裏側まで来ると池があるなと思いきや表面から湯気がもうもうと立っている。
これは温泉だ。なぜ神社に温泉?
シゲと呼ばれていたカピバラは背負っていた風呂敷を下ろし、器用に結び目を解いている。
風呂敷の中から出てきたのは柚子だった。
カピバラは大粒の6個の柚子を湯船にごろんと浮かべてからゆっくりと身体を湯船に沈めていった。
「ほれ童も入らんか。」
「いや、遠慮します。」
動物と同じ風呂はちょっと⋯。
「何を躊躇している?神の湯だぞ?我の力で常に清潔を保っているに決まっておるだろう。」
なんか入る流れになってるけどなんで?
「ときにおミツは供物になる物は持ち合わせているのか?」
「供物?」
「多少の供物で神の湯に入れるんだ。お得だろう?シゲは毎回この柚子を奉納しておる。」
そう言われても今日はポケットにスマホだけ突っ込んで出てきてしまった。普段から電子マネーを使うことがほとんどなので財布も持ち歩いていない。
いや、別に風呂に入りたいわけではないのだが⋯。
「椿様、社の掃除をしてもらってはどうじゃ?猿たちだけだと細かい所までは綺麗にならんでしょう。」
え!猿が掃除するの?ちょっと見てみたい。
「うむ。おミツもそれで良かろう?」
綺麗な顔でにっこりと微笑まれると謎の迫力がある。これは断れない雰囲気だな。
「あ⋯足湯でお願いします。」
この開放的な空間で露天風呂と言えど裸になる勇気はなかった。
靴と靴下を脱ぎズボンの裾を捲って平たい岩に腰掛け、湯の中に足を入れてみた。
山歩きで疲れた足にじんわりと湯の熱が伝わる。足しか入れていないのに身体全体がポカポカしてきた。
山の中の神社。露天風呂。目の前にはカピバラ。斜め後ろには神様。
どういう状況だこれは。
「気持ち良かろう?神の湯は治癒の力が備わっておる。目に見える傷はもちろん、内側の傷にもな。」
「⋯何のことでしょう。」
またこの瞳だ。全てを見透かすような真っ赤な瞳。思わず目を逸らしてしまう。
足湯だけだったが身体全体が軽くなった。
その後、カピバラの指示で社の掃除をするが、規模が小さいと言っても一人で掃除を終わらせることができなかった。
「明日から毎日来るが良い。」
「いや、毎日はちょっと⋯。」
仕事があるのに無茶を言うなこの神様。
帰りもカピバラに送ってもらった。
行きはあんなに迷ったというのに、帰りは一本道ですぐ公道にたどり着いた。
「道が開かれたから次は童一人でも来れそうじゃな。」
非現実的な体験で頭が回らないままカピバラと別れて家に帰った。
うーん俺はまた行かないといけないのだろうか?
よくわからないことに巻き込まれたくないと最初は行くつもりはなかったのだが、あの足湯に入ったときの癒やされる感覚が忘れられない。
休みの日に再びあの神社に行くことにした。
供物といえば酒だろうかとひとまず一升瓶を抱えて山に向かった。
目印の大きな椿の木から獣道のような一本道を進むとあの鳥居と階段が見えてきた。
今日の温泉にはカピバラとリスが入っていた。リスってお風呂に入れるんだな。
「おミツ。来たのか。待っておったぞ。」
神様が嬉しそうに話しかけてきた。美形の笑顔の破壊力がすごい。
お供え物の酒はお社の祭壇に供える。
なんかドングリと松ぼっくりが並べられているけどもしかしてこれはリスのお供え物かな?
