25 / 105
25.再会
しおりを挟む
その夜、いつも通り軽い勉強を終え―――ちっとも頭に入らなかったが―――寝支度を整えた後、壁にかかった鏡の前でずっと待機していた。
「本当にオフィーリア様は現れるでしょうか?」
事情を知るマリーにも真実をこの目で見てもらいたいと思い、部屋に残ってもらっていた。
「オフィーリア様も再現されるなら同じ時間帯じゃないかって考えると思うんです。きっとその時間に鏡を覗き込むと思います。今のところ、それ以外私たちの世界が繋がるきっかけが分からないですし」
「もうすぐ10時ですね・・・」
「はい、ドキドキします」
「私もドキドキします・・・。お元気でしょうか? お嬢様・・・」
「・・・昨日見た限りだとかなりお元気でしたよ・・・。しゃんとなさいって怒られましたし・・・」
「ふふ、お嬢様らしい・・・」
マリーがちょっと微笑んだ。その可愛い笑顔に椿の緊張も少し解れた。
「マリーさん、山田の本当の姿を見ても驚かないで下さいね。オフィーリア様からとは程遠い姿なので・・・。自分で言うのも何ですが、小デブでブスです・・・」
「そういう事をご自分でおっしゃることがオフィーリア様の怒りに触れるのですよ! 自分を卑下する事を一番お嫌いになるので」
「はひっ!」
急に厳しく注意され椿の背筋がピンと伸びた。
その時、鏡の表面がぐにゃりと歪んだ。
「山田さん! 見てください、鏡が・・・!」
それに気が付いたマリーが目を丸めて鏡を指差した。椿も急いで鏡を見る。
そこには・・・。
「こんばんは。椿様。さっきから待っていましたのよ。いつになったら現れるのかしらって」
待ちくたびれたとばかりに若干不機嫌な顔の椿―――オフィーリアがいた。
☆彡
「す、すいません。オフィーリア様。でも、山田もずっと鏡の前で待機してましたよ」
オフィーリアの剣幕に圧され思わず謝るも、誤解されないように弁明した。
「そうですの? それは失礼いたしましたわ。ごめんなさい」
一瞬目を丸めたオフィーリアだが、素直に謝ってきた。
「いえいえ、そんな・・・」
まさか素直に謝るとは思っていなかった椿は、面食らって顔の前で手を振った。
「あの・・・」
そんな椿に隣からマリーが声を掛けてきた。
「山田さん・・・。この鏡にお嬢様が映っているのですか? その・・・今、山田さんに扮したお嬢様とお話しなさっているのですか・・・?」
マリーは不思議そうに山田を見ている。
「え? マリーさんには見えないんですか? 山田の姿のオフィーリア様と山田の部屋が映っていますが・・・」
山田は鏡を指差した。
「いいえ・・・。普通の鏡です・・・。でもさっきは確かにこの鏡が歪んだように見えたのですが・・・」
「そんな・・・、声も聞こえませんか? オフィーリア様の声」
「はい・・・。何も・・・」
嘘・・・と呟きかけたところに、
「椿様! もしかしてマリーが隣にいるのですか? こちらからは見えませんが!」
鏡の向こうのオフィーリアに声を掛けられた。
慌てて鏡に振り向く。
「は、はい! マリーさんにもオフィーリア様に会ってほしくて。でも、マリーさんにはオフィーリア様が見えないそうです。普通の鏡だって。そちらからも見えないのですか?」
「ええ! 見えません! 声は? マリー! マリー! わたくしの声は聞こえて?」
「マリーさん、今、オフィーリア様がマリーさんに話しかけていますが聞こえますか?!」
「いいえ・・・何も聞こえません。本当にいらっしゃるのですか・・・?」
マリーは怪訝そうな顔で椿を見た。
「本当ですよ、マリーさん! オフィーリア様、残念ですがマリーさんには声も届いていないようです・・・」
「そうですか・・・。マリー・・・、会いたかったわ・・・」
寂しそうに俯くオフィーリアを見て、椿は切なくなった。
同時に自分だって鏡越しに両親に会うことは叶わないという事実も分かり、椿自身も落胆した。
「マリーさん・・・、オフィーリア様がマリーさんに会いたかったってとても残念がっています」
「お、お嬢様が・・・私に・・・?」
マリーは意外そうに目を丸めた。
「ちょ、ちょっと! 椿様! 余計な事おっしゃらないで! べ、別に、そんなことありませんわよ! 寂しいなんて!」
椿の言葉に焦ったのか鏡の向こうのオフィーリアは慌てふためいて椿を制した。
「え・・・? 言っちゃダメなやつでしたか? す、すいません!」
「どうしたんですか? 山田さん」
「あ・・・、オフィーリア様が余計な事言うなと慌てていて・・・」
「ですから、椿様! それが余計な事・・・! あー、もう、マリー! あなたはもうお下がりなさい!」
「えっと・・・、マリーさん、オフィーリア様がもう下がっていいって言ってるんすけど・・・どうしますか?」
「・・・下がるフリをしておきます」
「分かりました。オフィーリア様、マリーさんはたった今退出しました」
椿は鏡に向かってOKとばかりに、親指と人差し指で丸を作って見せた。
「ふぅ~~」
それに安堵したようにオフィーリアは小さく息を吐いた。不機嫌そうな顔をしているが頬がほんのりと赤い。その火照りを鎮めるように手でパタパタを扇いでいる。
(オフィーリア様ってかなりのツンデレ・・・?)
椿はオフィーリアの態度に口元が緩むのを抑えられなかった。
「本当にオフィーリア様は現れるでしょうか?」
事情を知るマリーにも真実をこの目で見てもらいたいと思い、部屋に残ってもらっていた。
「オフィーリア様も再現されるなら同じ時間帯じゃないかって考えると思うんです。きっとその時間に鏡を覗き込むと思います。今のところ、それ以外私たちの世界が繋がるきっかけが分からないですし」
「もうすぐ10時ですね・・・」
「はい、ドキドキします」
「私もドキドキします・・・。お元気でしょうか? お嬢様・・・」
「・・・昨日見た限りだとかなりお元気でしたよ・・・。しゃんとなさいって怒られましたし・・・」
「ふふ、お嬢様らしい・・・」
マリーがちょっと微笑んだ。その可愛い笑顔に椿の緊張も少し解れた。
「マリーさん、山田の本当の姿を見ても驚かないで下さいね。オフィーリア様からとは程遠い姿なので・・・。自分で言うのも何ですが、小デブでブスです・・・」
「そういう事をご自分でおっしゃることがオフィーリア様の怒りに触れるのですよ! 自分を卑下する事を一番お嫌いになるので」
「はひっ!」
急に厳しく注意され椿の背筋がピンと伸びた。
その時、鏡の表面がぐにゃりと歪んだ。
「山田さん! 見てください、鏡が・・・!」
それに気が付いたマリーが目を丸めて鏡を指差した。椿も急いで鏡を見る。
そこには・・・。
「こんばんは。椿様。さっきから待っていましたのよ。いつになったら現れるのかしらって」
待ちくたびれたとばかりに若干不機嫌な顔の椿―――オフィーリアがいた。
☆彡
「す、すいません。オフィーリア様。でも、山田もずっと鏡の前で待機してましたよ」
オフィーリアの剣幕に圧され思わず謝るも、誤解されないように弁明した。
「そうですの? それは失礼いたしましたわ。ごめんなさい」
一瞬目を丸めたオフィーリアだが、素直に謝ってきた。
「いえいえ、そんな・・・」
まさか素直に謝るとは思っていなかった椿は、面食らって顔の前で手を振った。
「あの・・・」
そんな椿に隣からマリーが声を掛けてきた。
「山田さん・・・。この鏡にお嬢様が映っているのですか? その・・・今、山田さんに扮したお嬢様とお話しなさっているのですか・・・?」
マリーは不思議そうに山田を見ている。
「え? マリーさんには見えないんですか? 山田の姿のオフィーリア様と山田の部屋が映っていますが・・・」
山田は鏡を指差した。
「いいえ・・・。普通の鏡です・・・。でもさっきは確かにこの鏡が歪んだように見えたのですが・・・」
「そんな・・・、声も聞こえませんか? オフィーリア様の声」
「はい・・・。何も・・・」
嘘・・・と呟きかけたところに、
「椿様! もしかしてマリーが隣にいるのですか? こちらからは見えませんが!」
鏡の向こうのオフィーリアに声を掛けられた。
慌てて鏡に振り向く。
「は、はい! マリーさんにもオフィーリア様に会ってほしくて。でも、マリーさんにはオフィーリア様が見えないそうです。普通の鏡だって。そちらからも見えないのですか?」
