鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

決着

27-28


紅陽が一点リードして、紅陽側にサーブ権が移った。


木本は、嫌な予感がした。

本来であればテクニカルタイムアウトを取るところだが、最終第五セットは、ルール上、それが取れない事になっている。


鐘ヶ岡側に不安を持たせたまま、紅陽の泉口舞香からのサーブがネットを越えて入ってきた。


「あっ！」


何人もの人間が、思わず声を上げてしまった。


麻由香と陽菜は、ビミョーな場所に落ちてきたボールを互いに拾う事なく、お見合いをしてしまったのである。

完全に固まる陽菜に、重心が後ろに傾き、手が出せない体勢の麻由香のちょうどその間にボールが落ちてきたのだ。


これだけの熱戦をしておいて、あまりにもあっけない幕切れ…


ボールから離れた場所にいたまどかは、その光景を見つめるしか出来ず、後日、彼女が語ったところによると、スローモーションに見えたという…


試合終了


誰もがそう思った瞬間、バランスを崩しながら、麻由香が足を出し、辛うじてボールを上げたのである。


「蹴った！」


蹴鞠の如く、麻由香が蹴り上げたボールはそれほど高く上がらなかったが、優香が倒れ込みながらボールの下に潜り込み、トスを上げた。


まどかは短い助走から、ボールがネットを越えて上がった瞬間にクイック攻撃をし、紅陽のコートにボールを叩きつけたのだった。


「命拾いした！」


冷静に見ていた高山も、これには興奮せざるを得なかった。