91 / 105
91.謝罪
しおりを挟む
「何を言ってるんだ・・・? オリビア・・・」
オリビアの思いもよらない提案に、セオドアは本気で自分の耳が可笑しくなったのかと疑った。
「だって、そうじゃない! 私たちの間を割いたのは紛れもないオフィーリア様でしょう? 私たちは幼馴染でずっと一緒で、私の方が先にセオドアを好きになったのに! 私たちはこれからもずっと一緒だったはずなのに! 途中で邪魔をしたのは彼女の方よ!」
オリビアはヒステリックに叫んだ。
ああ・・・、本当にその通りだ。自分たちは幼馴染でずっと一緒で・・・その中でオリビアに恋をして・・・。それを親同士が決めた婚約者に邪魔をされたのだ・・・。
でも、今、目の前にいる女は誰だ?
「婚約だって解消するって言っていたじゃない! 私のために! あれは嘘だったの?」
「嘘じゃない。解消したよ」
セオドアは力なく答えた。
「え・・・」
「オフィーリアとの婚約は既に解消済みだ」
「なんだ・・・そうだったの・・・、なら何も問題はないのね・・・」
突然の告白に拍子抜けしたのか、オリビアはホッと安堵した表情を浮かべた。
「だが、君との未来はもうない」
「え・・・? 何で・・・?」
「何でだって? ここまでオフィーリアに対して卑劣な真似をして、さらに俺たちを騙しておいて、そんなことがよく言えるな?! そんな君をこの先信用できるとでも!?」
セオドアの怒りの形相に、言い争いの根本的な部分を思い出したようだ。オリビアもキッとセオドアを睨みつけると、
「だったら謝らない!!」
再びヒステリックに叫んだ。
「分かった。なら、俺も君を許さないまでだ」
セオドアは真っ直ぐにオリビアを見た。はっきりとした口調と決意が込められた表情を見て、オリビアは本能的にまずいと感じた。さっきから何度も怒らせているが、それでも何とか涙と我儘な態度で切り抜けられると思っていたのだ。
「オフィーリアに謝罪したところで、君との関係を続けるつもりは無い。それでも友人ではありたいと思っていた。俺たちは幼馴染で本当に長い付き合いだったのだから・・・」
「ま、待って・・・」
オリビアは焦った。早く挽回しなければ・・・。本当に捨てられてしまう!
しかし、もう遅すぎた。
「だが、それだって所詮無理な話だな。今の君を見ていると友人ですらいたいと思わない」
セオドアの冷たい言葉と視線がザックリとオリビアの胸に突き刺さった。
「そ、そんな・・・、セオドア・・・」
オリビアは震える手を伸ばした。
「謝るわ・・・、謝るから・・・! 許して!」
「触らないでくれ」
縋ろうとしたその手はあっさりと払われてしまった。
「もう謝らなくていい。謝罪は不要だ。いいや、謝罪は受け付けない」
セオドアはきっぱりと拒絶した。
「明日の卒業パーティーで君をエスコートすることもなければダンスに誘うこともない。ああ、でも、足を捻ったんだったな。どのみち踊れないから心配することはないな。なんなら大事を取ってパーティーも欠席した方がいいんじゃないか?」
まるで自分を虫けらのように見つめる目。それは記憶を無くしていた時のセオドアよりも数倍冷たい視線だ。
オリビアはその絶対零度の視線に凍り付いてしまった。
「話は終わった。俺たちは戻るよ。みんな、卒業式前日の貴重な時間を割いてもらって申し訳なかった。協力ありがとう。さあ、戻ろう!」
セオドアは努めて明るく言うと、オリビア以外の皆に部屋から出るように促した。
伸びをしながら歩くラリーの後をダリアが続き、部屋を出て行った。
ジャックはその場に佇んで動かない。
「ジャック・・・」
オリビアは縋るようにジャックを見つめた。ジャックは無言のまま、オリビアを見つめている。
「ジャック・・・、ジャックは残ってくれるの・・・?」
