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戦場の匂い
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「陛下。まずは無事なお姿をこの目で見れて安心いたしました」
「お前は……レックバルトか。成長したな、一瞬そなただと気づかなかったぞ」
「は。陛下に最後にお会いしたのは、5年前の建国祭でしたか」
その青年は10代後半くらいに見えた。浅黒い肌に精悍な顔つき、短い黒髪と合わせて爽やかさを感じさせる。聞けばゼノヴァーム領領主の息子だという。
「レックバルト。まずはこうして駆け付けてくれた事、礼を言う。だがあまりにも早い到着ではないか」
「はい。実は我が領では以前よりルングーザ領とテンブルク領を警戒しておりました」
「警戒……?」
「失脚したヴィンチェスターがテンブルク領へ移動し、時を待たずに魔法技術の復活など怪しい言動に出たのです。そしてそれに賛同したルングーザ領へと籠る……。はたから見たら何か企んでいる様にしか見えません。それに彼の領地は、ヴィンチェスターが移ってから軍事演習の頻度が増えました。杞憂であれば良かったのですが、何かあっては遅いと、ルングーザ領軍が動く度に密かにこちらも兵を動かしていたのです」
俺はずっと帝都にいたし、結社の事も把握していたので、ヴィンチェスターが何かの時間稼ぎをしているとは感じていた。だが後手にならざるを得なかったのは確かだ。
しかし外から見て、その行動を怪しいと思う者もいたらしい。
気になるのは、兵を立ち上げて動かすだけでも相当な金と物資を消耗する。にも関わらずルングーザ領軍の動きに備えていた事実。
よっぽど皇族に対する忠義が厚いのか、あるいはヴィンチェスターが行動を起こすと確信していたのか。
いずれにせよこうして一番に駆け付けてきたのだし、実際狙いは外れていなかったのだが。……ゼノヴァーム領か。個人的に興味があるな。
会議はレックバルトを含めて話が進む。議題はゼノヴァーム領の軍を戦力に計上した上で、これからどうするかだった。
帝都南部には二つの領軍が結集しつつあるが、ここにヴィンチェスターを始めとする主だった貴族がいるのも事実。そしてこれを逃せば、後々どういう影響を及ぼす事になるのか未知数。
「やはりヴィンチェスターの居場所を特定している、今のうちに打って出るべきでしょう」
「レックバルト……。しかしそなたの領軍と帝都に残る騎士団を合わせても、兵数は向こうの方が多い」
そう。正確な数は読めていなかったが、現時点でも敵の方が倍……とまではいかなくても、総数はこちらが下回っていた。
しかしこれにレックバルトはニヤリと笑みを浮かべる。
「それが良いのです。もしこちらの兵数の方が上回っていれば、相手は今頃逃げ出しており、ルングーザ領なりテンブルク領に籠るでしょう。まだ帝都近郊で機を伺っているのは、こちらの兵数が少ない上に未練があるからと推察します。おそらく今ここを離れれば、再度帝都を抑える機会はそうそう訪れない事を分かっているのでしょう」
なるほど……。一理ある気がしてきた。
今やられたら厄介なのは、さっさと自領に閉じこもられる事だ。そうなると内乱が本格化しかねないし、それは帝国の国力を大きく落とす事に繋がる。
ではどうするか。敵がこちらの戦力を侮っているうちにさっさと勝負を仕掛け、総大将が逃げ出す前に捕える。
これがもっとも最速かつスマートにこの騒動を納める手段になるだろう。レックバルトはそれが分かっているのだ。
とは言え、数の有利が働かないのは間違いないし、口で言うほど簡単な事でもないが。
「言わんとするところは理解できるが……」
「しかし難しいぞ……」
「騎士団も獣に対する連日の対処で、決して余裕がある訳では……」
「だが……」
議論は紛糾する。しかしここで再度声をあげたのはレックバルトだった。
「こうして議論するのは結構ですが、今もヴィンチェスターは体勢を整えています。陛下。ご決断を」
