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時勢
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「先生
こちらに来られたのは、何かワタシに話があったからじゃないんですか。」
向かい側の鷹村の目をじっと見て、未来は言った。
「いや、大した事じゃないんだが、キミの耳にも入れといた方がいいと思ってね。」
「はい。
それはどんな?」
「上本組の組長が引退し、その妻の上本翔子が跡目を継ぐ事になった。」
「そうなんですか…」
「一見、一般市民となった未来ちゃんには関係ない話だと思えるが、実はそうでもなくてね。」
「どういうことですか?」
「大友組にも動きがある。」
「えっ…」
「キミや松山亮輔、新田薫のおかげで大友組を壊滅に追い込めた。
大友は獄中で病死し、多村は刑務所内で酷い目に遭ったらしく、精神に異常をきたしたようで、今は自分の事も誰だかわからない状態だそうだ。
キムは死刑が確定し、執行の日を恐れながら生きているらしく、我々にとっての敵は、もうどこにも存在しない。」
「そうですよね。
だったら…」
「存在しない…
筈だった。
が、そうは簡単に済まなかったというのが正直なところだ。」
「…」
「大友には息子がいた。
大友賢
年齢は、キミと同じだから、もう四十を越えている。」
「知っています。
何年かして大友組を引き継いだんですよね。」
「ああ。
我々も垂水組が分裂し、力を失ってしまったが、大友組に比べればかなりマシだと言えた。
だが、現状では日本最大の暴力団である上本組の、カリスマ的な求心力を持っていた上本秀和が引退する事により、この大阪の街が不穏な空気に包まれている。」
「上本組が求心力を失くした事と、大友組が力を取り戻す事に、何か関係はあるんですか。」
「ある。
キミの夫だった岡田優磨が大友の策略で死んでしまい、他にも多数の犠牲者が出てしまった。
当時の状勢を踏まえ、我々は報復に出ず、静観する事を決めた。
だが、執行部のその決定に不満を抱く者は少なくなく、結果として後の分裂の遠因となってしまったんだ。
その後、我々は、神戸垂水組を立ち上げ、この稼業を続ける事になった。」
「それは存じ上げております。
でも…」
「キミ達のおかげで、大友組を潰す事が出来て、我々は溜飲の下がる思いだったが、分裂して袂を分かった組の中には、ウチに敵対するような行動に出る組もあってね。
それらの組との関係改善に、この十年のほとんどの時間を費やしたんだ。
だが、事ははそう甘くないわけで、元垂水組の中で、神戸垂水組に敵意持つ者を集め、何かを企んでいるという情報が入ってきた。
大友組という看板は下ろしたが、大友賢は報復の機会を虎視眈々と狙っている。
報復される筋合いはないんだがね。
まあ、ヤクザなんて理不尽な生き物だから、こんな風になっている。
未来ちゃんが危険な目に遭う事はないと思うけど、一応耳に入れておきたくてね。」
鷹村の言葉を、未来は神妙に聞いていた。
こちらに来られたのは、何かワタシに話があったからじゃないんですか。」
向かい側の鷹村の目をじっと見て、未来は言った。
「いや、大した事じゃないんだが、キミの耳にも入れといた方がいいと思ってね。」
「はい。
それはどんな?」
「上本組の組長が引退し、その妻の上本翔子が跡目を継ぐ事になった。」
「そうなんですか…」
「一見、一般市民となった未来ちゃんには関係ない話だと思えるが、実はそうでもなくてね。」
「どういうことですか?」
「大友組にも動きがある。」
「えっ…」
「キミや松山亮輔、新田薫のおかげで大友組を壊滅に追い込めた。
大友は獄中で病死し、多村は刑務所内で酷い目に遭ったらしく、精神に異常をきたしたようで、今は自分の事も誰だかわからない状態だそうだ。
キムは死刑が確定し、執行の日を恐れながら生きているらしく、我々にとっての敵は、もうどこにも存在しない。」
「そうですよね。
だったら…」
「存在しない…
筈だった。
が、そうは簡単に済まなかったというのが正直なところだ。」
「…」
「大友には息子がいた。
大友賢
年齢は、キミと同じだから、もう四十を越えている。」
「知っています。
何年かして大友組を引き継いだんですよね。」
「ああ。
我々も垂水組が分裂し、力を失ってしまったが、大友組に比べればかなりマシだと言えた。
だが、現状では日本最大の暴力団である上本組の、カリスマ的な求心力を持っていた上本秀和が引退する事により、この大阪の街が不穏な空気に包まれている。」
「上本組が求心力を失くした事と、大友組が力を取り戻す事に、何か関係はあるんですか。」
「ある。
キミの夫だった岡田優磨が大友の策略で死んでしまい、他にも多数の犠牲者が出てしまった。
当時の状勢を踏まえ、我々は報復に出ず、静観する事を決めた。
だが、執行部のその決定に不満を抱く者は少なくなく、結果として後の分裂の遠因となってしまったんだ。
その後、我々は、神戸垂水組を立ち上げ、この稼業を続ける事になった。」
「それは存じ上げております。
でも…」
「キミ達のおかげで、大友組を潰す事が出来て、我々は溜飲の下がる思いだったが、分裂して袂を分かった組の中には、ウチに敵対するような行動に出る組もあってね。
それらの組との関係改善に、この十年のほとんどの時間を費やしたんだ。
だが、事ははそう甘くないわけで、元垂水組の中で、神戸垂水組に敵意持つ者を集め、何かを企んでいるという情報が入ってきた。
大友組という看板は下ろしたが、大友賢は報復の機会を虎視眈々と狙っている。
報復される筋合いはないんだがね。
まあ、ヤクザなんて理不尽な生き物だから、こんな風になっている。
未来ちゃんが危険な目に遭う事はないと思うけど、一応耳に入れておきたくてね。」
鷹村の言葉を、未来は神妙に聞いていた。
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