鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

拮抗

第二セットは、紅陽が取り、1-1のタイに戻した。


まどかのスパイクが何本か止められた事と、恵美梨のスパイクが決まり始めた事で、木本の計算が狂いが生じ始めていた。


「優香、トスが荒くなってる。
もっと丁寧に。

まどかも焦らないで。タイミングが少しズレてるよ。」


「はいっ！」

木本は、早口で注意を与えたが、言いたいのはそんな事じゃなかった。



いや、とっくにわかりきっていたのだ。


根本的な原因はそんな些細な事ではなく…


圧倒的な実力差


そう

そもそも、この二校には天と地ほどの差があったのだ。

それを、一言で言えば、卑怯極まりない手を使って、なんとか互角に近い戦いが出来るようにしただけ

だが、そのメッキはもう剥がれまくり、次のセットもその次のセットも、あっさり取られる絵が、木本の頭の中に浮かんでいた。


「監督」


部長の山口が、後ろから呼び止め、小さな紙切れを渡した。


「部長、何なのよ！

こんな時に！」


劣勢の中、イライラが抑えられない木本は、ヒステリックに山口を叱責した。


しかし、手渡されたメモに視線を落とすと…



まどか達が不思議そうに見守る中、木本は、暫しの沈黙の後、顔を上げたかと思うと


「優香！こっちに来て！」

と、一番離れたところにいた優香を手招きして呼んだ。