鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

決戦の前

試合会場から、高山と佐藤が出てきた。


「校長先生

やはり、最後は紅陽が底力を見せましたね。」


高山は隣を歩く佐藤に言った。


「高山先生

古川さんも最後は粘って粘って、スパイクを決めましたね。

例の効果が切れてきたって事なんでしょうか？」


「いえ、そうじゃありません。

古川さんは絶不調でした。
体も全然キレてませんでしたしね。

それでも勝てたのは、あのセッターのおかげですよ。」


「そうですね。

本当に見事でした。」



「古川選手の調子に合わせて、ボールを上げるタイミング、高さを完璧に再調整し、この短い時間のうちに修正してきた。

あれこそ本当の天才ってやつですよ。」



「私はてっきり、古川さんが急に復調したんだと思いましたよ。」


「彼女もまた天才です。
今すぐプロに行っても通用する逸材です。

まあ、これくらいの動きは出来るでしょう。」


「それじゃあ、決勝はもっと良くなると？」


「間違いないでしょうね。

新田さんに壊された体のバランスみたいなものも少しずつ回復していくでしょうから。」


「それは困りましたね。

もう一度、接触してみますか？」


「いやいや、もう無理でしょう。

彼女も自分の不調の原因が新田さんとの事にあると、多分気付いているはずです。」


「ウチは負ける？」


「うーん

私の見立てでは、かなり拮抗していると思います。

古川さんが落ちた分と、新田さんが上げてきたものがどれくらいなのか

見守るしかないでしょうな。」


高山は、笑って言ったが、佐藤は不安を隠しきれない様子で、ため息をついた。