今日も足湯をして社の掃除の続きをした。
酒を持ってきたので掃除をする必要はないのだろうが、俺が気になる。
それから休みのたびに神社に行くことが習慣になった。
毎回色んな動物が風呂に入っている。クマが入っていたときはさすがに腰を抜かした。
様々な動物に出会ったが、人間の言葉を話すのはカピバラだけだった。
何度か通っていくうちに俺は神様を椿様、カピバラを「シゲじい」と呼ぶようになった。
シゲじいは100歳を超える長寿らしく、いわゆる物の怪の類になっているらしい。
物の怪化してからは世界をあちこち巡り、日本の温泉に心を奪われてからこの辺りに住み着いているとのこと。
神様のことも聞いた。
昔は山奥にも関わらず多くの人が参拝に訪れていたが、時代とともに参拝者は減っていったそうだ。
温泉も今はこじんまりとしているが元々はもっと大きかったらしい。
あと椿様は気まぐれで人の好き嫌いが激しく、気に入らない人は神社に入れないようにしているらしい。
例えば「神を疑う人」などは問答無用で弾くとのこと。
ええ?俺もそんなに信仰心があるわけではないし、むしろ3度の番解消経験により「神は死んだ」と思ったクチだ。
言わないけど。
「童よ、日本人は無宗教と言いながらクリスマスを祝い、初詣に参り、仏に手を合わせ、地蔵を蹴ることはできないじゃろ。」
「あとはシゲの導きも後押しした形になったのだろうな。」
確かに八百万の神と言われるくらい日本人は昔から神様を身近に感じている。信じる信じないかは別として宗教には寛容だ。
「我はおミツが来てくれるようになって嬉しいぞ。我はここから離れられない上に会話ができるのがシゲだけだからな。」
俺も2人(?)と話すのは楽しい。
なんてったって神と動物だ。常識も考え方も全然違う。特にシゲじいのある国で密猟されそうになって一緒に檻に入っていた動物達と力を合わせて脱走し、犯人を警察に突き出す話は痛快でどこの長編アニメ映画だと思わず突っ込んだ。
まさか本当の話じゃないよね?え?作り話だよね?
何度か神社に通っていたが温泉には未だに全身を沈める勇気はなく足湯のままだ。
それでも少しずつ気持ちが楽になっていく。
毎回笑顔で迎えてくれる椿様は本当に綺麗だ。俺が話す「人間の生活」をいつも楽しそうに聞いてくる。
スマホを貸すと写真に興味を持ったようであちこちパシャパシャ撮っていた。
なんか可愛いな。
いや、俺より遥かに年上の神に言うことではないだろうけど。
椿様は俺が帰るときにいつも寂しそうな顔をして
「待っておるぞ。ただし夜には絶対に来るでない。悪いものが出るからの。」
と必ず言った。
理由は特にないが、ただ楽しかった子供時代を懐かしみたかっただけなのかもしれない。
3歳のときに父が亡くなってから小学4年生まで母と祖母と3人で暮らした家はもう建て替えられて別の家族が住んでいた。
祖母が亡くなってからここに来ることはなかったが相変わらず田舎だな。
母は今の仕事を辞めたくないからと付いては来なかった。
なんとなく元実家の近くのマンションに住むことにして、休みの日にはなんとなく見覚えのある道を散策した。
しばらくして小さな会社に就職した。面接で俺の履歴書を見た社長は「なんでこんな大手からウチに!?」と言って引っくり返った。
仕事内容は顧客を周る営業で挨拶回りとサポートが中心なのですぐに慣れた。
その日は冬の寒さも和らぎ、暖かい日差しに気分が良くなって近くの山にハイキング気分で足を踏み入れた。そして迷った。
おかしいな、小学生時代しょっちゅうこの山で遊んでいたはずなのに。そもそも、どんな遊びをしていたっけ?いつも1人だったような気がする。
いや、友達がいなかったわけではない。それでも山には1人で入っていた気がする。
なぜ?
歩いても歩いても獣道。スマホも圏外。さすがに焦ってきた。
すると目の前の草むらからガサガサと物音がした。そこには動物の気配。
イヌ?ネコ?タヌキ?イタチ?
緊張で一歩も動けなくなって草むらを凝視しているとそこから出てきたのはカピバラだった。
いや、ヌートリアか?いやいや、この大きさはカピバラだろう。なぜこんなところに?動物園から脱走してきたのか?
頭の中がパニックになっているのは、いるはずのない場所にいるはずのない動物がいることだけではなく、そのカピバラが『二足歩行』だったからだ。
おまけに風呂敷を肩に担いでいる。
しばらく無言でカピバラと見つめ合っているとカピバラはゆっくり歩き出した。少し歩いてチラッとこっちを見て、再び歩いてチラッと見るを繰り返している。もしかして付いて来いってこと?
