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覚醒
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練習試合が開始され、紅陽学院の古川恵美梨はベンチでその試合を見守った。
対する鐘ヶ岡学園はまどかを含むベストメンバーで臨み、第一セットから積極的に攻めていく姿勢を見せた。
紅陽学院、澤 瑞稀のサーブから試合が始まる。
ネットすれすれボールは島本麻由香の足下にストンと落ちたが、麻由香がなんとか拾い、ボールを上げた。
横山優香がトスを上げると、オープンからまどかが走り込み、強烈なスパイクを打った。
ボールはブロックを掻い潜り、敵陣コートの真ん中に叩きつけられたのだった。
幸先よく鐘ヶ岡にポイントが入り、まどかは皆にタッチして回った。
(おいおい、いきなり全力出してんじゃねーよ)
木本は頭を抱えた。
一方の紅陽はそれどころの騒ぎではなかった。
「部長」
監督の藤井 敏志は、まどかのスパイクを見て、隣りの三尾澤隆之と目を見合わせた。
「どうされました?」
「向こうの4番、あれは誰だ?」
「新田選手ですよ、新田まどか選手」
「新田って、あの新田か?」
「そうです。」
「あんなに凄かったか?
今のえげつないスパイクは…」
「監督、私、行きます。」
堪らず古川恵美梨が立ち上がって言うと、藤井はそれを手で制した。
「いや、まだ大丈夫だ。
このセットは予定通り、古川抜きで回すから」
「はい。すみません」
「まあ、これは練習試合だからな。
本番とは違うテーマでやっている。」
王者としての余裕、風格、全てが鐘ヶ岡とは違うと、言わんかのように藤井は恵美梨を見て笑った。
しかし、神がかった動きをするまどかを誰も止める事が出来ず、第1セットを12-25であっさりと落とした。
余裕を見せていた藤井だったが、予定を早めて恵美梨を第2セット頭から投入。
一気に巻き返しを図った。
「古川選手が出てきて、どこまでウチが戦えるかだな。」
木本は腕組みしたまま、コートを凝視した。
コート内の空気がサッと変わったような気がする両チームの選手達だったが、試合がどう流れていくか予想もつかなかった。
先ずは挨拶代わりとばかりに、恵美梨のAクイックからのスパイクが決まる。
その球速、打点の高さに言葉を失う鐘ヶ岡の選手達。
しかし、負けじとまどかも同じシチュエーションからのスパイクを叩き込み、すぐさま追いつく。
そこから一進一退の攻防が続くかと思われたが、恵美梨以外のメンバーと、まどか以外のメンバーの地力の差が徐々に出始め、第2セットは25-18で紅陽があっさりと取り返した。
第3セットを前に、木本は選手達に向かって
「とにかくまどかにボールを集めろ。
そして、まどかはどんな無理な体勢からも必ず打て」
という指示を出した。
男子並みの力強さ、跳躍力、スタミナを手に入れたまどかは、監督の指示通り、第3セットも躍動する事になる。
対する鐘ヶ岡学園はまどかを含むベストメンバーで臨み、第一セットから積極的に攻めていく姿勢を見せた。
紅陽学院、澤 瑞稀のサーブから試合が始まる。
ネットすれすれボールは島本麻由香の足下にストンと落ちたが、麻由香がなんとか拾い、ボールを上げた。
横山優香がトスを上げると、オープンからまどかが走り込み、強烈なスパイクを打った。
ボールはブロックを掻い潜り、敵陣コートの真ん中に叩きつけられたのだった。
幸先よく鐘ヶ岡にポイントが入り、まどかは皆にタッチして回った。
(おいおい、いきなり全力出してんじゃねーよ)
木本は頭を抱えた。
一方の紅陽はそれどころの騒ぎではなかった。
「部長」
監督の藤井 敏志は、まどかのスパイクを見て、隣りの三尾澤隆之と目を見合わせた。
「どうされました?」
「向こうの4番、あれは誰だ?」
「新田選手ですよ、新田まどか選手」
「新田って、あの新田か?」
「そうです。」
「あんなに凄かったか?
今のえげつないスパイクは…」
「監督、私、行きます。」
堪らず古川恵美梨が立ち上がって言うと、藤井はそれを手で制した。
「いや、まだ大丈夫だ。
このセットは予定通り、古川抜きで回すから」
「はい。すみません」
「まあ、これは練習試合だからな。
本番とは違うテーマでやっている。」
王者としての余裕、風格、全てが鐘ヶ岡とは違うと、言わんかのように藤井は恵美梨を見て笑った。
しかし、神がかった動きをするまどかを誰も止める事が出来ず、第1セットを12-25であっさりと落とした。
余裕を見せていた藤井だったが、予定を早めて恵美梨を第2セット頭から投入。
一気に巻き返しを図った。
「古川選手が出てきて、どこまでウチが戦えるかだな。」
木本は腕組みしたまま、コートを凝視した。
コート内の空気がサッと変わったような気がする両チームの選手達だったが、試合がどう流れていくか予想もつかなかった。
先ずは挨拶代わりとばかりに、恵美梨のAクイックからのスパイクが決まる。
その球速、打点の高さに言葉を失う鐘ヶ岡の選手達。
しかし、負けじとまどかも同じシチュエーションからのスパイクを叩き込み、すぐさま追いつく。
そこから一進一退の攻防が続くかと思われたが、恵美梨以外のメンバーと、まどか以外のメンバーの地力の差が徐々に出始め、第2セットは25-18で紅陽があっさりと取り返した。
第3セットを前に、木本は選手達に向かって
「とにかくまどかにボールを集めろ。
そして、まどかはどんな無理な体勢からも必ず打て」
という指示を出した。
男子並みの力強さ、跳躍力、スタミナを手に入れたまどかは、監督の指示通り、第3セットも躍動する事になる。
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