「若造が、黙っておれ!」
「お前が陛下に決を迫るとは、何事か!」
「一番に駆け付けたからと調子にのりおって……」
「いや、レックバルト殿の言う事も一理あろう」
「うむ。今は話している時間がもったいないのも事実。だが戦力に不安があるのも確かなのだ」
……こういう会議はもう少し人数を絞ってやった方が良いかもな。意見が出るのは結構だが、まとまらなければ意味がない。
だがレックバルトはさっきから的確なタイミングで議題の方針を示している。議論が余計な脇道に逸れない様にと、適宜修正しているのだ。
「こちらは数は少なくとも、騎兵を編成しております。そしてここには閃光の剣騎士クインシュバイン様もおられる。昨日今日組んだ様な烏合の衆など、打ち砕いてご覧にいれましょう」
クインの名は相当知れ渡っている様だ。兄として誇らしい。
クインもレックバルトの意見に賛同の意を示す。ここで席を立ったのは、1人の大柄な男だった。
「父上! 私も戦場に立ち、ヴィンチェスターめをこの手で討ちたく思います!」
「グラスダーム……」
話を聞くに、この男はウィックリンの息子。第二皇子のグラスダームというらしい。
「これまで私とヴィンチェスターの距離が近かったのは事実。それは認めましょう。だからこそ! 帝国を裏切ったヴィンチェスターをこの手で誅せねば、皇子として示しがつかぬのです!」
第二皇子はおそらくヴィンチェスター同様、軍閥と距離が近かったのだろう。ここで自ら動いてヴィンチェスターを討たねば、この後の帝国で自分の立場が無いと理解しているのだ。
動機を正直に話すあたりどうかと思うが、裏表のない実直な性格なのかもしれない。ウィックリンは強い眼差しで周囲を見渡す。
「では出陣を命じる。騎士団とゼノヴァーム領軍は協力し、皇帝位を簒奪せんとする反逆者どもを討つのだ」
「は!」
「おお!」
「クインシュバイン様。直ぐにでも段取りを決めたいのですが」
「分かりました。行きましょう」
方針が固まり、全員移動を開始する。会議室に残ったのはウィックリンとエルヴァールだった。エルヴァールは改めて俺に礼を述べる。
「ヴェルト殿。今回は大変世話になった。黒狼会がいなければ、今も城はヴィンチェスターに抑えられたままであっただろう」
「付け加えるなら、自称女神が好き勝手しだす可能性もあった。この時代このタイミングに送ってくれたシャノーラ殿下には感謝だな」
しかし、とウィックリンは懸念を口にする。
「最後の詰めを誤る訳にはいかぬ。もし万が一にでも敗れれば、帝国は長い内乱の時代を迎える可能性もあるのだ。そうなれば私の進めていた政策も頓挫するだろうし、一体どれだけの戦火が広がる事になるか……」
前皇帝の拡大路線を中止し、国内情勢の安定に心を砕いてきたウィックリンからすれば、不安にもなるだろうな。
だがその不安は杞憂だ。俺はみんなに視線を向ける。仮面越しではあったが、俺がどういうつもりなのかは理解している様子だった。
「陛下。黒狼会には掟がいくつかありましてね」
「ヴェルト殿……?」
「そして黒狼会は群狼武風団長、ローガの夢を今に繋ぐ組織でもある。戦に巻き込まれる民が出ない様に。民たちが平和に過ごせる様に。そんな願いを託されています。……今ここで動かなくては、この先胸を張ってローガに会いに行けなくなってしまう」
これから始まる戦で、今後の帝国の運命が決まるのだ。それが分かっていながら何もしないなんて選択肢は取れない。
「私たちもこの度の戦に参戦しましょう」
「……! それは……」
「我々はそれぞれが一騎当千だと自負しています。その実力は先ほどもお見せした通り。まぁ正体は明かしたくないので、そこは上手く取り計らっていただけると助かるのですが……」
アデライアの依頼は完遂した。群狼武風の時間は終了だ。ここからはローガに夢を託された黒狼会として、久しぶりに戦場に立つとしよう。
「……すまない。いや、ありがとう。時を超えてまたゼルダンシア一族に助力してくれる事、私は生涯忘れない。レックバルトとクインシュバイン、それにグラスダームには私から伝えておく」