このままここにいても迷っていることに変わりはないので付いて行くことにした。
山道を歩いていくと草むらを抜けて視界が開けた。そこには小さな鳥居と、とても長い階段。え?登るの?
えっちらおっちら階段を登り、たどり着いた場所は小さな神社だった。つ⋯疲れた。
アラフォーにはこの階段はキツい。
神社の境内はこじんまりとしていたが、沢山の椿の木が神社を囲むように生えていて、赤い花が見事に咲き誇っていた。
「こんな山の中に神社があるなんて⋯お参りに来るのが大変だな。」
「うむ、確かに。それもあって参拝者が随分減ってしまったな。」
独り言に反応されてひどく驚いた。
いつの間にか隣に立っていたその人は真っ白な髪と真っ赤な瞳で赤い袴を着ていた。
「この神社に入れるとは珍しい。シゲが招いたか?」
「ええ、椿様。幸薄そうな童が迷子になっていたからつい連れて来てしもたんじゃよ。」
カピバラが喋っている。
唖然としてしまったが、随分とジジ臭い喋り方だなと頭の片隅では冷静な自分に驚く。
それと俺は童と呼ばれる歳ではないぞ。
「ふん。確かになかなか難儀な縁の持ち主だな。おや?お主まさか⋯」
赤い瞳でじっと見られると何となく落ち着かない。
「あの、難儀とは?」
「あ、ああ⋯お主は基本的に人との縁には恵まれているが、ある一部の縁に対しては破綻している。心当たりはあるだろう?」
番運の悪さのことを言われているのだろうか?
しかしこの見透かされているような感覚は何なのだろう。
それにこの人は一体誰なんだ。
「あの⋯」
「人間、お主の名前は?」
「片瀬満です。」
「なるほどおミツか。」
「満ですってば。」
「おミツもうちの湯に入っていけ。」
人の話を聞かない人だな。っていうか湯?
「童こっちじゃ。付いてきぃ。」
好き勝手に呼ぶなぁ。いいけど。
神社の境内を歩くカピバラの後を追う。お社をチラリと見ると随分と痛みと汚れが目立つ。 まるで長い間人の手が入っていなかったような⋯。
お社の裏側まで来ると池があるなと思いきや表面から湯気がもうもうと立っている。
これは温泉だ。なぜ神社に温泉?
シゲと呼ばれていたカピバラは背負っていた風呂敷を下ろし、器用に結び目を解いている。
風呂敷の中から出てきたのは柚子だった。
カピバラは大粒の6個の柚子を湯船にごろんと浮かべてからゆっくりと身体を湯船に沈めていった。
「ほれ童も入らんか。」
「いや、遠慮します。」
動物と同じ風呂はちょっと⋯。
「何を躊躇している?神の湯だぞ?我の力で常に清潔を保っているに決まっておるだろう。」
なんか入る流れになってるけどなんで?
「ときにおミツは供物になる物は持ち合わせているのか?」
「供物?」
「多少の供物で神の湯に入れるんだ。お得だろう?シゲは毎回この柚子を奉納しておる。」
そう言われても今日はポケットにスマホだけ突っ込んで出てきてしまった。普段から電子マネーを使うことがほとんどなので財布も持ち歩いていない。
いや、別に風呂に入りたいわけではないのだが⋯。
「椿様、社の掃除をしてもらってはどうじゃ?猿たちだけだと細かい所までは綺麗にならんでしょう。」
え!猿が掃除するの?ちょっと見てみたい。
「うむ。おミツもそれで良かろう?」
綺麗な顔でにっこりと微笑まれると謎の迫力がある。これは断れない雰囲気だな。
「あ⋯足湯でお願いします。」
この開放的な空間で露天風呂と言えど裸になる勇気はなかった。
靴と靴下を脱ぎズボンの裾を捲って平たい岩に腰掛け、湯の中に足を入れてみた。
山歩きで疲れた足にじんわりと湯の熱が伝わる。足しか入れていないのに身体全体がポカポカしてきた。
山の中の神社。露天風呂。目の前にはカピバラ。斜め後ろには神様。
どういう状況だこれは。
「気持ち良かろう?神の湯は治癒の力が備わっておる。目に見える傷はもちろん、内側の傷にもな。」
「⋯何のことでしょう。」
またこの瞳だ。全てを見透かすような真っ赤な瞳。思わず目を逸らしてしまう。
足湯だけだったが身体全体が軽くなった。
その後、カピバラの指示で社の掃除をするが、規模が小さいと言っても一人で掃除を終わらせることができなかった。
「明日から毎日来るが良い。」
「いや、毎日はちょっと⋯。」
仕事があるのに無茶を言うなこの神様。
帰りもカピバラに送ってもらった。
行きはあんなに迷ったというのに、帰りは一本道ですぐ公道にたどり着いた。
「道が開かれたから次は童一人でも来れそうじゃな。」
非現実的な体験で頭が回らないままカピバラと別れて家に帰った。
うーん俺はまた行かないといけないのだろうか?
