鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

敗北

常勝紅陽に対し、善戦以上の爪痕を残し、あと一歩まで迫った鐘ヶ岡の面々だったが、フルセットを戦った末、最後は僅かの差で負けてしまったのだった。


最終第五セットで、終わりの見えない死闘を繰り広げた両チームは、試合が終わっても、誰も動けず、ネットの方に向かう者もいなかった。
全員がその場で膝に手をつき、呼吸を乱した。
審判が勝利チームを指し、握手を促しても…



だが、余力を残すまどかが皆を促し、ネットの方に向かうように促すと、ようやく他のメンバーも顔を上げ、重い足取りで中央付近に向かった。


紅陽側も、恵美梨が先頭で真ん中に来て、まどかと手と手を合わせ、互いの健闘を讃え合い、他の選手たちと手を合わせに行った。



一連の儀式が終わると、今度は両チームは観客席にお辞儀をし、ようやく退場となった。


鐘ヶ岡女子バレーボールチームの全国出場を賭けた戦いは、またしても紅陽に一歩及ばず、その夢が断たれたのだった。


ロッカールームに戻ってきたメンバー達に、いつもは厳しい事しか言わない木本が


「みんな、よく頑張った。」

と、労いの言葉をかけ、それ以上は何も話そうとしなかった。


すると、麻由香や陽菜ら三年生が泣き始め、二年の優香達も号泣し始めた。


まどかだけは、性転換により、メンタルが鋼のように強くなっており、涙を見せずに、皆の健闘を讃えたのだった。