カミサンオメガは番運がなさすぎる

ミミナガ

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(最終話)嫁入り

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 目が覚めると服を着たまま温泉に浮かんでいた。
 俺を覗き込んでいる椿ツバキ様とシゲじいとクマ⋯クマぁ!?
 バシャンと水しぶきを上げて飛び起きる。

「目覚めたか。気分はどうだ?」
「クマッ⋯クマッ!!」
「クマは山で倒れていたわっぱをここまで運んでくれたんじゃぞ。」
「そ、そうだったんですね。ありがとうございます。」

 そう言うとクマはペコっとお辞儀をしてノシノシ歩いて行った。なんか可愛いな。

「おミツ、夜は来るなと行っただろう。」

 呆れた顔の椿ツバキ様は俺が子供のころに会っていた椿ツバキ様と全く同じで、まだ夢を見ている気分だ。
 そういえば俺がここにいる原因は目の前の神様だと思い出した。

「え?椿ツバキ様が呼んだんじゃないんですか?」
椿ツバキ様、あの狛狐こまぎつねじゃ。最近山をうろついていると思ったら"陰の力"を探してわっぱにぶつけたんでしょう。」
「我のものに手を出すとは度し難いな。どうしてくれようか。」

 顔は笑っているのに目が笑っていない椿ツバキ様。怖ぁ。

「そんなことより椿ツバキ様。子供の俺のこと知ってたでしょう?」
「!⋯思い出したのか。」
「おや?わっぱは"陰の力"に飲まれたのでは?記憶が消えるならともかくなぜ戻っているんじゃ?」

 確かにあの「陰の力」と呼ばれるモヤモヤは昔チビの俺の記憶を奪ったものと同じだった。
 状況も全く一緒だ。
 でも今回俺は記憶を無くすどころか思い出したのだ。

「力の逆転だな。元々弱くなっていた"陰の力"よりもおミツの"エンの力"が強くなったことで逆に"陰の力"を喰ったのだろう。」
「へぇ、"エンの力"が強くなるなんてそんな不思議なことがあるんですね。」
「あるわけ無いだろう。おミツはわれのお気に入りだぞ?贔屓して力を与えるに決まっておるだろう?」

 神様って思ったより人に平等じゃなかった。

「では"陰の力"は全て消えたんじゃろうか?」
「そうだな、おミツが全部喰ったみたいだな。外に力も感じない。」
「それは山の動物たちも喜びますな。」

 ここで俺はシゲじいから「陰の力」の浄化のために温泉があるということを聞いた。

「さておミツ。記憶が戻ったということは幼いお主がわれに求婚したことも覚えておるか?」
「うぁ、まぁはい。思い出しまシタ⋯」

 椿ツバキ様は俺の手を取った。
 ってか顔が近い近い近い⋯美形のアップが眩しい!

「おミツ、嫁に来い。」
「ふぁい⋯。」

 顔圧に負けた。

*********************

「あ!椿ツバキ様、消滅までの時間はどのくらい残されていますか?仕事のこともありますし親のことも気になるし⋯。」
「そうだな⋯100年くらいだな。」

 全然余裕じゃん!

「100年など瞬く間だろう?」

 神様の時間感覚が人と違いすぎる!

わっぱ、嫁入りすればもう現世に戻ることは叶わん。心残りは解消すべきじゃぞ。」
「そうですね。できれば親を看取ってからが良いのですが⋯。」
「構わんぞ。寿命を全うしなさい。」
「俺、今でももう40近いのに下手したらおじいちゃんになっちゃいますよ?」
「案ずるな、嫁入りするときに肉体を再構築するから姿形は好きに選べる。」

 過去、神に嫁入りした人間はそのままの姿を選んだ人も入れば、美しい容姿に作り変えた人もいるらしい。

「姿は変えずに年齢だけ若いころにしてもらおうかな。あ、でも項の噛み跡は消せますか?」
「当たり前だ。跡形もなく消し去ってくれよう。」

 こうして「噛み3カミサンオメガ」の俺は将来「神様カミサン」の「カミサン」になることが決まったのだ。

「ところでなぜ"嫁"なんです?人は男同士ならオメガでも"夫夫ふうふ"で互いにおっとと呼びますけど。」
「なぜって契りを結ぶ役目が決まっておるからの。われが"夫"でおミツが"嫁"だ。」
「契りを結ぶ⋯?」
「うむ、嫁入りしてからの話だがな。」
「契りを結ぶ⋯?」
わっぱ、交尾のことじゃ。」
「え?ええ!?神様もする・・の!?」

 全く想定していなかった事態に頭が混乱する。俺の顔はいま真っ赤になっているだろう。

「楽しみだな?おミツ?」

 ニッコリ笑った椿ツバキ様の顔は今まで見た中で一番綺麗だった。

終わり
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