「ええ! 見えません! 声は? マリー! マリー! わたくしの声は聞こえて?」
「マリーさん、今、オフィーリア様がマリーさんに話しかけていますが聞こえますか?!」
「いいえ・・・何も聞こえません。本当にいらっしゃるのですか・・・?」
マリーは怪訝そうな顔で椿を見た。
「本当ですよ、マリーさん! オフィーリア様、残念ですがマリーさんには声も届いていないようです・・・」
「そうですか・・・。マリー・・・、会いたかったわ・・・」
寂しそうに俯くオフィーリアを見て、椿は切なくなった。
同時に自分だって鏡越しに両親に会うことは叶わないという事実も分かり、椿自身も落胆した。
「マリーさん・・・、オフィーリア様がマリーさんに会いたかったってとても残念がっています」
「お、お嬢様が・・・私に・・・?」
マリーは意外そうに目を丸めた。
「ちょ、ちょっと! 椿様! 余計な事おっしゃらないで! べ、別に、そんなことありませんわよ! 寂しいなんて!」
椿の言葉に焦ったのか鏡の向こうのオフィーリアは慌てふためいて椿を制した。
「え・・・? 言っちゃダメなやつでしたか? す、すいません!」
「どうしたんですか? 山田さん」
「あ・・・、オフィーリア様が余計な事言うなと慌てていて・・・」
「ですから、椿様! それが余計な事・・・! あー、もう、マリー! あなたはもうお下がりなさい!」
「えっと・・・、マリーさん、オフィーリア様がもう下がっていいって言ってるんすけど・・・どうしますか?」
「・・・下がるフリをしておきます」
「分かりました。オフィーリア様、マリーさんはたった今退出しました」
椿は鏡に向かってOKとばかりに、親指と人差し指で丸を作って見せた。
「ふぅ~~」
それに安堵したようにオフィーリアは小さく息を吐いた。不機嫌そうな顔をしているが頬がほんのりと赤い。その火照りを鎮めるように手でパタパタを扇いでいる。
(オフィーリア様ってかなりのツンデレ・・・?)
椿はオフィーリアの態度に口元が緩むのを抑えられなかった。
49
あなたにおすすめの小説
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
魔法学園の悪役令嬢、破局の未来を知って推し変したら捨てた王子が溺愛に目覚めたようで!?
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
『完璧な王太子』アトレインの婚約者パメラは、自分が小説の悪役令嬢に転生していると気づく。
このままでは破滅まっしぐら。アトレインとは破局する。でも最推しは別にいる!
それは、悪役教授ネクロセフ。
顔が良くて、知性紳士で、献身的で愛情深い人物だ。
「アトレイン殿下とは円満に別れて、推し活して幸せになります!」
……のはずが。
「夢小説とは何だ?」
「殿下、私の夢小説を読まないでください!」
完璧を演じ続けてきた王太子×悪役を押し付けられた推し活令嬢。
破滅回避から始まる、魔法学園・溺愛・逆転ラブコメディ!
小説家になろうでも同時更新しています(https://ncode.syosetu.com/n5963lh/)。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。
前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。
外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。
もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。
そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは…
どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。
カクヨムでも同時連載してます。
よろしくお願いします。
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる