鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

古川恵美梨の真骨頂

「あーっ！

また止められた…」


佐藤は頭を抱えた。


この第四セットに、勢いをそのまま維持して入り、一気に決めてしまうかと思われた鐘ヶ岡だったが、紅陽の反撃にさらされ、逆にセットポイントを迎えられてしまった。



「高山先生

新田さんも決めてはいますが、向こうの古川さんも精度が上がってきています。

どういう事ですか？」



「佐藤校長

これが古川選手の本来の姿に近いものです。

本当であれば、多分ストレートで負けていた事でしょう。

少しでも調子を狂わせといてよかった。」



「あ、いや、でも、それじゃあ負けてしまうじゃないですか。」



「まあ、古川さんのコンディションもようやく回復したんでしょう。
こちらにはもう、アドバンテージはありませんよ。」


「そんな…」



「後は、新田さんの極限まで引き上げられた運動能力が勝るか、古川選手の地力が勝るか、神のみぞ知るってところです。」


高山がそう言ったところで、紅陽がこのセットを25-21で取り、セットカウントを2-2のタイに追いついてきた。


「やはり、すんなりは勝たせてくれませんなあ。」



高山が笑って言うと、佐藤は、少し青ざめた顔で


「このセットで学園の未来が決まってしまう…

私のクビも含めて…」　

と、震える声で呟いた。