異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通

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第4章第十六話 王女の戦い

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  第4章第十六話 王女の戦い
 飛んで来た。三十個の大型ファイアー・ボールが。いっせいに。
 だが距離は、三十メートルは、ある。
 ファイアー・ボールを放ったときの初速は、速い。秒速十メートルはある。
 だが次の十メートルは、二秒ほどかかる。
 さらにその次の十メートルは、四秒はかかる。
 魔族の放った大型ファイアー・ボールは、核となる炭素の塊の密度が薄いため、徐々に速度が低下するためだ。
 一閃いっせんした。ウオーター・カッターが。
 右から左へ。
 わずか、一秒強で。
 頭上の水球が、一気に縮小した。二メートル以上も、あったのだが。
 全員、首が落ちた。地面に。魔族の首が。
 ウオーター・カッターで、切り落とされて。
 倒れた。
 東方面から来た魔族三十名が。首を、切断されて。
 うまく、いった。
 一度に、できた。全員の首を、切り落とすことが。
 これで、誰もいない。切り落とされた首を、つなぐ味方の魔族は。
 よって、しばらくのちには、東方面の魔族三十名は、死亡する。脳に、血液が送られなくなって。
 放たれたファイアー・ボールは途中で減速し、地面に落下して消滅した。三十個全部。
 エーテルを操る者がいなくなれば、ファイアー・ボールは落下する。
 地面には、牧草が生い茂っている。
 ファイアー・ボールの火が牧草に燃え移るかと思ったが、牧草はほとんど燃えなかった。
 夕方のスコールで、牧草が、たっぷりと水を含んでいるからだ。
 鉄龍将軍が、怒鳴った。トッキロに向かって。王国共通語で。
 「おのれ! 黒髪の人間め! 必ず殺す! 殺して喰ってやる! 豚のように丸焼きにしてな!」
 だが、鉄龍将軍は動かなかった。その場から。鋼鉄製の盾に身を隠しながら。
 トッキロは、移動し始めた。足早に。南西方面へ。
 もうすぐ、盾を持った魔族約五十名が駆けつける。北の方角から。
 その前に、氷姫たちと合流して脱出しなければ。
 早足で歩きながらも、無詠唱魔法で、頭上の水球を拡大した。
 夕方のスコールと熱帯夜のおかげで、辺り一面に水蒸気が満ちている。
 大型ウオーター・ボールを作るのには、適した環境だ。
 炎が見えた。いくつも。南西方面に。
 戦闘だ。
 氷姫たちと、西側の見張りの魔族たちが戦っているのだ。
 魔族たちは、ファイアー・ボールを連続で放っている。バレーボール大の火球を。
 一方、氷姫と雷姫は、氷結魔法剣と雷鳴魔法剣で撃墜している。飛んでくる火球を。氷のやいばや雷の一撃で、火球の核を破壊して。
 西方面に回り込みながら、接近した。
 すばやく、数えた。
 西側の魔族の人数を。
 八名しか、いない。
 西側の見張りは、十名いるはずだが。
 二名は、すでに討ち死にしたようだ。
 よく見ると、氷姫たちの隊列のすぐ前方に、魔族が二名倒れている。
 接近したところを、長槍兵に心臓を槍で突かれて戦死したのだ。
 通常は、魔族はスピードもパワーも人間を圧倒している。
 そのため、長槍兵に心臓を貫かれるヘマはしない。
 だが今回は、弓兵が毒矢を使用している。
 毒矢で動きが鈍ったところを、長槍兵が仕留めたのだ。
 作戦通りだ。
 毒矢で動きが鈍った魔族たちは、接近戦は不利だと判断したようだ。距離を取って戦っている。氷姫たちから、三十メートルほども。
 氷結魔法剣と雷鳴魔法剣による遠距離魔法攻撃の有効射程距離は、二十数メートルくらいか。
 とはいえ、三十メートル程度では、弓兵の有効射程距離内だ。
 しかし、弓兵は二名だけだ。弓兵が持参した毒矢は、一人あたり二十本だ。
 一度の戦闘で、すべての毒矢を使い切るわけにはいかない。
 そのため弓兵は、もう、矢を放っていない。弓矢を構え、前進しようとする魔族に矢を向けてはいるが。
 氷姫や兵士たちは、一列横隊で魔族たちと対峙している。
 その一列横隊の後方で、仁王立ちしている。背の高い姫騎士が。
 リリーシア王女だ。
 ひと目でわかる。彼女が、総司令官だと。
 それだけ、リリーシア王女の存在感は抜群だ。
 王女の後方では、黒猫姫が避難誘導をしている。人質の民間人たちを。魔族の野営陣地から脱出させるために。民間人の半分以上は、子どもたちだ。
 はるか前方では、首席姫が誘導している。民間人たちを。
 一歩も退けない。リリーシア王女と兵士たち、それに氷姫と雷姫は。
 なぜなら、彼女たちの後方には、人質の民間人たちがいるからだ。
 飛んでくる火球も、撃ちもらしは許されない。
 撃ちもらせば、後方の民間人に直撃するからだ。
 彼女たちは、背負っている。千名の民間人の命を。
 守るための戦いだ。名も知らぬたみを。
 民を守る。そのために、一歩も退かない。
 それが、リリーシア王女の戦いなのだ。
 魔族たちは、火球を放ち続けている。横一列横隊で。次から次ぎに、五月雨さみだれ式に。
 同時に、火球が放たれた。三つ同時だ。
 撃墜した。氷結魔法剣と雷鳴魔法剣で、二つの火球を。
 もう一つが、そのまま直進した。リリーシア王女に向かって。
 まずい。
 直撃する。リリーシア王女に。
 そう思ったときだった。
 さけんだ。リリーシア王女が。右手を前に伸ばして。視線を、そむけることなく。
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