「分かりました。……そういえばレックバルトですが。中々の男ですね」
レックバルトに対して抱いた感想を素直に伝える。ウィックリンもうむと頷いた。
「今、他領に出ている第一皇子がいるのだが。ゼノヴァーム領領主の妹は、それの母なのだ」
「え……という事は、つまり……」
「第一夫人はゼノヴァーム領出身という事だ。これは私が、国内情勢に取り組むという姿勢を示す事にもなっている」
国内大貴族と繋がりを深くするため、血縁関係を結ぶのは為政者であれば珍しい話ではない。むしろ普通だし、大帝国の皇帝ともなればその数は多いだろう。
そして第一夫人に他国や併合したばかりの国の王族ではなく、国内有力貴族を選んだのは、国内外にウィックリンの統治方針を伝えるメッセージとなった。
「なるほど。それもあってゼノヴァーム領へ救援を頼まれたのですね」
「理由はそれだけではないがな。大領主はどこも独立性の強い統治を行っておるが、中でもゼノヴァーム領は、軍も独自の運用を行っておる。おそらくレックバルトも、領主の許しを得ずにここまで駆け付けたのだろう」
「……そんな事が?」
「自律自走を貴ぶ気風なのだ。だが結果としてそれが今回プラスに働いた」
領主の許可なく、独自に軍を動かせる権限を委任されている……? あまり考えられないが、レックバルトならその権限に相応しい実力があるのかもしれない。
レックバルトが一番に帝都に駆け付けられたのも、ゼノヴァーム領の特殊性があるからこそ……か。
「戦場での活躍が見られるのも楽しみですね。ああ、グラスダーム殿下もきっちりお守りするのでご安心を。ガードン、戦場では殿下の守護を頼む」
「了解だ」
「久しぶりの戦場だねぇ~!」
「魔法は使っていいんだろ? ま、なんとでもなるだろ!」
ここにきて力を出し惜しみする理由はないし、そんな余裕もないからな。
しかしそうなるとロイの独壇場になりそうだ。この時代の兵士たちは魔法なんて使えないし、エルクォーツによる強化措置を受けている者もいないだろうからな。
「やりすぎるなよ? さぁ……黒狼会の戦いを始めようか」
「お前は……レックバルトか。成長したな、一瞬そなただと気づかなかったぞ」
「は。陛下に最後にお会いしたのは、5年前の建国祭でしたか」
その青年は10代後半くらいに見えた。浅黒い肌に精悍な顔つき、短い黒髪と合わせて爽やかさを感じさせる。聞けばゼノヴァーム領領主の息子だという。
「レックバルト。まずはこうして駆け付けてくれた事、礼を言う。だがあまりにも早い到着ではないか」
「はい。実は我が領では以前よりルングーザ領とテンブルク領を警戒しておりました」
「警戒……?」
「失脚したヴィンチェスターがテンブルク領へ移動し、時を待たずに魔法技術の復活など怪しい言動に出たのです。そしてそれに賛同したルングーザ領へと籠る……。はたから見たら何か企んでいる様にしか見えません。それに彼の領地は、ヴィンチェスターが移ってから軍事演習の頻度が増えました。杞憂であれば良かったのですが、何かあっては遅いと、ルングーザ領軍が動く度に密かにこちらも兵を動かしていたのです」
俺はずっと帝都にいたし、結社の事も把握していたので、ヴィンチェスターが何かの時間稼ぎをしているとは感じていた。だが後手にならざるを得なかったのは確かだ。
しかし外から見て、その行動を怪しいと思う者もいたらしい。
気になるのは、兵を立ち上げて動かすだけでも相当な金と物資を消耗する。にも関わらずルングーザ領軍の動きに備えていた事実。
よっぽど皇族に対する忠義が厚いのか、あるいはヴィンチェスターが行動を起こすと確信していたのか。
いずれにせよこうして一番に駆け付けてきたのだし、実際狙いは外れていなかったのだが。……ゼノヴァーム領か。個人的に興味があるな。
会議はレックバルトを含めて話が進む。議題はゼノヴァーム領の軍を戦力に計上した上で、これからどうするかだった。
