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第八話
しおりを挟むーーーピンポーンーーー
とある日の夕方。
学校から帰ってきて各々が部屋だったりリビングだったりで寛いでる中、インターホンが家の中に鳴り響いた。
兄さんがリビングにいるし、出てくれるだろうと読みかけで手が止まってた漫画に再び目を通す。
「~!…~?」
「…!~~~!」
下から何やら賑やかな声が聞こえてきてフと開いてもいない自室の扉を見つめる。
声からして男のものだから近所のおばちゃんがお裾分けに来てくれたわけでもない。
声が若めだから近所の爺さんが家を間違えてインターホンを鳴らしたわけでもない。
…兄さんの友達か?
好奇心に負け、読みかけだったページにテーブルに置いてあった定規を適当に挟み込み扉を開けて聞き耳を立てる。
「本当に久しぶりだね、何でここに?」
「大学がこっちの方になってなー、引っ越してきたんだ。おばちゃんに連絡してみたら家の場所教えてくれたわけ」
「もう、前もって教えてくれてたらちゃんと歓迎したのに…」
親しげに話を弾ませる2人の声を聞いて階段上からチラッと顔を覗かせる。
…相手は相当なイケメンだ…チャラチャラしてるタイプではないけど、スポーツマンタイプでもない。
どちらかというと爽やかに読書をしてるイメージが近い?
でも王子様系と言われたら違う気もする…。
階段上からじーーーーっと相手を見つめて1人考察を楽しんでいるとそれに気付いたお相手さんに気付かれてしまった。
「あの子が弟くん?」
「ん?うん、そう。唯兎、こっちにおいで」
眩しい微笑みを浮かべて手をひらひらと上下に動かしながら呼ばれたらそりゃほいほい行っちゃうよね。
って事でパタパタと兄さんに走り寄ってからまたジッと相手の顔を見つめる。
どこかでみた気がする顔だ。
「唯兎、この人は僕達が昔住んでいた家の隣に住んでたお兄さん。今大学生なんだって」
「初めまして、高城 郁真です。よろしくね」
「いくちゃん、この子は唯兎。僕の可愛い可愛い弟だよ」
「知ってるってば、手紙で沢山話聞かせてくれたでしょ」
俺が挨拶をする間もなくポンポンと話が進む。
挨拶しないわけにもいかないのでとりあえず頭をペコッと下げて兄さんの服を掴む。
すると兄さんは会話を中断して俺を見るとふっと優しく微笑んで俺の頭を優しく撫でる。
「ごめんね唯兎、唯兎にはわからない話ばっかりだったね」
「唯兎くんは中学1年生だよね?勉強でわからないところとかあったら俺に聞いて」
身長が180cmくらいありそうな郁真さんは俺の目線に合うように中腰になると兄さんと同じように優しく俺の頭をポンポンと撫でる。
そんな郁真さんにペコッとお辞儀して返すと兄さんが郁真さんの手をペシッと叩き落とした。
「僕の許可なしに唯兎に触らないでね?」
にっこりと笑った兄さんの周りはなんとなく寒く、ブルっと身体が震える。
そもそも俺に触るのに兄さんの許可が必要っていろいろおかしくないか?
兄さんいつからそんなにブラコンになったんだ?前からなのか?最近なのか?
