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悪手
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紅陽の監督、藤井は、監督室で部長の笘篠と話し込んでいた。
「昔の部活は本当に酷かった。
知識がないとはいえ、水を飲まさなかったり
適度な休憩を取らせないなど、間違った事ばかりを強要し、何人もの才能ある生徒達を潰してきた。」
「そうですね。
そういう事さえなければ、世界で名を馳せるすごい選手を輩出したかもしれません。」
「まあ、私も歳は食ってるがね。
そういったものは常にアップデートしてきたつもりだよ。
だが、指導者の中には、若い連中でも、まだ昔の根性論を掲げる奴らが沢山いる。
木本っていう監督もそうらしいな。
まだ三十代にもかかわらず、自分の成功体験を押し付けるばかりで、科学的に鍛えるというアプローチは皆無だ。
あの監督がいる間は、ウチの敵にはならんよ。」
「ええ。
そう思います。」
「しかし、そんな状況の中でも、一人の天才が現れたら、一変する。
たとえ、団体競技であってもだ。」
「新田まどかですか。」
「ああ。
そうだ。
新田まどかは、私のこれまで培ってきたバレーボールの哲学を真っ向から覆してしまう存在だ。
我々は勝てるだろうか…
新田まどかが率いるチームに。」
「勝てますよ。
たしかに、私が見ても新田はとんでもない天才だということがわかります。、
あの低身長で、ありえない打点から打ち下ろすそのスパイクは脅威です。
しかし、ウチには古川がいます。
彼女は、才能に加えて体格にも恵まれています。
いくら新田まどかが天才でも、古川には勝てません。
マッチアップで分が悪いのは、あっちですよ。」
「そうだな。
ここのところイレギュラーな事続きで、私にも少し迷いが生じてしまった。
とにかく、ウチは正攻法でどんな相手でも迎え撃つ。
敵は相手の高校ではない。
己自身
コンディションだけだ。
部長、生徒達はもう帰らせたか?」
「はい。
連携の確認をしたがっていた者もいましたが、強制的に帰らせました。
ゆっくり休養することも練習のうちだと説得して。」
「それでいい。」
藤井は満足そうに腕組みしたまま、一度頷いた。
古川恵美梨は、自宅への道を急いでいた。
監督から指示された通り、早く帰り、早く食事をし、早く入浴を済ませて早く寝る。
これが恵美梨に課せられた宿題であるのだから。
しかし、その行手を阻む者が現れたのだった。
「古川さんですね。」
高校バレー界では有名な恵美梨は、このように声をかけられることも少なくない。
しかし、身なりはちゃんとしているが、何やら怪しげなこの中年男に声をかけられて、立ち止まるような脇の甘い人間ではない。
恵美梨は、足早にその場から去ろうとしたが…
「昔の部活は本当に酷かった。
知識がないとはいえ、水を飲まさなかったり
適度な休憩を取らせないなど、間違った事ばかりを強要し、何人もの才能ある生徒達を潰してきた。」
「そうですね。
そういう事さえなければ、世界で名を馳せるすごい選手を輩出したかもしれません。」
「まあ、私も歳は食ってるがね。
そういったものは常にアップデートしてきたつもりだよ。
だが、指導者の中には、若い連中でも、まだ昔の根性論を掲げる奴らが沢山いる。
木本っていう監督もそうらしいな。
まだ三十代にもかかわらず、自分の成功体験を押し付けるばかりで、科学的に鍛えるというアプローチは皆無だ。
あの監督がいる間は、ウチの敵にはならんよ。」
「ええ。
そう思います。」
「しかし、そんな状況の中でも、一人の天才が現れたら、一変する。
たとえ、団体競技であってもだ。」
「新田まどかですか。」
「ああ。
そうだ。
新田まどかは、私のこれまで培ってきたバレーボールの哲学を真っ向から覆してしまう存在だ。
我々は勝てるだろうか…
新田まどかが率いるチームに。」
「勝てますよ。
たしかに、私が見ても新田はとんでもない天才だということがわかります。、
あの低身長で、ありえない打点から打ち下ろすそのスパイクは脅威です。
しかし、ウチには古川がいます。
彼女は、才能に加えて体格にも恵まれています。
いくら新田まどかが天才でも、古川には勝てません。
マッチアップで分が悪いのは、あっちですよ。」
「そうだな。
ここのところイレギュラーな事続きで、私にも少し迷いが生じてしまった。
とにかく、ウチは正攻法でどんな相手でも迎え撃つ。
敵は相手の高校ではない。
己自身
コンディションだけだ。
部長、生徒達はもう帰らせたか?」
「はい。
連携の確認をしたがっていた者もいましたが、強制的に帰らせました。
ゆっくり休養することも練習のうちだと説得して。」
「それでいい。」
藤井は満足そうに腕組みしたまま、一度頷いた。
古川恵美梨は、自宅への道を急いでいた。
監督から指示された通り、早く帰り、早く食事をし、早く入浴を済ませて早く寝る。
これが恵美梨に課せられた宿題であるのだから。
しかし、その行手を阻む者が現れたのだった。
「古川さんですね。」
高校バレー界では有名な恵美梨は、このように声をかけられることも少なくない。
しかし、身なりはちゃんとしているが、何やら怪しげなこの中年男に声をかけられて、立ち止まるような脇の甘い人間ではない。
恵美梨は、足早にその場から去ろうとしたが…
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