帝都南部には二つの領軍が結集しつつあるが、ここにヴィンチェスターを始めとする主だった貴族がいるのも事実。そしてこれを逃せば、後々どういう影響を及ぼす事になるのか未知数。
「やはりヴィンチェスターの居場所を特定している、今のうちに打って出るべきでしょう」
「レックバルト……。しかしそなたの領軍と帝都に残る騎士団を合わせても、兵数は向こうの方が多い」
そう。正確な数は読めていなかったが、現時点でも敵の方が倍……とまではいかなくても、総数はこちらが下回っていた。
しかしこれにレックバルトはニヤリと笑みを浮かべる。
「それが良いのです。もしこちらの兵数の方が上回っていれば、相手は今頃逃げ出しており、ルングーザ領なりテンブルク領に籠るでしょう。まだ帝都近郊で機を伺っているのは、こちらの兵数が少ない上に未練があるからと推察します。おそらく今ここを離れれば、再度帝都を抑える機会はそうそう訪れない事を分かっているのでしょう」
なるほど……。一理ある気がしてきた。
今やられたら厄介なのは、さっさと自領に閉じこもられる事だ。そうなると内乱が本格化しかねないし、それは帝国の国力を大きく落とす事に繋がる。
ではどうするか。敵がこちらの戦力を侮っているうちにさっさと勝負を仕掛け、総大将が逃げ出す前に捕える。
これがもっとも最速かつスマートにこの騒動を納める手段になるだろう。レックバルトはそれが分かっているのだ。
とは言え、数の有利が働かないのは間違いないし、口で言うほど簡単な事でもないが。
「言わんとするところは理解できるが……」
「しかし難しいぞ……」
「騎士団も獣に対する連日の対処で、決して余裕がある訳では……」
「だが……」
議論は紛糾する。しかしここで再度声をあげたのはレックバルトだった。
「こうして議論するのは結構ですが、今もヴィンチェスターは体勢を整えています。陛下。ご決断を」
「若造が、黙っておれ!」
「お前が陛下に決を迫るとは、何事か!」
「一番に駆け付けたからと調子にのりおって……」
「いや、レックバルト殿の言う事も一理あろう」
「うむ。今は話している時間がもったいないのも事実。だが戦力に不安があるのも確かなのだ」
……こういう会議はもう少し人数を絞ってやった方が良いかもな。意見が出るのは結構だが、まとまらなければ意味がない。
だがレックバルトはさっきから的確なタイミングで議題の方針を示している。議論が余計な脇道に逸れない様にと、適宜修正しているのだ。
「こちらは数は少なくとも、騎兵を編成しております。そしてここには閃光の剣騎士クインシュバイン様もおられる。昨日今日組んだ様な烏合の衆など、打ち砕いてご覧にいれましょう」
クインの名は相当知れ渡っている様だ。兄として誇らしい。
クインもレックバルトの意見に賛同の意を示す。ここで席を立ったのは、1人の大柄な男だった。
「父上! 私も戦場に立ち、ヴィンチェスターめをこの手で討ちたく思います!」
「グラスダーム……」
話を聞くに、この男はウィックリンの息子。第二皇子のグラスダームというらしい。
「これまで私とヴィンチェスターの距離が近かったのは事実。それは認めましょう。だからこそ! 帝国を裏切ったヴィンチェスターをこの手で誅せねば、皇子として示しがつかぬのです!」
第二皇子はおそらくヴィンチェスター同様、軍閥と距離が近かったのだろう。ここで自ら動いてヴィンチェスターを討たねば、この後の帝国で自分の立場が無いと理解しているのだ。
動機を正直に話すあたりどうかと思うが、裏表のない実直な性格なのかもしれない。ウィックリンは強い眼差しで周囲を見渡す。
「では出陣を命じる。騎士団とゼノヴァーム領軍は協力し、皇帝位を簒奪せんとする反逆者どもを討つのだ」
「は!」
「おお!」
「クインシュバイン様。直ぐにでも段取りを決めたいのですが」
「分かりました。行きましょう」
方針が固まり、全員移動を開始する。会議室に残ったのはウィックリンとエルヴァールだった。エルヴァールは改めて俺に礼を述べる。
「ヴェルト殿。今回は大変世話になった。黒狼会がいなければ、今も城はヴィンチェスターに抑えられたままであっただろう」
