泥々の川

フロイライン

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暁光

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「今日はこの前ご一緒されていたカノジョは?」


後藤が聞くと、男は横に首を振った。


「来てないですよ。
それに、あの子はカノジョじゃないし。
ただの友達です。」

男はそう言って笑い、タバコに火をつけた。


江藤は、その会話に聞き耳を立てていたが、そんな話より、新宿龍神会の話が出ないかと期待を持って見ていた。

この前の会話で、今日、新宿龍神会と、この若い男が会う約束をしている筈。
どんな関係かはわからないが。

それまでの間、下手に悟られる事なく、路傍の石の如く、存在を消しておかなければならなかった。


一時間ほどが経過しただろうか

まだ梁川は姿を見せず、江藤も男も、静かに酒を飲みながら時間を潰していた。


「あの、すいません」

しかし、何を思ったのか、ここで、江藤が男に話しかけたのだ。


「?」


男は、ここにきて急に話しかけてきた見知らぬ客に、少し驚いたような顔をしていたが、江藤は、構わず話を続けた。


「いい時計をしてらっしゃいますね。

オメガですか?」

男の腕に光る時計を見つめながら質問したのだ。


「あ、

ええ、そうです。」


「高かったんじゃないですか。
私は時計好きでね。目ざとく人様の腕時計が気になってしまって。
ついつい話しかけてしまいまして、すみません。」


「いえいえ、僕も好きなので、気持ちはよくわかります。」


「お若いのになかなか渋いご趣味をなさってますねえ。」


「全然ですよ。
まだ給料もそんなにもらえる身分じゃないので、本当に欲しいものは手に入れられてないですね。」

男は自嘲気味に言って笑った。


しかし、男は時計だけではなく、スーツやシャツ、ネクタイなど、全身を高級品で固めており、実家が金持ちだということが窺えた。


もう少し時計談義をしてみようと、江藤が再び男の方を向いた瞬間、後藤が割って入った。


「鹿島さん

来られましたよ。」

と、声をかけたのだ。



鹿島と呼ばれたその男は、振り返って後ろを確認すると、江藤の方を見て

「すいません。知り合いの人が来たもんで。
ちょっと失礼します」

そう言うと立ち上がり、奥のボックス席の方に移動した。


江藤は軽く会釈をして、手元の水割りを口に持っていった。

横目で見ると、人相の悪い男二名がどかっと座っており、そこにお辞儀をしながら鹿島が向かい側に座った。


微妙に話が聞こえない距離にあり、もどかしい思いをしながらその光景を見つめる江藤であった。

その男二名のうち、一人は間違いなく梁川であるという確信を持ちながら…
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