6 / 11
1話
6
しおりを挟む
「こうして、二人仲良く暮らしましたとさ…って感じ?」
ラピス魔法学校の寮の談話室でサリナは手紙手にしたままそうつぶやく。
ロナルドが母カナリアと対面した日からしばらく帰らずにいた彼女だが、帰ってみると16年間離れていたのが嘘であるかのような2人の仲睦まじい姿があった。
そんな光景に一安心した彼女は、その空間に入り込んだのだった。
「おい、スタインベック。お前の父親の事が新聞に載ってるぞ」
「アルト」
談話室に新聞を持ってやってきたアルト。
一面には“あのクロイツ公爵がついに結婚!?お相手はあのスタインベック大臣!?”とデカデカと書かれていた。
「大騒ぎしすぎじゃない?結婚するだけなのに」
「問題は“あの”クロイツ公爵がするという点だ。クロイツ公爵が好いた女と結婚すると公言してるのは民衆も知っている。その相手があのスタインベックさんともなれば…」
サリナはアルトから新聞を受け取り、読んでみる。
そこには交際に至った経緯や、今後の予想などが書かれていた。
「根掘り葉掘り聞かれるものなんだね~。というか、お母さんまだ“大臣”扱いだったことに驚いてるんだけど」
「辞表はあったが、受理されたわけではなかったらしい。あくまで表向きは“無期限の療養”になってる」
「確かに療養だけど……」
「スタインベックさんがまた表舞台に顔を出されるのもそう遠くない筈だ!」
「そういえば、アルトはお母さんに憧れてるんだっけ?」
そう、何を隠そうアルトはカナリア・スタインベックを敬愛していた。
王宮で暮らす中、魔法省の平民出身のカナリア異質さは常に話のネタになった。
実力、品行方正、人間性、おまけに蛇語を理解する知性などは何時聞いてもアルトの心をくすぐった。
故に、彼女と似た経歴を持とうとしたサリナに敵意を向け、決闘を申し込むに至ったのだ。
「お母さんはしばらくお父さんと過ごすって。体調もすこぶる快調に向かってるし」
「スタインベックさん、本当に何かご病気なのか?」
サリナは新聞に目線を落としてあえて無視した。
16年ぶりの再会を果たしたカナリアとロナルドは、時間さえあれば禁断の森の自宅で2人の時間を過ごしていた。
ロナルドは自身の屋敷にカナリアを連れて行きたいようだったが、カナリアは呪いの件もあり拒絶したからだ。
そんなこともあり数日間過ごしている内に、カナリアの身体に変化があった。
蛇の鱗が徐々にではあるが消えつつあったのだ。
これには祖父も驚いており、何がきっかけか研究し始めるほどだった。
しかし、サリナには何となく分かった気がしていた。
解呪の決め手は“愛”なのではないか?というものだ。
あまりに不確かではあるが、ロマンティックではあるが、そのほうが素敵であるとサリナは思っていた。
「ところでアルト。“マダム・ローズ”って知ってる?」
「王族御用達の衣装屋だが?」
「お父さん、その人にお母さんのドレス頼むんだって」
「は!?予約数年待ち確定の人気デザイナーだぞ!?」
「なんでも、無名の新人時代にお世話したことがあるらしく、その伝手で頼むんだって」
「お、おぉ。クロイツ公爵、相当な結婚式を挙げるきなんだな」
「だね~」
サリナはふと窓の外から空を見る。
ここ数日の中で一番澄んだ青空をした、清々しいものだった。
「私も恋とかしてみたいな~」
「ぶっ!?」
「どうしたアルト?」
「い、いや、何も無い。そもそも、お前は公爵家の令嬢な訳だし、嫌でも婚約の話は来るだろう」
「私がしたいのは恋愛結婚!そもそも公爵家の血筋でも平民だよ?婚約の話なんて来るわけ無い無い」
「クロイツ家と繋がりを持ちたい貴族なんて沢山あるぞ」
「マジ…?」
サリナは少し苦笑いした。
ラピス魔法学校の寮の談話室でサリナは手紙手にしたままそうつぶやく。
ロナルドが母カナリアと対面した日からしばらく帰らずにいた彼女だが、帰ってみると16年間離れていたのが嘘であるかのような2人の仲睦まじい姿があった。
そんな光景に一安心した彼女は、その空間に入り込んだのだった。
「おい、スタインベック。お前の父親の事が新聞に載ってるぞ」
「アルト」
談話室に新聞を持ってやってきたアルト。
一面には“あのクロイツ公爵がついに結婚!?お相手はあのスタインベック大臣!?”とデカデカと書かれていた。
「大騒ぎしすぎじゃない?結婚するだけなのに」
「問題は“あの”クロイツ公爵がするという点だ。クロイツ公爵が好いた女と結婚すると公言してるのは民衆も知っている。その相手があのスタインベックさんともなれば…」
サリナはアルトから新聞を受け取り、読んでみる。
そこには交際に至った経緯や、今後の予想などが書かれていた。
「根掘り葉掘り聞かれるものなんだね~。というか、お母さんまだ“大臣”扱いだったことに驚いてるんだけど」
「辞表はあったが、受理されたわけではなかったらしい。あくまで表向きは“無期限の療養”になってる」
「確かに療養だけど……」
