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05.恋人の真似事
しおりを挟む「ようこそオレの部屋へ」
「……」
私の気持ちとは裏腹なやけに明るい声を出す。なにを考えているんだろうと苛立ちさえ覚えた。軽く睨むと、三ツ橋くんは目を見開いた。
「っ、だからその顔無理」
「無理ってどういう意味。ひどい」
言いながらパンプスを脱いで「お邪魔します」と部屋に入った。もうここまで来てしまったら逃げることはできない。流れに任せてしまおう、なんて開き直っていた。だって好きな人の家に上がることができたのだ。浮かれないわけがない。
三ツ橋くんは、会社の最寄り駅から3駅ほどのところにマンションを借りているみたいだ。近くていいね、と言うと「いつでも来ていいよ」と自慢げに笑った。一瞬動揺したけれど、本気にしない。
それが鉄則だ。
「とりあえず飯食お。せっかく買ってきたしさ」
会社の帰りに二人でスーパーに寄って、お酒やおつまみ、ご飯ものなどを買ってきた。なにか作って、と言われなくてよかった。料理が上手というわけではないし、急に言われても緊張してしまって困る。なにより、そんな恋人同士みたいなことはできない。
「ねえ、なんでこんなことになってるの」
テレビを見ながらお酒を飲んでおつまみをつまんでいるとリラックスしてきて疑問を素直に投げかけることができていた。甘い雰囲気なんてものがないので安心したといってもいい。
「それはオレが誘ったからです」
「そういうことじゃなくて……もう、いい」
はぐらかす気だ。答えを求めることはしないほうがいいのだろう。きっとまた傷ついてしまう。それならば彼のテンションに合わせて軽く、戯れればいいのだ。できるできないは別にして。
なんのために三ツ橋くんの部屋に来たのかよくわからなくなってきた。
ごはんを食べてお酒を飲んで、それだけ。昼間のような雰囲気はまるでない。テレビに流れているのは騒がしいバラエティ番組だし、隣の彼はげらげらと笑っているし。
なんなんだろうとため息をついて、空になった缶を片付けようと立ち上がった。彼は意外ときれい好きなのか、部屋もキッチンもわりと片付いていた。誰か女の人か来ている可能性もありえる。もう考えないことにする。
「ひゃっ」
突然、背後から抱きつかれた。不意打ちに胸が跳ねた。振り返ると、少し酔っ払って頬を赤くした三ツ橋くんが、頭を私の首に擦りつけてくる。犬みたい。
「……ねえ、シよ」
「急、だよ」
身じろぎするけれどまったく離れようとしない。このタイミングを待っていたというわけではないけど、絶対に目的はこれだったはずだ。今さら拒否するなんてばかばかしい。ただ、やっぱり緊張する。だって相手は好きな人だ。たった数年だけど、ずっと好きだった人だから。
遊びでもいいなんて言葉は言いたくないけれど、結果的にそうなるなら私はもう堕ちていくしかない。
「オレもう我慢できない……つーかエレベーターの時からずっとやばいんだって。一回抜けばよかった」
「な、なに言って」
「いいから、さわって、ほら」
「……っ」
引っ張られた手は彼の下腹部へと無理やり持っていかれる。ふれると驚くほど熱い。それに、すでに芯を持っている。私の身体にまで火がついたように熱くなっていく。恥ずかしくてすぐに手を離したけれど、感触が離れなくて胸が高鳴った。後ろから抱きつかれて身体のいろんなところをさわられる。耳裏や首筋を舐められながら、彼の手は縦横無尽に動く。手が胸にふれた時、びくりと反応してしまった。彼の手は服の上から胸にふれ、手のひらで弄ぶ。緩急をつけて揉まれると足の力が抜けてしまいそうだった。少し腰を引くと、お尻に彼の熱かぶつかる。変に押し付けるようになってしまって、背後にいる彼が熱い息を吐き出した。
「もう無理。いれたい。べッド、いこ」
直接的な言葉に頭の中がおかしくなってしまいそうだ。
手を引かれてベッドに寝転ばされて、三ツ橋くんが覆いかぶさってくる。熱いまなざしで見つめられて、キスをした。
本当に、恋人みたいでばかみたい。
彼はキスをしなから、ゆっくりと私の乱れた服を脱がしていく。素肌が彼へさらされるのが変な感じだ。でも、それより。
「寒い……脱がさないで」
「ん……暖房……はやめとこ。どうせ暑くなるから」
ちゅ、と肩にキスを落として、下着も剥ぎ取られる。
「……んん、寒い」
「あっためてあげるからさ」
三ツ橋くんは満足そうににっこりと笑った。そんな顔は見せないでほしい。そんな、甘ったるい目で見ないでほしい。
身体中にキスを落としていって、その場所から熱を持つ。熱い彼の手はやがて私の身体の中心、秘部へと向かう。ふれられた瞬間腰が跳ねた。濡れた音まで響いて、耳を塞ぎたくなった。
「気持ちいい?」
耳の中に言葉を吹き込まれるようにされると、身体がきゅうと切なく疼く。ふれられている場所からいやでも蜜がこぼれていく。中へ指がもぐりこむとさらに私の身体は反応を示す。
「やわらかくて、熱くて……気持ちいい」
指をゆるゆると動かしてくる。内側の壁をこするように動かれると、嬌声が上がり、ぴくぴくと小刻みに身体が震えた。
「ゃ、だ……んっ」
顔を見られながら中をかき混ぜられるなんて恥ずかしくておかしくなりそうだ。手の甲で顔を隠すと「顔見せてよ」と手のひらにキスが落とされる。そのまま熱い舌が下がり鎖骨を舐め、胸の先端を吸う。声は上がり身体は震え、もうどうにかなってしまいそうだった。蜜口から聞こえるくちゅくちゅとした音は耳を犯し、胸の先端を飴のように舐められる刺激に声を上げる。
視界は天井と、彼だけ。
「……やべ、限界……挿れるよ」
足を広げられて、ぐりぐりと入り口にこすりつけてくる熱が我慢できないと言った風に返事を待たずに侵入してくる。
「……あ」
とうとう、受け入れてしまう。
気持ちを伝える前に。告白をする前に。
「……く、きつ……」
腰を押し込み、熱がねじ込まれる。
「んんっ!」
圧迫感に、喉をそらした。
誰かを受け入れるのは初めてではない。でも思えば久しぶりだった。彼のことを奸きになってからは恋人もできなかったし、一度もしていない。彼とこうなることをまったく想像できなかったゆえに想像以上のうれしさがあった。
身体だけでもー-いい。
三ツ橋くんはすぐに腰を引いて、もう一度押し込んだ。
「ハ、気持ち、い……っ」
腰をがっしりと掴み、すぐに抽送を繰り返し始める彼の動きに、私の身体は翻弄されていた。熱く硬くなった彼の欲望が、私の中を行き来して、壁をこする。ぐん、と奥の方まで突かれるともうなにも考えられなくなってしまう。
三ツ橋くんが私に欲情をまる出しにしていることが素直にうれしかった。見たことのない姿をたくさん見ることができた。
きっかけは、なんだったっけ……。
「あっ、あ、ん」
中をこすられるとすごく気持ちいい。
でも、つながっているのに、心はまるで重なっていない。
やっぱりただ身体を求めているだけ。
都合のいい女が欲しかっただけ。
胸が痛い。心が痛い。やっぱり、どう考えても痛い。
身体だけでもいいなんて、大嘘だ。
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