「照史、ブラコンは兄弟に嫌われる元だぞー?」
「唯兎が僕を嫌うなんてこと有り得ないよ、大丈夫」
SOS。
兄さんがブラックスマイルである。
そんな兄さんを見て面白そうに笑った郁真さんはかなりの大物だと思う。
「おーけー、唯兎を撫でる時は照史の許可を得よう」
「よろしい。なんてね、でもブラコンだから許してね」
なんて冗談を交えつつ2人でクスクス笑い合ってる姿は本来あるべき姿な気がしてじっと見つめてしまう。
高城…郁真……。
聞いた事あるはずなんだけど、どこだったかな…。
「じゃあ唯兎くん、また遊びにくるね」
その声にハッと前を見ると既に玄関を開けて外に出ようとしてる郁真さんの姿があった。
ヒラヒラッと手を振る郁真さんにヒラヒラッと手を振り返すとその扉は静かに音を立てて閉った。
「兄さん、郁真さんと仲良いんだね」
「まぁ、僕が幼稚園の時から知ってるからね」
リビングに移動しながら雑談混じりに聞けばかなり前からの付き合いである事がわかった。
離れてる間も手紙のやり取りをしていたらしく、俺のことも全て郁真さんに筒抜けとの事だ。
やだ、恥ずかしい。
次の日。
とても良い天気。
冬に入り、口からは白い息が出るくらい寒いが太陽が頑張ってくれている分凍えるような寒さはない。
昼頃には暖かくなり、マフラーは付けなくても大丈夫そうだと天気予報のお姉さんが言ってた。
先日父さんと母さんが買ってきてくれたお土産の中に入ってたモフモフの青いマフラーを首に巻き、先に外に出ている兄さんの後を追う。
兄さんは相変わらず俺を1人で登下校させてくれない。
小学生の時の事もあり、心配で仕方ないらしく1度反抗心で1人で帰ろうとした時かなり怒られた。
下駄箱で捕まった挙句帰り道ずっと手を繋ぎながら
「なんで先に帰ろうとしたの?ねぇ、僕迎えに行くって言ったよね?危ないから一緒に帰るって前から言ってるの覚えてるかな、覚えてるよね?なんで先に帰ろうとしたの?おしえて、黙ってちゃわからないよ唯兎。黙ってても僕は聞き続けるよ、なんで先に帰ろうとしたの?」
と、下校中ずっと尋問されてからは大人しく兄さんの言う通り兄さんと登下校している。
さすがにあの時は泣きながら謝った。
玄関の鍵をしっかり閉めた事を確認して鍵を財布の中にしまう。
鍵を財布にしまうのは完全に前世からの癖だ、何も言うな。
財布を落としたら全部終わるとかそんなこと言うな、やってる本人が一番わかってる。
「兄さん、俺が財布落としたら助けてね」
「いきなりどうしたの」
くすくすとおかしそうに笑う兄さんに確かにいきなりであった…と反省してると、後ろから挨拶の声が聞こえる。
近所の人だろうか、と振り向いてみるとそこには昨日会ったばかりの郁真さんが手を振って歩いてくる。
「郁ちゃん!家この近くなの?」
「そうそう、安いアパートなんだけどな」
兄さんの頭をポンポンと撫でる手をそのまま俺にも向けようとしたところを兄さんに叩き落とされる。
「許可してないよ」
「照史、過保護だなぁ」
苦笑して叩かれた手をひらひらしてる郁真さん。
挨拶のタイミングを完全に失ったので軽くペコっと頭を下げてみると郁真さんに眩しい微笑みを返された。
「大学行くのに中学の方向行くから途中まで一緒に行かない?」
「僕はいいけど、唯兎はどう?」
兄さんが仲良くしてる人だし、とコクっと頷く。
それを見た2人が行こうか、と歩き出したのを見て俺も2人の後をついて行く形で歩き出した。
前で2人が楽しそうに話してるのを見ながら俺はこの高城 郁真さんの事を考える。
前世、妹から聞いた話の中にこの人の名前はなかったか。
妹はなんと言っていた。
流石に妹から聞いた名前を全て覚えてるわけでもないし、転生してから10年以上経過している。
忘れてしまってることもある為、聞き覚えがあったとしてもすぐにパッと思い出せるわけがない。
妹は…なんて言ったっけ…
[◯◯はツンデレで!ツンツンしてるんだけど料理が得意な照史にお弁当…]
[お勉強会のスチルが凄く良くてね!◯◯はおばかさんなんだけど…]
[照史には実は幼い頃にお世話になったお兄さんがいてね…!]
…ん?
[そのお兄さんが引っ越してくるんだけど、そしたら…]
「あ」
「唯兎?」
「唯兎くん、どうかした?」
「あ、なんでもない!」
ついつい声が出てしまい、前を歩いてた2人が俺を見る。
慌てて首を振り2人を再び歩き出させると俺はまた妹の記憶を探る。
[そのお兄さんはね、照史が大好きなの]
[照史が大好き過ぎてね]
[唯兎を使って照史を傷付けるんだよねぇ]
[傷付いた照史を支えて照史が自分に依存するように仕向けるの…!]
[お兄さんのエンディングはバッドが多くて大変だったよ~]
[お兄さんの名前はね~]
[高城郁真っていうの]
[登場キャラの中でもバッドに進みやすいキャラなんだよ~、しんどかった~」
「…マジかよ…」
俺はつい頭を抱えてしまった。
無意識に歩いていた足を止めてしまったようで、少し進んだところで俺に気付いた兄さんが慌てて俺に駆け寄ってくる。
「唯兎!どうしたの、もしかして具合悪い…?」
「顔色も悪いね、今日は休んだ方がいいんじゃない?」
俯いて頭を抱える俺に心底心配そうに覗き込んでくる兄さんと後をついてきた郁真さん。
別に具合が悪いわけじゃない。
ただ、思い出してしまった真実に頭が追いついていない。
確か妹が郁真さんのバッドについて何か言ってた気がする…。
なのにそこが思い出せない。
どんなバッドがあったのか、思い出せない。
どうしよう、俺…兄さんに嫌がらせを…?
いや、でも俺は唯兎自身と違って兄さんを恨んでいない。
でも最近は感じることも少なくなった嫉妬がこれから強く感じるようになったら…?
前とは違って我慢できないくらい嫉妬してしまったら…?
もし唯兎の感情が俺にのし掛かってきたら…?
考え始めると止まらなくなってしまい、カタカタ震えながら涙目になった俺を照史は支えながら家に戻るためゆっくり歩き出した。
「唯兎、大丈夫…家帰ろ、ね」
背中をさすってくれながら優しく声をかけてくれる兄さんに鼻がツンとし、ついにポロッと涙が溢れてしまう。
そんな俺を心配そうに見つめる兄さんが端に見えるが、答える余裕が俺にはない。
ゆっくり歩いている俺達に後ろから郁真さんが声をかけてくる。
「照史、唯兎くんは俺が送るから照史は学校行ってきなよ」
ヒュッと喉が鳴る。
[唯兎を使って照史を傷付けるんだよねぇ]
妹の声が脳内に響く。
「え、でも郁ちゃんも大学…」
「大学生ってそんなにキツキツじゃないんだよ、今まで真面目にやってきたから1日くらい問題ない。照史は受験生なんだから学校行きな」
コツコツと靴を鳴らして近寄ってくる郁真さんに俺は息がしにくく感じて胸に手を当てる。
そんな俺を支える兄さんの肩を郁真さんがポンと叩くと俺に手を伸ばして来た。
「やだ!!!!」
バシッと手を振り払い、兄さんに縋り付く。
不安が更に不安を呼び、自分の頭に妹の声が響き続けて軽くパニックになっていた。
そんな俺に驚いた様子の兄さんは慌てて縋り付いた俺をギュッと抱きしめた。
「ゆ、唯兎!どうしたの、落ち着いて」
「やだ、兄さん…!ね、俺兄さんがいい…ね、ねぇ…」
パニックになっている俺を見て混乱しながらも全てから守るようにギュッと抱きしめて声をかけてくれる兄さんに俺は甘えてしまっている。
兄さんは縋り付いて離さない俺の頭をゆっくり優しく撫でて郁真さんに向き直る。
「郁ちゃん、ごめんね。今日は帰るよ」
「…………わかった、唯兎くんお大事にね」
なんとなく声のトーンが低くなった事を感じ、早くここから去りたい気持ちに駆られ兄さんの腕に引っ付きながら無理矢理家に向かって歩き始める。
それに抵抗せずゆっくりついてくる兄さんにホッとしながらいまだに流れる涙を服で拭っていると兄さんに止められてハンドタオルを押し当てられる。
兄さんに優しく拭ってもらってから再び歩き始めると後ろから
「唯兎くん、今度俺とお話しようね」
俺はその声に振り向けない。
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