よくわからないことに巻き込まれたくないと最初は行くつもりはなかったのだが、あの足湯に入ったときの癒やされる感覚が忘れられない。
休みの日に再びあの神社に行くことにした。
供物といえば酒だろうかとひとまず一升瓶を抱えて山に向かった。
目印の大きな椿の木から獣道のような一本道を進むとあの鳥居と階段が見えてきた。
今日の温泉にはカピバラとリスが入っていた。リスってお風呂に入れるんだな。
「おミツ。来たのか。待っておったぞ。」
神様が嬉しそうに話しかけてきた。美形の笑顔の破壊力がすごい。
お供え物の酒はお社の祭壇に供える。
なんかドングリと松ぼっくりが並べられているけどもしかしてこれはリスのお供え物かな?
今日も足湯をして社の掃除の続きをした。
酒を持ってきたので掃除をする必要はないのだろうが、俺が気になる。
それから休みのたびに神社に行くことが習慣になった。
毎回色んな動物が風呂に入っている。クマが入っていたときはさすがに腰を抜かした。
様々な動物に出会ったが、人間の言葉を話すのはカピバラだけだった。
何度か通っていくうちに俺は神様を椿様、カピバラを「シゲじい」と呼ぶようになった。
シゲじいは100歳を超える長寿らしく、いわゆる物の怪の類になっているらしい。
物の怪化してからは世界をあちこち巡り、日本の温泉に心を奪われてからこの辺りに住み着いているとのこと。
神様のことも聞いた。
昔は山奥にも関わらず多くの人が参拝に訪れていたが、時代とともに参拝者は減っていったそうだ。
温泉も今はこじんまりとしているが元々はもっと大きかったらしい。
あと椿様は気まぐれで人の好き嫌いが激しく、気に入らない人は神社に入れないようにしているらしい。
例えば「神を疑う人」などは問答無用で弾くとのこと。
ええ?俺もそんなに信仰心があるわけではないし、むしろ3度の番解消経験により「神は死んだ」と思ったクチだ。
言わないけど。
「童よ、日本人は無宗教と言いながらクリスマスを祝い、初詣に参り、仏に手を合わせ、地蔵を蹴ることはできないじゃろ。」
「あとはシゲの導きも後押しした形になったのだろうな。」
確かに八百万の神と言われるくらい日本人は昔から神様を身近に感じている。信じる信じないかは別として宗教には寛容だ。
「我はおミツが来てくれるようになって嬉しいぞ。我はここから離れられない上に会話ができるのがシゲだけだからな。」
俺も2人(?)と話すのは楽しい。
なんてったって神と動物だ。常識も考え方も全然違う。特にシゲじいのある国で密猟されそうになって一緒に檻に入っていた動物達と力を合わせて脱走し、犯人を警察に突き出す話は痛快でどこの長編アニメ映画だと思わず突っ込んだ。
まさか本当の話じゃないよね?え?作り話だよね?
何度か神社に通っていたが温泉には未だに全身を沈める勇気はなく足湯のままだ。
それでも少しずつ気持ちが楽になっていく。
毎回笑顔で迎えてくれる椿様は本当に綺麗だ。俺が話す「人間の生活」をいつも楽しそうに聞いてくる。
スマホを貸すと写真に興味を持ったようであちこちパシャパシャ撮っていた。
なんか可愛いな。
いや、俺より遥かに年上の神に言うことではないだろうけど。
椿様は俺が帰るときにいつも寂しそうな顔をして
「待っておるぞ。ただし夜には絶対に来るでない。悪いものが出るからの。」
と必ず言った。
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