異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通

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第3章第二話 魔王の娘の要求その一

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  第3章第二話 魔王の娘の要求その一
 どよめいた。女生徒たちと兵士たちが。
 衝撃的だったのだ。
 魔王の娘が、登場したことに。
 そのうえ、わずかな家臣と共に、現れたことに。
 第十六砦は、南城壁上にある三十の砦の中で、第十五砦と並んで巨大で重要な砦だ。
 そのため第十五砦には、南城壁守備隊の総司令官がいる。それに、王国が誇るS級魔法使いも。
 一方、第十六砦には、南城壁守備隊の副司令官がいた。すでに戦死したが。
 そのため、急遽現役復帰した退役千人隊長アサレウスが、臨時の副司令官を務めている。
 アサレウスが大声で答えた。
 「ワシの名はアサレウス。この砦の司令官にして、この城壁の臨時副司令官を任されておる。魔王の娘とやら。そなたは、王都に侵攻している魔王軍の副司令官か?」
 「違う! われが総司令官だ!」
 魔王の娘、炎龍王女も、大声で答えた。
 「それなら、そなたは隣の第十五砦へ行くが良い。そちらに、この城壁の総司令官がいるぞ」
 そのアサレウスの言葉に、炎龍王女は、あっさりと答えた。
 「必要ない。向こうには、別の者たちを行かせた」
 「そうか。それなら、とりあえず、話くらいは聞こうか」
 アサレウスは、落ち着き払って、そう答えた。
 彼が落ち着いているのは、長年に渡る戦歴のおかげだろう。彼は、前回の魔王軍の王都侵攻時は、現役の千人隊長として奮戦したそうだ。
 「それでは、言おう」
 炎龍王女も、落ち着いているように見える。遠目では。
 アサレウスと炎龍王女との距離は、二十メートルはある。
 相手が突然攻撃してきても、対応できるように距離を取っているのだ。
 炎龍王女が、大声で話し始めた。
 「われらの要求、その一!」
 大きく息を吸ってから、炎龍王女が大声で言葉を続けた。
 「人間どもは全員、われの奴隷となれ!」
 どよめいた。女生徒たちが。それに兵士たちも。常軌を逸した要求に。
 「ふざんけんな!」
 ぶち切れた。雷姫が。
 「誰が奴隷なんかになるか!」
 雷姫が、さやからいた。雷鳴魔法剣を。
 「落ち着かんか! 小娘こむすめ!」
 一喝いっかつした。大声で。アサレウスが。
 続いて、静かな声で、振り返らずに言葉を続けた。
 「剣を鞘に収めよ」
 チッと舌打ちをして、ふてくされながらも、雷姫は剣を鞘に収めた。
 突然、炎姫が口を開いた。静かに、しかし、力強い口調で。
 「我々は、人間の自由を守るために、命を削って戦っている。魔族は、我々を奴隷にすることはできない。なぜなら」
 そこで声を張りあげた。炎姫が。
 「我々は戦い続けるからだ。最後の一兵になるまで! いや、最後の一兵が死ぬまでだ!」
 呼応するかのように、氷姫が口を開いた。
 「我々は、何者であるか?」
 大声で、そう問いかけた。
 言葉を続けた。大きな声で、氷姫が。
 「人間の王国を守り、王都を守り、たみを守る。我々は、何者か?」
 魔法剣姫三名が、声をそろえて叫んだ。
 「王国騎士団だ!」
 続けて叫んだ。繰り返し同じ言葉を。
 「王国騎士団だ! 王国騎士団だ! 王国騎士団だ!」
 兵士たち百名も、声を合わせて叫んだ。それに、北校の女生徒たちも。
 南校の女生徒たちだけが、この展開を理解できず、驚いた表情で周りを見回している。
 アサレウスが、右手を軽く上げた。
 次の瞬間、兵士たちは、いっせいに口を閉じた。
 力強い声で、呼びかけた。アサレウスが、炎龍王女に。
 「そういうわけじゃ。そなたの要求その一は、のむことはできない」
 「なぜだ? われは魔王の娘、炎龍王女であるぞ! われの奴隷にしてやると言っておるのだ。喜んで奴隷になるのが、あたりまえではないか!」
 遠目でも、わかる。炎龍王女は、本当に驚いていた。人間たちの回答に。
 吐き捨てた。雷姫が。
 「どこにもいないね。喜んで奴隷になる人間なんて」
 炎姫が口を開いた。落ち着いた口調で。
 「人間にとって、最も大切なものは、自由だ。ゆえに我々は、自由を守るために、命を賭けて戦うのだ」
 炎龍王女が、叫んだ。動揺したそぶりで。
 「おかしい! おかしい! 聞いていた話と違う! 人間にとって一番大切なものは、おのれの欲望のはずだ!」
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