泥々の川

フロイライン

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窮状

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「あ、大野さん」

駅で客を待つ百恵の前に、大野が現れた。

「どないや?」


「今日はあかんなあ。
でも、まだこれからやし、頑張るわ。」

「そうか。

ちょっと百恵に会わせたい人がおってな。

そこの喫茶店に一緒に来てくれるか」


「はい。
わかりました」


百恵は大野に連れられて、すぐ近くにある喫茶店に入っていった。


4人掛けのテーブル席に二人並んで座った二人だったが

「もうすぐ来るわ、なに注文する?」


「ワタシはミルクセーキにする。」


「すんません。

この子はミルクセーキ、ワシはアメリカンちょうだい」

と、茶髪のウェイトレスに大野が注文を通した。


「ウチに会わせたい人て、一体誰ですのん?」

注文した品が来るまでの間、百恵は気になって大野に質問したが


「まあ、会うたらわかるわ

あ、来たわ。」


百恵は大野が入ってきた男に手を挙げるのを見て、そっちの方向に視線を移した。


「すんません。
遅なってしもて」


男は頭を下げながら二人の向かい側に腰掛けた。

サングラスをかけ、ブルーの鮮やかなスーツ姿の男は、一目でサラリーマンではないということがわかった。

「紹介するわ。

こちらは京活の村田さんや。」


「初めまして、村田といいます。」

村田と名乗ったその男は、百恵に名刺を渡した。

百恵は両手で名刺を受け取り、頭を下げた。


「ウチの看板娘の百恵です。」

大野は村田に百恵を紹介した。

「聞いていた以上の美人さんや。
こりゃ驚いた」

と、村田は百恵を見ながら言った。


「村田さん、どうでっしゃろ?

百恵は使えそうでっか?」


大野が聞くと、村田は大きく二度頷いた。


「はい。
間違いなくスターになれる存在ですわ。」

と。


さっきから何が何だかさっぱりわからない百恵は、二人の話を黙って聞いていたが、大野の言葉に耳を疑った。


「百恵、オマエ
もう売春は辞めい。
卒業や。」


「えっ、どういうこと?」

ここで初めて、百恵が口を開いた。


「大野さん、私から百恵さんに説明させてもろてもよろしいか?」

と、村田が言うと、大野は頷いた。、


「百恵さん

さっきご挨拶した通り、私は京活という映画会社の者です。

実はあなたをウチにスカウトしたいと思い、ここにお邪魔させていただいた次第です。」


「スカウト?」


「そうです。スカウトです。」


村田は百恵に詳細を語り出した。
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