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第4章第四話 王女の価値
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第4章第四話 王女の価値
全員の視線が、集中した。トッキロに。
叫んだ。首席姫が。両目を、つり上げて。
「あなた、バカなの! あたしたちだけで、なんて。無駄死なんて、ごめんこうむるわ!」
彼女の言葉を継いだ。炎姫が。
「そのとおりだ。我々だけなら、無駄死にしに行くようなものだ。我々は、王都の民を守るため、この城壁を守りぬかねばならない。決して、無駄死にしては、ならないのだ」
「しかし!」
氷姫が、口をはさんだ。強い口調で。
「リリーシア王女殿下がいなければ、王都の民を守れない。我々の力だけでは」
「どういうことですか?」
尋ねた。トッキロが。
「実は……」
話し始めた。氷姫が。
「数日前から、騎士団の幹部連中は、主張している。王都の外壁を放棄して、内壁へ全軍撤退すべきだ、と。その主張に真っ向から反対していたのが、リリーシア王女殿下だ」
内壁は、王宮のある中央区を守る巨大な城壁だ。
「なぜ、外壁を放棄するのですか? まだ、陥落もしていないのに」
「兵力の減少のためだ。騎士団将兵の兵力は、すでに二万名を切っている。三万名を切ってから、幹部連中は、撤退を主張し始めた」
王都防衛のため、現役将兵四万名に、予備役二万名と退役五千名を加えて、総兵力は六万五千名となっていた。魔王軍の王都侵攻時点で。
つまり、当初の三分の一以下の兵力にまで、減少している。現在は。
「しかも……」
炎姫が、つけ加えた。
「今や兵士の半数は、十五歳や十六歳の少年兵と、退役した老兵だ」
尋ねた。トッキロが。憮然とした表情で。
「外壁を放棄したら、王都の十万人の平民は、全滅するのでは? アース・ドラゴンに喰われて」
答えた。氷姫が。強い口調で。
「だから、リリーシア王女殿下が必要なのだ。王都の民を守るためにも」
「不敬であるぞ。そのような言い方は」
たしなめた。炎姫が、氷姫を。
言葉を、続けた。
「リリーシア王女殿下は、存在そのものが、至高の価値である。なぜなら王族の血は、それだけ高貴なのだ」
反論した。雷姫が。
「重要なのは、血筋じゃない。魂だ。騎士団幹部の上級貴族どもは、高貴な血を引いていても、もはや、高貴な魂を失っている。騎士の魂を」
「口を慎め!」
雷姫は、無視した。炎姫の叱責を。
「リリーシア王女には、ある。高貴な騎士の魂が」
口を、はさんだ。トッキロが。
「南校の図書館で、ある古い文献を読みました。その文献によると、内壁内に避難できる南区の平民は、十二家の大商人だけだ、と」
「マジかよ!」
思わず叫んだ。サソリ姫が。
同時に、どよめいた。南校の女生徒たちが。
言葉を続けた。トッキロが。
「その大商人たちは皆、大手商会の主催者です。総合商会の中央商会、北方商会、西方商会、東方商会、南方商会に、専門商会のメタル商会、ソルト商会、ウッド商会、ウール商会、ワイン商会、チーズ商会、それにベーコン商会」
メタル商会は鉄製品や青銅器を扱っている。ソルト商会は塩を、ウッド商会は木材を、ウール商会は毛織物を、扱っている。ワイン商会は葡萄酒を、チーズ商会はチーズやバターなど乳製品を、ベーコン商会はベーコン、ハム、ソーセージを王都に輸送し販売している。
王都では、ベーコンでスープの出汁を取るのが一般的だ。そのため、庶民にとっても、貴族にとっても、必要不可欠な食材が、ベーコンだ。
毒薔薇姫が、尋ねた。トッキロに。
「コットン商会は?」
「その文献には、載っていませんでした」
「なぜよ!」
毒薔薇姫の表情は、険しかった。
あたりまえだ。
なぜなら、彼女の母方の祖父は、コットン商会の創業者なのだから。
「おそらく、創業数百年の老舗大商会で、王族や貴族にとって必要不可欠な商品を扱う商家だけが、保護されるのでしょう」
彼女の母方の祖父は、自分の娘を、南区総督に貢いだ。愛人として。
その見返りに、特権を得た。南区内における庶民用綿布の専売特権を。
それにより、巨万の富を得た。この二十年ほどの間に。
エメラルディアが、口を開いた。炎姫に、視線を向けながら。
「今の話は、本当なのですか?」
「本当だ。前々回の魔王軍の王都侵攻のあと、策定された。内壁内に、避難させるべき人間の選別が」
バン、とテーブルを叩いた。サソリ姫が。
「ふざけんな! 見殺しかよ! あたしたちの家族は!」
叫ぶように尋ねた。毒薔薇姫が。
「あたくしは、避難できるわよね。内壁内に。あたくしは、南区総督の娘なのだから」
トッキロが、答えた。
「避難できるかもしれませんが、コットン商会は破産しますよ」
「なぜよ!」
冷静に、答えた。
「お金持ちは、なぜ、お金持ちなのか。それは、多くの庶民が、商品を買ってくれるから。ゆえに、庶民が全滅したら、お金持ちは破産します。商品を買ってくれる人が、いなくなるので」
叫んだ。毒薔薇姫が。
「じゃあ、どうすればいいのよ!」