「付け加えるなら、自称女神が好き勝手しだす可能性もあった。この時代このタイミングに送ってくれたシャノーラ殿下には感謝だな」
しかし、とウィックリンは懸念を口にする。
「最後の詰めを誤る訳にはいかぬ。もし万が一にでも敗れれば、帝国は長い内乱の時代を迎える可能性もあるのだ。そうなれば私の進めていた政策も頓挫するだろうし、一体どれだけの戦火が広がる事になるか……」
前皇帝の拡大路線を中止し、国内情勢の安定に心を砕いてきたウィックリンからすれば、不安にもなるだろうな。
だがその不安は杞憂だ。俺はみんなに視線を向ける。仮面越しではあったが、俺がどういうつもりなのかは理解している様子だった。
「陛下。黒狼会には掟がいくつかありましてね」
「ヴェルト殿……?」
「そして黒狼会は群狼武風団長、ローガの夢を今に繋ぐ組織でもある。戦に巻き込まれる民が出ない様に。民たちが平和に過ごせる様に。そんな願いを託されています。……今ここで動かなくては、この先胸を張ってローガに会いに行けなくなってしまう」
これから始まる戦で、今後の帝国の運命が決まるのだ。それが分かっていながら何もしないなんて選択肢は取れない。
「私たちもこの度の戦に参戦しましょう」
「……! それは……」
「我々はそれぞれが一騎当千だと自負しています。その実力は先ほどもお見せした通り。まぁ正体は明かしたくないので、そこは上手く取り計らっていただけると助かるのですが……」
アデライアの依頼は完遂した。群狼武風の時間は終了だ。ここからはローガに夢を託された黒狼会として、久しぶりに戦場に立つとしよう。
「……すまない。いや、ありがとう。時を超えてまたゼルダンシア一族に助力してくれる事、私は生涯忘れない。レックバルトとクインシュバイン、それにグラスダームには私から伝えておく」
「分かりました。……そういえばレックバルトですが。中々の男ですね」
レックバルトに対して抱いた感想を素直に伝える。ウィックリンもうむと頷いた。
「今、他領に出ている第一皇子がいるのだが。ゼノヴァーム領領主の妹は、それの母なのだ」
「え……という事は、つまり……」
「第一夫人はゼノヴァーム領出身という事だ。これは私が、国内情勢に取り組むという姿勢を示す事にもなっている」
国内大貴族と繋がりを深くするため、血縁関係を結ぶのは為政者であれば珍しい話ではない。むしろ普通だし、大帝国の皇帝ともなればその数は多いだろう。
そして第一夫人に他国や併合したばかりの国の王族ではなく、国内有力貴族を選んだのは、国内外にウィックリンの統治方針を伝えるメッセージとなった。
「なるほど。それもあってゼノヴァーム領へ救援を頼まれたのですね」
「理由はそれだけではないがな。大領主はどこも独立性の強い統治を行っておるが、中でもゼノヴァーム領は、軍も独自の運用を行っておる。おそらくレックバルトも、領主の許しを得ずにここまで駆け付けたのだろう」
「……そんな事が?」
「自律自走を貴ぶ気風なのだ。だが結果としてそれが今回プラスに働いた」
領主の許可なく、独自に軍を動かせる権限を委任されている……? あまり考えられないが、レックバルトならその権限に相応しい実力があるのかもしれない。
レックバルトが一番に帝都に駆け付けられたのも、ゼノヴァーム領の特殊性があるからこそ……か。
「戦場での活躍が見られるのも楽しみですね。ああ、グラスダーム殿下もきっちりお守りするのでご安心を。ガードン、戦場では殿下の守護を頼む」
「了解だ」
「久しぶりの戦場だねぇ~!」
「魔法は使っていいんだろ? ま、なんとでもなるだろ!」
ここにきて力を出し惜しみする理由はないし、そんな余裕もないからな。
しかしそうなるとロイの独壇場になりそうだ。この時代の兵士たちは魔法なんて使えないし、エルクォーツによる強化措置を受けている者もいないだろうからな。
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