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怨敵
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怪しげな男に声をかけられた恵美梨は、その場を去ろうとしたが、すぐに立ち止まった。
何故なら、その男の後ろにまどかがいたからであった。
「まどか…」
「恵美梨、ごめんね。
急に…」
まどかは、申し訳なさそうにしながら恵美梨に言った。
「そうそう。
二人は中学時代からの知り合いだったね。
失礼
自己紹介をしていなかったね。
私はこういうものです。」
男は一歩前に出て、恵美梨に名刺を手渡した。
「高山…」
その男は、まどかに薬を提供した高山だった。
名刺には、鐘ヶ岡女子大学薬学部の教授の肩書きが付いていた。
話の見えてこない恵美梨は、戸惑いの表情で、二人を見つめていたが、間髪入れずに、高山が話し始めた。
「古川さん
大切な予選の最中に、こんなところまで来て申し訳ありません。
それも敵同士の関係である、鐘ヶ岡側の人間が接触して。」
「あ、いえ…
何なんでしょうか…
ていうか、私に何の用なんですか。」
「いや、実はね
ここにいる新田さんが、あなたに謝罪したいという事でここで待たせてもらっていたんです。」
「謝罪?
どういうことですか。」
「古川さん
おかしいと思いませんでしたか。」
「えっ?」
「予選前の練習試合で、新田さんが飛躍的にその能力を上げてきた事に。」
「…
それは、たしかに。」
「それにはワケがありましてね。
実は、その事について、私も大きく関与しているんですよ。」
「関与?」
「ええ。
新田さんの運動能力が急に跳ね上がったのは、私が提供した薬を服用したからなんです。」
「えっ!」
恵美梨は、まどかの顔を見たが、彼女は俯いたまま、視線を合わせようとしなかった。
「ドーピングをしてたってことですか?」
「いや、厳密に言うと、そういう類いのもんじゃありません。
だが、フェアでないのはたしかです。
新田さんは、良心の呵責に耐えられなくなりましてね。
中学時代からの友人だったあなたにだけは直接謝罪したいと言い出しまして、責任上私も説明義務がありますので、一緒に来た次第なんです。」
「そうなの?
まどか…」
「うん…
恵美梨
本当にごめんなさい。」
まどかは泣きそうになりながら、恵美梨に詫びた。
高山は、そんな二人の様子をしばらく見つめていたが、すぐに
「まあ、友人同士のお二人と、私が一緒にいたんでは、空気も悪いでしょう。
それでは、私はここで失礼させていただきます。
新田さん、ちゃんと心からのお詫びをして下さい。」
と、言い残し、その場を去っていった。
何故なら、その男の後ろにまどかがいたからであった。
「まどか…」
「恵美梨、ごめんね。
急に…」
まどかは、申し訳なさそうにしながら恵美梨に言った。
「そうそう。
二人は中学時代からの知り合いだったね。
失礼
自己紹介をしていなかったね。
私はこういうものです。」
男は一歩前に出て、恵美梨に名刺を手渡した。
「高山…」
その男は、まどかに薬を提供した高山だった。
名刺には、鐘ヶ岡女子大学薬学部の教授の肩書きが付いていた。
話の見えてこない恵美梨は、戸惑いの表情で、二人を見つめていたが、間髪入れずに、高山が話し始めた。
「古川さん
大切な予選の最中に、こんなところまで来て申し訳ありません。
それも敵同士の関係である、鐘ヶ岡側の人間が接触して。」
「あ、いえ…
何なんでしょうか…
ていうか、私に何の用なんですか。」
「いや、実はね
ここにいる新田さんが、あなたに謝罪したいという事でここで待たせてもらっていたんです。」
「謝罪?
どういうことですか。」
「古川さん
おかしいと思いませんでしたか。」
「えっ?」
「予選前の練習試合で、新田さんが飛躍的にその能力を上げてきた事に。」
「…
それは、たしかに。」
「それにはワケがありましてね。
実は、その事について、私も大きく関与しているんですよ。」
「関与?」
「ええ。
新田さんの運動能力が急に跳ね上がったのは、私が提供した薬を服用したからなんです。」
「えっ!」
恵美梨は、まどかの顔を見たが、彼女は俯いたまま、視線を合わせようとしなかった。
「ドーピングをしてたってことですか?」
「いや、厳密に言うと、そういう類いのもんじゃありません。
だが、フェアでないのはたしかです。
新田さんは、良心の呵責に耐えられなくなりましてね。
中学時代からの友人だったあなたにだけは直接謝罪したいと言い出しまして、責任上私も説明義務がありますので、一緒に来た次第なんです。」
「そうなの?
まどか…」
「うん…
恵美梨
本当にごめんなさい。」
まどかは泣きそうになりながら、恵美梨に詫びた。
高山は、そんな二人の様子をしばらく見つめていたが、すぐに
「まあ、友人同士のお二人と、私が一緒にいたんでは、空気も悪いでしょう。
それでは、私はここで失礼させていただきます。
新田さん、ちゃんと心からのお詫びをして下さい。」
と、言い残し、その場を去っていった。
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