異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通

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第2章第二話 氷姫登場

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  第2章第二話 氷姫登場
 三十名強で、ゾロゾロと歩いて行った。南城壁第三十番砦へ。
 最初は駆け足だったのだが、女生徒たちは、すぐにスタミナが切れてしまった。
 当初いた場所から、南城壁第三十番砦までは、千五百メートルは、あるからだ。
 三十名強のうち、二組と三組が約半分を占める。彼女たちの名前は、知らない。
 一組は、毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫と、彼女たちの取り巻きたち。それに、副委員長のエメラルディアに、東方人系のルックスのシルキアだ。
 いじめられっ子のシルキアが、なぜ救援部隊に志願したのかは、不明だ。
 念のため、小声で尋ねてみた。
 「南城壁は危険かもしれないけど、だいじょうぶ?」
 「べつに、あなたに助けてもらおうなんて、思ってないからね!」
 いつものように、ツンツンしていた。
 最初に声をかけたのは、入学後、最初の授業日の休み時間だった。
 日本人のようなルックスだったので、声をかけた。日本語で。
 「あたし東方語なんて、話せないわ。なぜなら、王都生まれの王都育ちだから」
 冷たく、そう答えた。シルキアが。王国の公用語である中央語で。
 次の日、紙に「五十嵐 十吉郎」と書いて持って行った。
 紙を見せながら、尋ねた。
 「読める漢字は?」
 「読めないわよ! あたしの母は王都生まれの王都育ちで、父とは一度も会ったことがないんだからね!」
 それ以降、何回か声をかけたが、いつもツンツンしている。トッキロに対して。
 本当に嫌がっているのかもしれないと思い、たまにしか声をかけないようにしている。
 シルキアも含めてだが、一組の面々は、どの程度の魔法力があるのか、正直心配だ。
 水魔法で役にたちそうなのは、エメラルディアくらいだろうか。
 一方、二組と三組の女生徒たちは、一定の魔法力があるはずだ。ウオーター・ボールの水補給くらいなら、充分にできるはずだ。
 たしかに助かった。ウオーター・ボールの水補給は。
 戦いながら、水魔法で水の補給をするのは、大変だからだ。
 一度に二つの魔法の実行は、できないことはない。
 だが、集中力が乱れると、どちらも失敗してしまう。
 まだ異世界に来て三ヶ月ほどだ。魔法の修行は、まだ道半ばなのだ。
 魔法力については、異世界転移魔方陣を使えたほどだから、普通の異世界人よりも、はるかに大きな魔法力を持っていた。
 けれども、異世界転移を一回しただけで、魔法力がだいぶ減少したようだ。
 だから、日本に帰れない。
 もう一回異世界転移するための魔法力を貯めるには、どうすればいいのか。
 それを探るために、王立魔法学園南校に入学した。先月の七月一日に。
 それなのに、入学後約一ヶ月で、魔王軍と戦うことになってしまった。
 第三十番砦が、見えてきた。
 絶句した。女生徒たちが。
 「何十匹いるのよ!」
 毒薔薇姫が仰天した。
 アース・ドラゴンの群れが、第三十番砦に群がっていた。
 第三十番砦は、石造りの三階建てだ。屋上までの高さは、十メートルほどか。
 石造りの砦には、各階の上部に、明かり取りの窓があるようだ。横長の細い窓なので、アース・ドラゴンはもちろん、人間も侵入できないほどの細さだ。
 その細い窓に、アース・ドラゴンは、捕食用の長い舌を入れている。
 各階とも。
 そのため、砦の外壁にビッシリと、アース・ドラゴンが張り付いている。
 三階の明かり取り窓に捕食舌を入れている複数のアース・ドラゴンは、前の手を壁に掛け、後ろ足だけで立っている状態だ。
 その後方から、二階の明かり取り窓に、捕食舌を伸ばしているアース・ドラゴンが何匹もいる。
 よく見ると、一階にあるドアが、破壊されている。
 そのドアは、アース・ドラゴンには小さすぎて、侵入できない。
 そこで複数のアース・ドラゴンが、ドアからも捕食用の長い舌を入れている。
 さらに、砦の屋上にも、数匹のアース・ドラゴンがいる。
 どうやら、天井窓から捕食舌を入れているようだ。
 そのときだった。
 兵士の絶叫が聞こえた。天井窓から。
 一人の兵士が、屋上のアース・ドラゴンに捕らえられた。
 長い舌で絡め取られたあと、空中に放り投げ出された。
 重力を使って、丸呑みするためだ。
 そのときだった。
 「氷結!」
 そう、叫ぶのが聞こえた。少女の声だ。
 その瞬間、凍りついた。アース・ドラゴンの捕食用の長い舌が。
 兵士が天井窓から階下に転落した。アース・ドラゴンに喰われることなく。
 だが、次の瞬間だった。
 別のアース・ドラゴンが、空中に放り投げた。一人の甲冑騎士を。
 その騎士が叫んだ。長剣を振り抜いて。
 「氷結!」
 アース・ドラゴンの頭部が凍った。
 甲冑騎士が、屋上に着地した。
 彼女が、氷結魔法剣の使い手、氷姫に違いない。
 だが氷姫は、屋上でアース・ドラゴンの群れに包囲された。たった一人で。
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