鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

ミリの戦い

麻由香の瞬時の判断であった。

後ろに重心がかかり、手が出ないと見るや、後ろに倒れながら足を出して、ボールが地面につく寸前に足の甲に当てる事ができたのだった。

それを優香がギリギリで拾い上げ、まどかに送ってのクイック攻撃

九死に一生を得る


とは、まさにこの事であった。



「いやあ、助かりましたね…


高山先生」



「さすがに終わったと思いましたよ、私も。」


佐藤の言葉に、高山も興奮しながら頷いた。



「あとは、なんとか勝ち切るだけです！」


だが、続く鐘ヶ岡のサーブは、紅陽に難なく拾われ、恵美梨の強烈なスパイクが決まった。


また、一点リードを許したまどか達は、もう一度デュースに持ち込むべく、アイコンタクトを交わし、気を引き締めた。


だが、ここにきて実力差が出始めた両チームは、サーブにおいて、違いが見られるようになっていた。
紅陽のサーブはその勢い、コース共に鐘ヶ岡と比べものにならないほどの差がつくようになり、またもや、厳しいポイントにボールが落ちてきた。


慌てて拾う陽菜だったが、上げたコースが悪く、優香からまどかへのトスは、そのコースが乱れた。


それでも、男子並みの筋力を活かし、体勢を崩しながらも強引に打ち込むまどかであったが、紅陽の高いブロック二枚に止められてしまった。


打ち終わりに、コートに着地したまどかの足下に、ボールが跳ねるのが皆の目に入ってきた。



大歓声が上がり、紅陽の勝利が確定した。


鐘ヶ岡の選手達は、そんな大歓声が耳に入って来ず、静寂の中にいるような錯覚に陥った。