「奪還すれば、いいのです。リリーシア王女殿下を。明日の夜明け前までに」
全員の視線が、集中した。トッキロに。
叫んだ。首席姫が。両目を、つり上げて。
「あなた、バカなの! あたしたちだけで、なんて。無駄死なんて、ごめんこうむるわ!」
彼女の言葉を継いだ。炎姫が。
「そのとおりだ。我々だけなら、無駄死にしに行くようなものだ。我々は、王都の民を守るため、この城壁を守りぬかねばならない。決して、無駄死にしては、ならないのだ」
「しかし!」
氷姫が、口をはさんだ。強い口調で。
「リリーシア王女殿下がいなければ、王都の民を守れない。我々の力だけでは」
「どういうことですか?」
尋ねた。トッキロが。
「実は……」
話し始めた。氷姫が。
「数日前から、騎士団の幹部連中は、主張している。王都の外壁を放棄して、内壁へ全軍撤退すべきだ、と。その主張に真っ向から反対していたのが、リリーシア王女殿下だ」
内壁は、王宮のある中央区を守る巨大な城壁だ。
「なぜ、外壁を放棄するのですか? まだ、陥落もしていないのに」
「兵力の減少のためだ。騎士団将兵の兵力は、すでに二万名を切っている。三万名を切ってから、幹部連中は、撤退を主張し始めた」
王都防衛のため、現役将兵四万名に、予備役二万名と退役五千名を加えて、総兵力は六万五千名となっていた。魔王軍の王都侵攻時点で。
つまり、当初の三分の一以下の兵力にまで、減少している。現在は。
「しかも……」
炎姫が、つけ加えた。
「今や兵士の半数は、十五歳や十六歳の少年兵と、退役した老兵だ」
尋ねた。トッキロが。憮然とした表情で。
「外壁を放棄したら、王都の十万人の平民は、全滅するのでは? アース・ドラゴンに喰われて」
答えた。氷姫が。強い口調で。
「だから、リリーシア王女殿下が必要なのだ。王都の民を守るためにも」
「不敬であるぞ。そのような言い方は」
たしなめた。炎姫が、氷姫を。
言葉を、続けた。
「リリーシア王女殿下は、存在そのものが、至高の価値である。なぜなら王族の血は、それだけ高貴なのだ」
反論した。雷姫が。
「重要なのは、血筋じゃない。魂だ。騎士団幹部の上級貴族どもは、高貴な血を引いていても、もはや、高貴な魂を失っている。騎士の魂を」
「口を慎め!」
雷姫は、無視した。炎姫の叱責を。
「リリーシア王女には、ある。高貴な騎士の魂が」
口を、はさんだ。トッキロが。
「南校の図書館で、ある古い文献を読みました。その文献によると、内壁内に避難できる南区の平民は、十二家の大商人だけだ、と」
「マジかよ!」
思わず叫んだ。サソリ姫が。
同時に、どよめいた。南校の女生徒たちが。
言葉を続けた。トッキロが。
「その大商人たちは皆、大手商会の主催者です。総合商会の中央商会、北方商会、西方商会、東方商会、南方商会に、専門商会のメタル商会、ソルト商会、ウッド商会、ウール商会、ワイン商会、チーズ商会、それにベーコン商会」
メタル商会は鉄製品や青銅器を扱っている。ソルト商会は塩を、ウッド商会は木材を、ウール商会は毛織物を、扱っている。ワイン商会は葡萄酒を、チーズ商会はチーズやバターなど乳製品を、ベーコン商会はベーコン、ハム、ソーセージを王都に輸送し販売している。
王都では、ベーコンでスープの出汁を取るのが一般的だ。そのため、庶民にとっても、貴族にとっても、必要不可欠な食材が、ベーコンだ。
毒薔薇姫が、尋ねた。トッキロに。
「コットン商会は?」
「その文献には、載っていませんでした」
「なぜよ!」
毒薔薇姫の表情は、険しかった。
あたりまえだ。
なぜなら、彼女の母方の祖父は、コットン商会の創業者なのだから。
「おそらく、創業数百年の老舗大商会で、王族や貴族にとって必要不可欠な商品を扱う商家だけが、保護されるのでしょう」
彼女の母方の祖父は、自分の娘を、南区総督に貢いだ。愛人として。
その見返りに、特権を得た。南区内における庶民用綿布の専売特権を。
それにより、巨万の富を得た。この二十年ほどの間に。
エメラルディアが、口を開いた。炎姫に、視線を向けながら。
「今の話は、本当なのですか?」
「本当だ。前々回の魔王軍の王都侵攻のあと、策定された。内壁内に、避難させるべき人間の選別が」
バン、とテーブルを叩いた。サソリ姫が。
「ふざけんな! 見殺しかよ! あたしたちの家族は!」
叫ぶように尋ねた。毒薔薇姫が。
「あたくしは、避難できるわよね。内壁内に。あたくしは、南区総督の娘なのだから」
トッキロが、答えた。
「避難できるかもしれませんが、コットン商会は破産しますよ」
「なぜよ!」
冷静に、答えた。
「お金持ちは、なぜ、お金持ちなのか。それは、多くの庶民が、商品を買ってくれるから。ゆえに、庶民が全滅したら、お金持ちは破産します。商品を買ってくれる人が、いなくなるので」
叫んだ。毒薔薇姫が。
「じゃあ、どうすればいいのよ!」
「奪還すれば、いいのです。リリーシア王女殿下を。明日の夜明け前までに」
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