オリビアは感動したように目を輝かせた。
「ジャックは信じてくれると思ってた・・・! やっぱり、ジャックだけよ! 私には!」
そう言うとジャックに手を伸ばした。ジャックも手を伸ばす。
しかし、ジャックが取ったのはオリビアの手ではなかった。
「行こう、リリアナ」
リリアナは驚いたように瞬きしてジャックを見た。
「さっきは乱暴に放って本当にすまなかった」
「な、な、な・・・」
オリビアはジャックの行動に真っ赤になってワナワナ震えている。
リリアナはこのままジャックに付いて行っていいのか、主人のもとに残った方がいいのか迷っているようだ。困ったように二人の顔を交互に見た。
「ここにいたら、オリビアに八つ当たりされるかもしれない。危険だ」
それを聞いてリリアナは震え上がった。慌てて頷くと、
「リリアナ! 待ちなさい!!」
オリビアが叫んだ。その声にリリアナは飛び上がった。
「ジャックもよ! リリアナは私の使用人よ! 勝手に連れて行かないで!!」
「この女なんて知らないんじゃなかったのか?」
「!!」
「それに、俺とリリアナはグルなんだろう? だったら俺が連れて行くのは当たり前だ」
「そ、それは・・・」
「じゃあな、オリビア。行こう、リリアナ」
ジャックはリリアナの手を引いて歩き出した。部屋の扉の前にはセオドアが立って二人を待っている。
二人が廊下に出ると、セオドアはオリビアに向かって、
「さようなら、オリビア。卒業後は会うことはないだろう。足首をお大事に。恐らく怪我なんてしていないんだろうけど」
そう言い放つと自分も廊下に出た。そして、ゆっくりと扉を閉めた。
オリビアの思いもよらない提案に、セオドアは本気で自分の耳が可笑しくなったのかと疑った。
「だって、そうじゃない! 私たちの間を割いたのは紛れもないオフィーリア様でしょう? 私たちは幼馴染でずっと一緒で、私の方が先にセオドアを好きになったのに! 私たちはこれからもずっと一緒だったはずなのに! 途中で邪魔をしたのは彼女の方よ!」
オリビアはヒステリックに叫んだ。
ああ・・・、本当にその通りだ。自分たちは幼馴染でずっと一緒で・・・その中でオリビアに恋をして・・・。それを親同士が決めた婚約者に邪魔をされたのだ・・・。
でも、今、目の前にいる女は誰だ?
「婚約だって解消するって言っていたじゃない! 私のために! あれは嘘だったの?」
「嘘じゃない。解消したよ」
セオドアは力なく答えた。
「え・・・」
「オフィーリアとの婚約は既に解消済みだ」
「なんだ・・・そうだったの・・・、なら何も問題はないのね・・・」
突然の告白に拍子抜けしたのか、オリビアはホッと安堵した表情を浮かべた。
「だが、君との未来はもうない」
「え・・・? 何で・・・?」
「何でだって? ここまでオフィーリアに対して卑劣な真似をして、さらに俺たちを騙しておいて、そんなことがよく言えるな?! そんな君をこの先信用できるとでも!?」
セオドアの怒りの形相に、言い争いの根本的な部分を思い出したようだ。オリビアもキッとセオドアを睨みつけると、
「だったら謝らない!!」
再びヒステリックに叫んだ。
「分かった。なら、俺も君を許さないまでだ」
セオドアは真っ直ぐにオリビアを見た。はっきりとした口調と決意が込められた表情を見て、オリビアは本能的にまずいと感じた。さっきから何度も怒らせているが、それでも何とか涙と我儘な態度で切り抜けられると思っていたのだ。
「オフィーリアに謝罪したところで、君との関係を続けるつもりは無い。それでも友人ではありたいと思っていた。俺たちは幼馴染で本当に長い付き合いだったのだから・・・」
「ま、待って・・・」
オリビアは焦った。早く挽回しなければ・・・。本当に捨てられてしまう!
