鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

巣立ち

「昨日は本当に残念でした。

後一歩というところまで紅陽を追い詰めたんですがねえ。」


佐藤校長は、本当に残念そうに呟いた。



「申し訳ありません…」



「いや、全国行きの切符は取れませんでしたが、木本監督の代以来でいえば、今年が一番の出来だったと言えるでしょう。

それもこれも新田キャプテンのおかげですよ。

よくチームをここまでまとめ上げました。」



「いえ、私は…」


まどかは、俯いたまま、小さな声で言った。


「新田さん」


今度は、佐藤の隣に座っていた高山が話しかけた。


「はい。
何でしょうか。」



「もうバレーはやらないと聞きましたが、それは本当ですか？」


「本当です。」



「それは勿体ない。

私も大会をずっと観戦させてもらいましたが、あなたは天才だ。

間違いなく。

勿論、薬無しでもね。」



「いえ

その薬をもってしても、紅陽に勝つ事が出来ませんでした。

元から私に力がなかったんでしょう。」



「そうですか。

まあ、あなたがそう決めたなら、私から何を言っても仕方ないですね。


さて、元に戻す作業に取り掛かりましょうか。

ちゃんと用意してきましたよ。


校長先生、申し訳ないが退出してもらえますか。」


「わかりました。」


佐藤が立ち上がろうとすると、まどかは高山に向かって


「ちょっと待ってください。」


と、言った。