30 / 67
第3章第二話 魔王の娘の要求その一
しおりを挟む
第3章第二話 魔王の娘の要求その一
どよめいた。女生徒たちと兵士たちが。
衝撃的だったのだ。
魔王の娘が、登場したことに。
そのうえ、わずかな家臣と共に、現れたことに。
第十六砦は、南城壁上にある三十の砦の中で、第十五砦と並んで巨大で重要な砦だ。
そのため第十五砦には、南城壁守備隊の総司令官がいる。それに、王国が誇るS級魔法使いも。
一方、第十六砦には、南城壁守備隊の副司令官がいた。すでに戦死したが。
そのため、急遽現役復帰した退役千人隊長アサレウスが、臨時の副司令官を務めている。
アサレウスが大声で答えた。
「ワシの名はアサレウス。この砦の司令官にして、この城壁の臨時副司令官を任されておる。魔王の娘とやら。そなたは、王都に侵攻している魔王軍の副司令官か?」
「違う! われが総司令官だ!」
魔王の娘、炎龍王女も、大声で答えた。
「それなら、そなたは隣の第十五砦へ行くが良い。そちらに、この城壁の総司令官がいるぞ」
そのアサレウスの言葉に、炎龍王女は、あっさりと答えた。
「必要ない。向こうには、別の者たちを行かせた」
「そうか。それなら、とりあえず、話くらいは聞こうか」
アサレウスは、落ち着き払って、そう答えた。
彼が落ち着いているのは、長年に渡る戦歴のおかげだろう。彼は、前回の魔王軍の王都侵攻時は、現役の千人隊長として奮戦したそうだ。
「それでは、言おう」
炎龍王女も、落ち着いているように見える。遠目では。
アサレウスと炎龍王女との距離は、二十メートルはある。
相手が突然攻撃してきても、対応できるように距離を取っているのだ。
炎龍王女が、大声で話し始めた。
「われらの要求、その一!」
大きく息を吸ってから、炎龍王女が大声で言葉を続けた。
「人間どもは全員、われの奴隷となれ!」
どよめいた。女生徒たちが。それに兵士たちも。常軌を逸した要求に。
「ふざんけんな!」
ぶち切れた。雷姫が。
「誰が奴隷なんかになるか!」
雷姫が、鞘から抜いた。雷鳴魔法剣を。
「落ち着かんか! 小娘!」
一喝した。大声で。アサレウスが。
続いて、静かな声で、振り返らずに言葉を続けた。
「剣を鞘に収めよ」
チッと舌打ちをして、ふてくされながらも、雷姫は剣を鞘に収めた。
突然、炎姫が口を開いた。静かに、しかし、力強い口調で。
「我々は、人間の自由を守るために、命を削って戦っている。魔族は、我々を奴隷にすることはできない。なぜなら」
そこで声を張りあげた。炎姫が。
「我々は戦い続けるからだ。最後の一兵になるまで! いや、最後の一兵が死ぬまでだ!」
呼応するかのように、氷姫が口を開いた。
「我々は、何者であるか?」
大声で、そう問いかけた。
言葉を続けた。大きな声で、氷姫が。
「人間の王国を守り、王都を守り、民を守る。我々は、何者か?」
魔法剣姫三名が、声をそろえて叫んだ。
「王国騎士団だ!」
続けて叫んだ。繰り返し同じ言葉を。
「王国騎士団だ! 王国騎士団だ! 王国騎士団だ!」
兵士たち百名も、声を合わせて叫んだ。それに、北校の女生徒たちも。
南校の女生徒たちだけが、この展開を理解できず、驚いた表情で周りを見回している。
アサレウスが、右手を軽く上げた。
次の瞬間、兵士たちは、いっせいに口を閉じた。
力強い声で、呼びかけた。アサレウスが、炎龍王女に。
「そういうわけじゃ。そなたの要求その一は、のむことはできない」
「なぜだ? われは魔王の娘、炎龍王女であるぞ! われの奴隷にしてやると言っておるのだ。喜んで奴隷になるのが、あたりまえではないか!」
遠目でも、わかる。炎龍王女は、本当に驚いていた。人間たちの回答に。
吐き捨てた。雷姫が。
「どこにもいないね。喜んで奴隷になる人間なんて」
炎姫が口を開いた。落ち着いた口調で。
「人間にとって、最も大切なものは、自由だ。ゆえに我々は、自由を守るために、命を賭けて戦うのだ」
炎龍王女が、叫んだ。動揺したそぶりで。
「おかしい! おかしい! 聞いていた話と違う! 人間にとって一番大切なものは、おのれの欲望のはずだ!」
どよめいた。女生徒たちと兵士たちが。
衝撃的だったのだ。
魔王の娘が、登場したことに。
そのうえ、わずかな家臣と共に、現れたことに。