しかし、もう遅すぎた。
「だが、それだって所詮無理な話だな。今の君を見ていると友人ですらいたいと思わない」
セオドアの冷たい言葉と視線がザックリとオリビアの胸に突き刺さった。
「そ、そんな・・・、セオドア・・・」
オリビアは震える手を伸ばした。
「謝るわ・・・、謝るから・・・! 許して!」
「触らないでくれ」
縋ろうとしたその手はあっさりと払われてしまった。
「もう謝らなくていい。謝罪は不要だ。いいや、謝罪は受け付けない」
セオドアはきっぱりと拒絶した。
「明日の卒業パーティーで君をエスコートすることもなければダンスに誘うこともない。ああ、でも、足を捻ったんだったな。どのみち踊れないから心配することはないな。なんなら大事を取ってパーティーも欠席した方がいいんじゃないか?」
まるで自分を虫けらのように見つめる目。それは記憶を無くしていた時のセオドアよりも数倍冷たい視線だ。
オリビアはその絶対零度の視線に凍り付いてしまった。
「話は終わった。俺たちは戻るよ。みんな、卒業式前日の貴重な時間を割いてもらって申し訳なかった。協力ありがとう。さあ、戻ろう!」
セオドアは努めて明るく言うと、オリビア以外の皆に部屋から出るように促した。
伸びをしながら歩くラリーの後をダリアが続き、部屋を出て行った。
ジャックはその場に佇んで動かない。
「ジャック・・・」
オリビアは縋るようにジャックを見つめた。ジャックは無言のまま、オリビアを見つめている。
「ジャック・・・、ジャックは残ってくれるの・・・?」
オリビアは感動したように目を輝かせた。
「ジャックは信じてくれると思ってた・・・! やっぱり、ジャックだけよ! 私には!」
そう言うとジャックに手を伸ばした。ジャックも手を伸ばす。
しかし、ジャックが取ったのはオリビアの手ではなかった。
「行こう、リリアナ」
リリアナは驚いたように瞬きしてジャックを見た。
「さっきは乱暴に放って本当にすまなかった」
「な、な、な・・・」
オリビアはジャックの行動に真っ赤になってワナワナ震えている。
リリアナはこのままジャックに付いて行っていいのか、主人のもとに残った方がいいのか迷っているようだ。困ったように二人の顔を交互に見た。
「ここにいたら、オリビアに八つ当たりされるかもしれない。危険だ」
それを聞いてリリアナは震え上がった。慌てて頷くと、
「リリアナ! 待ちなさい!!」
オリビアが叫んだ。その声にリリアナは飛び上がった。
「ジャックもよ! リリアナは私の使用人よ! 勝手に連れて行かないで!!」
「この女なんて知らないんじゃなかったのか?」
「!!」
「それに、俺とリリアナはグルなんだろう? だったら俺が連れて行くのは当たり前だ」
「そ、それは・・・」
「じゃあな、オリビア。行こう、リリアナ」
ジャックはリリアナの手を引いて歩き出した。部屋の扉の前にはセオドアが立って二人を待っている。
二人が廊下に出ると、セオドアはオリビアに向かって、
「さようなら、オリビア。卒業後は会うことはないだろう。足首をお大事に。恐らく怪我なんてしていないんだろうけど」
そう言い放つと自分も廊下に出た。そして、ゆっくりと扉を閉めた。
52
あなたにおすすめの小説
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
魔法学園の悪役令嬢、破局の未来を知って推し変したら捨てた王子が溺愛に目覚めたようで!?
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
『完璧な王太子』アトレインの婚約者パメラは、自分が小説の悪役令嬢に転生していると気づく。
このままでは破滅まっしぐら。アトレインとは破局する。でも最推しは別にいる!
それは、悪役教授ネクロセフ。
顔が良くて、知性紳士で、献身的で愛情深い人物だ。
「アトレイン殿下とは円満に別れて、推し活して幸せになります!」
……のはずが。
「夢小説とは何だ?」
「殿下、私の夢小説を読まないでください!」
完璧を演じ続けてきた王太子×悪役を押し付けられた推し活令嬢。
破滅回避から始まる、魔法学園・溺愛・逆転ラブコメディ!
小説家になろうでも同時更新しています(https://ncode.syosetu.com/n5963lh/)。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。
前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。
外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。
もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。
そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは…
どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。
カクヨムでも同時連載してます。
よろしくお願いします。
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる