鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

肝に銘じる

古川恵美梨は、自身の突然の不調の原因がわからず、戸惑いと焦りの中、第二セットを迎えていた。


こんな時こそ基本に立ち返るのが大事だ。

恵美梨は、ボールが上がる一瞬の間に、スパイクを打つための心得を頭に描き、反芻した。

まずは短めに助走を取り、ボールがネットを超えたらすぐに打ち込む。

手のひらの中心 にボールを捉えるのが理想。

そして、左手を引きながら、右手を大きく振り抜く。
打ち抜く瞬間に手首をスナップさせ、ドライブ回転の掛かった球を打つ！


（よしっ！）

恵美梨は頭でそう描くと、セッターの近森未唯菜が上げたボールを、相手のコートに叩きつけた…


筈だった…



しかし、ボールは角度がつかず、相手のブロックの上を越え、エンドラインの外に落ちた。



「何だ、あれは…」


監督の藤井は、唖然としながらその光景を見つめていた。


恵美梨は、練習でもあんな不正確なスパイクを打った事がない。

それが、この大事な準決勝の場で、何度もミスを演じている。


「近森のトスは完璧だった…

やはり、今日の古川は何かがおかしい。

どこか悪いのか…

いや…」


藤井は第一セットから感じていた違和感の原因を探ろうと、必死に探っていたが、単純にジャンプ力、力強さ、キレ
その全てが微妙に落ちている。

結果、バランスを欠き、修正がきかない状態になっている。


藤井は、恵美梨をベンチに下げる決断をし、佐久間芽依と交代させた。