第十六砦は、南城壁上にある三十の砦の中で、第十五砦と並んで巨大で重要な砦だ。
そのため第十五砦には、南城壁守備隊の総司令官がいる。それに、王国が誇るS級魔法使いも。
一方、第十六砦には、南城壁守備隊の副司令官がいた。すでに戦死したが。
そのため、急遽現役復帰した退役千人隊長アサレウスが、臨時の副司令官を務めている。
アサレウスが大声で答えた。
「ワシの名はアサレウス。この砦の司令官にして、この城壁の臨時副司令官を任されておる。魔王の娘とやら。そなたは、王都に侵攻している魔王軍の副司令官か?」
「違う! われが総司令官だ!」
魔王の娘、炎龍王女も、大声で答えた。
「それなら、そなたは隣の第十五砦へ行くが良い。そちらに、この城壁の総司令官がいるぞ」
そのアサレウスの言葉に、炎龍王女は、あっさりと答えた。
「必要ない。向こうには、別の者たちを行かせた」
「そうか。それなら、とりあえず、話くらいは聞こうか」
アサレウスは、落ち着き払って、そう答えた。
彼が落ち着いているのは、長年に渡る戦歴のおかげだろう。彼は、前回の魔王軍の王都侵攻時は、現役の千人隊長として奮戦したそうだ。
「それでは、言おう」
炎龍王女も、落ち着いているように見える。遠目では。
アサレウスと炎龍王女との距離は、二十メートルはある。
相手が突然攻撃してきても、対応できるように距離を取っているのだ。
炎龍王女が、大声で話し始めた。
「われらの要求、その一!」
大きく息を吸ってから、炎龍王女が大声で言葉を続けた。
「人間どもは全員、われの奴隷となれ!」
どよめいた。女生徒たちが。それに兵士たちも。常軌を逸した要求に。
「ふざんけんな!」
ぶち切れた。雷姫が。
「誰が奴隷なんかになるか!」
雷姫が、鞘から抜いた。雷鳴魔法剣を。
「落ち着かんか! 小娘!」
一喝した。大声で。アサレウスが。
続いて、静かな声で、振り返らずに言葉を続けた。
「剣を鞘に収めよ」
チッと舌打ちをして、ふてくされながらも、雷姫は剣を鞘に収めた。
突然、炎姫が口を開いた。静かに、しかし、力強い口調で。
「我々は、人間の自由を守るために、命を削って戦っている。魔族は、我々を奴隷にすることはできない。なぜなら」
そこで声を張りあげた。炎姫が。
「我々は戦い続けるからだ。最後の一兵になるまで! いや、最後の一兵が死ぬまでだ!」
呼応するかのように、氷姫が口を開いた。
「我々は、何者であるか?」
大声で、そう問いかけた。
言葉を続けた。大きな声で、氷姫が。
「人間の王国を守り、王都を守り、民を守る。我々は、何者か?」
魔法剣姫三名が、声をそろえて叫んだ。
「王国騎士団だ!」
続けて叫んだ。繰り返し同じ言葉を。
「王国騎士団だ! 王国騎士団だ! 王国騎士団だ!」
兵士たち百名も、声を合わせて叫んだ。それに、北校の女生徒たちも。
南校の女生徒たちだけが、この展開を理解できず、驚いた表情で周りを見回している。
アサレウスが、右手を軽く上げた。
次の瞬間、兵士たちは、いっせいに口を閉じた。
力強い声で、呼びかけた。アサレウスが、炎龍王女に。
「そういうわけじゃ。そなたの要求その一は、のむことはできない」
「なぜだ? われは魔王の娘、炎龍王女であるぞ! われの奴隷にしてやると言っておるのだ。喜んで奴隷になるのが、あたりまえではないか!」
遠目でも、わかる。炎龍王女は、本当に驚いていた。人間たちの回答に。
吐き捨てた。雷姫が。
「どこにもいないね。喜んで奴隷になる人間なんて」
炎姫が口を開いた。落ち着いた口調で。
「人間にとって、最も大切なものは、自由だ。ゆえに我々は、自由を守るために、命を賭けて戦うのだ」
炎龍王女が、叫んだ。動揺したそぶりで。
「おかしい! おかしい! 聞いていた話と違う! 人間にとって一番大切なものは、おのれの欲望のはずだ!」
30
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです
忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした
むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる