鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

原動力

「優香早く！


木本に言われ、横山優香は慌てて、前に出た。

すると、木本は何を思ったか、優香の腕を持って手前に引っ張った。


「えっ」


優香は、体のバランスを崩し、そのまま前につんのめった。


驚いたのは優香だけではない。
まどかも思わず固まってしまった。

自分の方にまどかが飛び込んできたからである。

まどかは、優香を受け止めると、隣の木本の方に視線を移した。

だが、木本は表情を変えず

「まどか

そのままハグしなさい」

と、彼女の耳元で言った。


まどかは、言われた通り、優香を軽く抱きしめると、2,3秒後に手を離した。


全員が、何が起こったのか、さっぱりわからないまま、その光景を見守った。

木本は全く表情を変えず、手を叩き

「さあ、次のセットも気合入れていくよ！」

と、ハッパをかけて、円陣を解いた。




「高山先生

今のは…

あなたがやらせたんですか？」


佐藤は、目の前の奇妙な光景を見て、不信感を露わにして言った。


「そうですよ。

私がやらせたんです。」


「この大一番で、わけのわからない事をさせるのはやめてもらえませんか。」


「佐藤校長

これでいいんですよ。

ちゃんと理由があって、やらせた事です。

木本監督も、私の頼みを素直に聞いてくれましたから。

こちらの考えを理解してくれたんでしょう。」


「私にもわかるように説明して下さいよ。」


佐藤が、要領を得ない事ばかり言う高山に、イラついた表情で詰め寄ると

「よろしい。
説明致しましょう。」


高山は、佐藤にその真相を語り始めた。