鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

思惑

木本沙月はバレーボールにその人生を賭けているといっても過言ではなかった。

高校三年間はバレーボールに没頭し、プロ入り後もケガで引退を余儀なくされる前まではレギュラーメンバーとして活躍。
その頃、丁度監督が辞める事が決まり、後任を探していた母校鐘ヶ岡学園から声がかかり、監督に就任。

しかし、何の結果も残せないまま五年が過ぎようとしていた。

焦りを感じる中で、まどかの薬の事件が起きた為に、木本はその判断を鈍らせた。

教育者としてあるまじき行為だと認識しつつ、高山達の計画に乗ってしまったのだ。

バレーに全てを費やした木本は、異性との付き合いもした経験もなく、一見すると寂しい人生を送ってきた。

しかし、自分の人生への評価を与えるのはまだまだ先でいい。

木本はそう誓い、今日も部員達を厳しく育てるのであった。



八面六臂の活躍をする新田まどかを中心としたチーム作りは、これまでも行ってきた。
だが、身体能力が飛躍的に上がった今、さら機能させる為に、まどかに合わせたチーム編成を模索する毎日を送っていた。

その日もコンビネーションプレイの練習を念入りにさせる木本だったが、まどかのコンディションがイマイチのようで、練習の途中で度々中座した。

しかし、木本にはそれがまどかの怠慢に見えた。

能力が上がったのを良いことに手を抜いているのではないか…
まどかの性格を考えてもそのような事はあり得ないのだが、全ての人間の慢心を戒める為にも、木本は練習後にまどかを呼びつけ、厳しく叱責した。