「スタインベックさんがまた表舞台に顔を出されるのもそう遠くない筈だ!」
「そういえば、アルトはお母さんに憧れてるんだっけ?」
そう、何を隠そうアルトはカナリア・スタインベックを敬愛していた。
王宮で暮らす中、魔法省の平民出身のカナリア異質さは常に話のネタになった。
実力、品行方正、人間性、おまけに蛇語を理解する知性などは何時聞いてもアルトの心をくすぐった。
故に、彼女と似た経歴を持とうとしたサリナに敵意を向け、決闘を申し込むに至ったのだ。
「お母さんはしばらくお父さんと過ごすって。体調もすこぶる快調に向かってるし」
「スタインベックさん、本当に何かご病気なのか?」
サリナは新聞に目線を落としてあえて無視した。
16年ぶりの再会を果たしたカナリアとロナルドは、時間さえあれば禁断の森の自宅で2人の時間を過ごしていた。
ロナルドは自身の屋敷にカナリアを連れて行きたいようだったが、カナリアは呪いの件もあり拒絶したからだ。
そんなこともあり数日間過ごしている内に、カナリアの身体に変化があった。
蛇の鱗が徐々にではあるが消えつつあったのだ。
これには祖父も驚いており、何がきっかけか研究し始めるほどだった。
しかし、サリナには何となく分かった気がしていた。
解呪の決め手は“愛”なのではないか?というものだ。
あまりに不確かではあるが、ロマンティックではあるが、そのほうが素敵であるとサリナは思っていた。
「ところでアルト。“マダム・ローズ”って知ってる?」
「王族御用達の衣装屋だが?」
「お父さん、その人にお母さんのドレス頼むんだって」
「は!?予約数年待ち確定の人気デザイナーだぞ!?」
「なんでも、無名の新人時代にお世話したことがあるらしく、その伝手で頼むんだって」
「お、おぉ。クロイツ公爵、相当な結婚式を挙げるきなんだな」
「だね~」
サリナはふと窓の外から空を見る。
ここ数日の中で一番澄んだ青空をした、清々しいものだった。
「私も恋とかしてみたいな~」
「ぶっ!?」
「どうしたアルト?」
「い、いや、何も無い。そもそも、お前は公爵家の令嬢な訳だし、嫌でも婚約の話は来るだろう」
「私がしたいのは恋愛結婚!そもそも公爵家の血筋でも平民だよ?婚約の話なんて来るわけ無い無い」
「クロイツ家と繋がりを持ちたい貴族なんて沢山あるぞ」
「マジ…?」
サリナは少し苦笑いした。
92
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢ルチアが幸せになる二つの方法
ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢のルチアは、ある日知ってしまう。
婚約者のブライアンには、妻子がいた。彼は、ルチアの侍女に恋をしていたのだ。
ルチアは長年、婚約者に毒を飲ませられていた。近年の魔力低下は、そのせいだったのだ。
(私は、彼の幸せを邪魔する障害物に過ぎなかったのね)
魔力不足に陥った彼女の余命は、あと一年だという。
それを知った彼女は自身の幸せを探すことにした。
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
私の婚約者とキスする妹を見た時、婚約破棄されるのだと分かっていました
あねもね
恋愛
妹は私と違って美貌の持ち主で、親の愛情をふんだんに受けて育った結果、傲慢になりました。
自分には手に入らないものは何もないくせに、私のものを欲しがり、果てには私の婚約者まで奪いました。
その時分かりました。婚約破棄されるのだと……。
魔女見習いの義妹が、私の婚約者に魅了の魔法をかけてしまいました。
星空 金平糖
恋愛
「……お姉様、ごめんなさい。間違えて……ジル様に魅了の魔法をかけてしまいました」
涙を流す魔女見習いの義妹─ミラ。
だけど私は知っている。ミラは私の婚約者のことが好きだから、わざと魅了の魔法をかけたのだと。
それからというものジルはミラに夢中になり、私には見向きもしない。
「愛しているよ、ミラ。君だけだ。君だけを永遠に愛すると誓うよ」
「ジル様、本当に?魅了の魔法を掛けられたからそんなことを言っているのではない?」
「違うよ、ミラ。例え魅了の魔法が解けたとしても君を愛することを誓うよ」
毎日、毎日飽きもせずに愛を囁き、むつみ合う2人。それでも私は耐えていた。魅了の魔法は2年すればいずれ解ける。その日まで、絶対に愛する人を諦めたくない。
必死に耐え続けて、2年。
魅了の魔法がついに解けた。やっと苦痛から解放される。そう安堵したのも束の間、涙を流すミラを抱きしめたジルに「すまない。本当にミラのことが好きになってしまったんだ」と告げられる。
「ごめんなさい、お姉様。本当にごめんなさい」
涙を流すミラ。しかしその瞳には隠しきれない愉悦が滲んでいた──……。
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる