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32.計画中止
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「柳君・・・。ありがとうございました・・・」
ジャックの姿が見えなくなると、椿はホッと胸を撫でおろし、柳に頭を下げた。
「おう。ざまーねーな、あいつ。それより山田は大丈夫か?」
柳はニッと笑いながら椿を見た。自分を気にかけてくれる柳に椿はほんわかと胸が温かくなった。
「はい」
「やっぱりオフィーリアはやってなかったんだな、虐めは」
「はい。昨日の夜、そう言ってました。辛そうに泣いてましたよ・・・。多分、それは傍観していた事と自分の行いの後悔の涙だと思います・・・」
それ以外もあると思うけど・・・。
椿は昨日のオフィーリアの涙を思い出して、ほんわかした気持ちが消えた。彼女を想い、急に切なくなった。
「じゃあ決まりだな!」
「え?」
柳の弾んだ声に椿は首を傾げた。
「修道院行き計画中止! オフィーリアが断罪される必要はないってこと」
その言葉に椿はハッとした。
「虐めてもいねーのに断罪されるっておかしいだろ? 本物のオフィーリアが哀れだぜ?」
そう! そうなのだ!
虐めてもいないのに断罪なんて! 冤罪だ! 酷い話じゃないか。絶対回避しなければ!
「はい、そうですね! 中止です、中止! 柳君、山田を断罪しないで下さいね!」
椿は胸の前でギュッと拳を握って柳を力強く見つめた。
「あははっ! 俺はもともとそんな気ねーから大丈夫! 断罪されたがってたの山田の方だし」
柳は可笑しそうにケラケラと笑った。
そして、ふっと優しい顔になると、
「それにしても、よく頑張ったな! あいつ相手にはっきりと物を言うなんてさ! 勇気が入ったろ?」
そう言って椿の頭を撫でた。
「!」
突然頭を撫でられて、椿は飛び上がりそうになった。
「オフィーリアのために頑張ったな、偉い偉い!」
「そ、そ、そんな、や、山田なんて・・・、柳君の強さと勇気から比べれば、足元にも及ばない・・・そそ、それどころか、米粒くらいで・・・」
優しい笑顔に見つめられた上に頭まで撫でられ、椿の心臓はバクバクと爆発寸前だ。
「あはは、俺と比べんなって。山田にしては上出来だよ! 自信もっていいぜ!」
若干上からな誉め言葉だが、そこを突っ込むゆとりなどない。それどころか、甘い誉め言葉に脳内変換される始末。こうしたシチュエーションに慣れていない椿はカチーンと固まってしまった。
「でもよ、お互い戻った時の事を考えておかねーと不味いかもなぁ」
柳は椿から手を放すと、思案顔で自分の顎を摩った。
「断罪当日って卒業式だっけ? その日までに俺らのままだったら完全に断罪回避できるけどさ・・・俺が何もしなければいいわけだし・・・。でも、その前に元に戻れたら、セオドアの奴、どうするか分かんねーよなぁ。誤解したまんまなわけだろ?」
「そう! そうなんです!」
柳の言葉に、甘いピンク色の世界で固まっていた椿は一気に現実に舞い戻ってきた。
「昨日の夜、オフィーリア様にセオドア様の誤解を解くように話しました。このままでは婚約破棄されてしまうって!」
椿はバッと柳を見上げた。
「オフィーリア嬢には辛いことかもしれませんが、『麗しのオリビア』を読んでもらうようにお願いしました。この不可思議な現象を理解するためにも必要かと思ったので」
「例のラノベ?」
「はい。当人にとっては未来を知ってしまう事になるから、良い事か悪い事か迷ったのですが・・・。それでも、やっぱり自分の境遇を知ってもらった方がいいって思って・・・」
説明しているうちに、自分の行動が正しかったか不安になってきた。
本当に良かったのだろうか? 未来を知らせることなど。それよりも自分たちが生きていた世界が、人が書いた物語の世界だったなんて教えてしまって。本当に良かったのか?
『麗しのオリビア』を呼んだ後、オフィーリアはどう思うのだろう? どれだけの衝撃を受けるだろう?
椿の中でどんどんと罪悪感が大きくなる。
それでも、自分の境遇を知らないと彼女は誤解されたままだ。
「山田達の世界で、オフィーリア様とセオドア様に仲良くなってもらう事を祈るしかないです・・・」
椿は心配になって俯いた。
セオドアの事を語る時のオフィーリアの辛い顔を思い出したのだ。
なのに、柳の予想外にご機嫌な声に驚いた。
「そうだよ! そうだよなぁ! だったら問題ねーよ!」
「え・・・? そうでしょうか・・・?」
「だってさ、同じ世界の人間ほど頼りになる人はいねーもん。仲良くなるだろ、フツー」
「で、でも、オフィーリア様とセオドア様は相当に仲が悪いんですよ?」
「いやいや、状況が状況じゃん。喧嘩してる場合じゃねーっての」
柳はカラカラと笑いながら、椿の肩を軽くペシペシと叩いた。
「だーいじょうぶ、大丈夫! 絶対仲良くなるって、俺達みたいにさ! 心配し過ぎたわ、バカみてー、あはは!」
いつも以上のポジティブ柳に椿はポカンとしてしまった。
深く考えていた自分がアホらしくなるのは気のせいだろうか?
ポカンとしつつも、心なしか頬が熱い。
『絶対仲良くなるって、俺達みたいにさ』
この言葉にくすぐったくなる気持ちは何だろう?
でもこの疑問に答えを出すのは止めておこう。
(柳君は深い意味があって言ったわけじゃないんだから、きっと・・・)
ジャックの姿が見えなくなると、椿はホッと胸を撫でおろし、柳に頭を下げた。
「おう。ざまーねーな、あいつ。それより山田は大丈夫か?」
柳はニッと笑いながら椿を見た。自分を気にかけてくれる柳に椿はほんわかと胸が温かくなった。
「はい」
「やっぱりオフィーリアはやってなかったんだな、虐めは」
「はい。昨日の夜、そう言ってました。辛そうに泣いてましたよ・・・。多分、それは傍観していた事と自分の行いの後悔の涙だと思います・・・」
それ以外もあると思うけど・・・。
椿は昨日のオフィーリアの涙を思い出して、ほんわかした気持ちが消えた。彼女を想い、急に切なくなった。
「じゃあ決まりだな!」
「え?」
柳の弾んだ声に椿は首を傾げた。
「修道院行き計画中止! オフィーリアが断罪される必要はないってこと」
その言葉に椿はハッとした。
「虐めてもいねーのに断罪されるっておかしいだろ? 本物のオフィーリアが哀れだぜ?」
そう! そうなのだ!
虐めてもいないのに断罪なんて! 冤罪だ! 酷い話じゃないか。絶対回避しなければ!
「はい、そうですね! 中止です、中止! 柳君、山田を断罪しないで下さいね!」
椿は胸の前でギュッと拳を握って柳を力強く見つめた。
「あははっ! 俺はもともとそんな気ねーから大丈夫! 断罪されたがってたの山田の方だし」
柳は可笑しそうにケラケラと笑った。
そして、ふっと優しい顔になると、
「それにしても、よく頑張ったな! あいつ相手にはっきりと物を言うなんてさ! 勇気が入ったろ?」
そう言って椿の頭を撫でた。
「!」
突然頭を撫でられて、椿は飛び上がりそうになった。
「オフィーリアのために頑張ったな、偉い偉い!」
「そ、そ、そんな、や、山田なんて・・・、柳君の強さと勇気から比べれば、足元にも及ばない・・・そそ、それどころか、米粒くらいで・・・」
優しい笑顔に見つめられた上に頭まで撫でられ、椿の心臓はバクバクと爆発寸前だ。
「あはは、俺と比べんなって。山田にしては上出来だよ! 自信もっていいぜ!」
若干上からな誉め言葉だが、そこを突っ込むゆとりなどない。それどころか、甘い誉め言葉に脳内変換される始末。こうしたシチュエーションに慣れていない椿はカチーンと固まってしまった。
「でもよ、お互い戻った時の事を考えておかねーと不味いかもなぁ」
柳は椿から手を放すと、思案顔で自分の顎を摩った。
「断罪当日って卒業式だっけ? その日までに俺らのままだったら完全に断罪回避できるけどさ・・・俺が何もしなければいいわけだし・・・。でも、その前に元に戻れたら、セオドアの奴、どうするか分かんねーよなぁ。誤解したまんまなわけだろ?」
「そう! そうなんです!」
柳の言葉に、甘いピンク色の世界で固まっていた椿は一気に現実に舞い戻ってきた。
「昨日の夜、オフィーリア様にセオドア様の誤解を解くように話しました。このままでは婚約破棄されてしまうって!」
椿はバッと柳を見上げた。
「オフィーリア嬢には辛いことかもしれませんが、『麗しのオリビア』を読んでもらうようにお願いしました。この不可思議な現象を理解するためにも必要かと思ったので」
「例のラノベ?」
「はい。当人にとっては未来を知ってしまう事になるから、良い事か悪い事か迷ったのですが・・・。それでも、やっぱり自分の境遇を知ってもらった方がいいって思って・・・」
説明しているうちに、自分の行動が正しかったか不安になってきた。
本当に良かったのだろうか? 未来を知らせることなど。それよりも自分たちが生きていた世界が、人が書いた物語の世界だったなんて教えてしまって。本当に良かったのか?
『麗しのオリビア』を呼んだ後、オフィーリアはどう思うのだろう? どれだけの衝撃を受けるだろう?
椿の中でどんどんと罪悪感が大きくなる。
それでも、自分の境遇を知らないと彼女は誤解されたままだ。
「山田達の世界で、オフィーリア様とセオドア様に仲良くなってもらう事を祈るしかないです・・・」
椿は心配になって俯いた。
セオドアの事を語る時のオフィーリアの辛い顔を思い出したのだ。
なのに、柳の予想外にご機嫌な声に驚いた。
「そうだよ! そうだよなぁ! だったら問題ねーよ!」
「え・・・? そうでしょうか・・・?」
「だってさ、同じ世界の人間ほど頼りになる人はいねーもん。仲良くなるだろ、フツー」
「で、でも、オフィーリア様とセオドア様は相当に仲が悪いんですよ?」
「いやいや、状況が状況じゃん。喧嘩してる場合じゃねーっての」
柳はカラカラと笑いながら、椿の肩を軽くペシペシと叩いた。
「だーいじょうぶ、大丈夫! 絶対仲良くなるって、俺達みたいにさ! 心配し過ぎたわ、バカみてー、あはは!」
いつも以上のポジティブ柳に椿はポカンとしてしまった。
深く考えていた自分がアホらしくなるのは気のせいだろうか?
ポカンとしつつも、心なしか頬が熱い。
『絶対仲良くなるって、俺達みたいにさ』
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でもこの疑問に答えを出すのは止めておこう。
(柳君は深い意味があって言ったわけじゃないんだから、きっと・・・)
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