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夢の中の見知らぬ女性ー①
しおりを挟む目の前で繰り広げられる光景は映画かドラマのシーンのような映像美がある。
青い空の下、花が咲き誇る綺麗な庭園で幼い女の子と男の子が楽し気に笑っている。きっと仲の良い二人なんだろう。幸せそうな表情が離れていてもはっきりと見えた。
幸せな子供達の姿を漫然と眺めていたら突如として場面が切り替わる。次のシーンは青年と女性の言い争う姿だ。二人の顔は朧気で分かり難いがさっきの子供達の成長した姿だと素直に思えた。
‥…それにしても衣装が中世のそれっぽいな、いつの時代だ?
二人の醜態。喧嘩の理由は分からないけれど、ちょっとした喧嘩とは思えない真に迫った凄みがある。これは結構深刻なレベルではなかろうか。恋愛経験皆無の私でもこれが痴情の縺れだと理解できた。
どうでもいいけど、この問答無用で繰り広げられる痴話喧嘩を見なきゃいけない私は一番気の毒な人だと思う。
‥‥お付き合い出来ただけでもいいじゃない。それじゃダメなの? 彼氏いない歴=年齢の私にしてみればちょっと羨ましいな‥…はぁ。
めげずに二人に視線を送ると口論の有様が一層酷くなっていた。特に青年から滲み出る嫌悪感が酷いのだ。声は聞こえずとも二人が険悪で憎悪を漲らせているのは一目瞭然だ。これは下手すれば修復不可能になるかもと心配になる。二人に何があったのか、昔の様に仲良く出来ないのかと老婆心ながら仲裁したい。
啀み合う今の二人に先程の笑顔で語り合っていた幼き姿が重なって悲しみが込み上がってくる。成す術がないのは結構辛いのだ。
罵り合っていたシーンが青年の横に別の女性が立つ場面へと切り替わった。今度は女性の肩に手を回した姿だ。手つきがイヤラシイのは気の所為? 二人の仲を見せつけたいのか喧嘩をしていた女性の正面で対峙している。
‥‥うわお、今カノさんと元カノさん?! ええーこれって修羅場展開!?
ちょっと修羅場はやだな。ハピエン希望なのにとボヤいても容赦なく場面は続く。
‥‥今カノさんらしき女性‥‥いいや、今カノさんで。
勝ち誇った表情で元カノさんを見下す姿は悪役その者。顔に張り付かせた笑顔は厭らしい女のソレだった。男を盗ってやったぞという満足させた自尊心を、プライドの高さを、そして向けた笑顔の下に嘲りが見て取れた。
元カノさんに放った笑顔が何とも卑しい性根の悪い悪意の塊に見えたが不躾な悪意の意味は何だろう。
私は元カノさんも今カノさんもどんな人か知らない。主観で悪いけど今カノさんは性格の悪い人だと思っている。だがあの青年も人が悪そうだから、二人はどっこいどっこいでお似合いかもね。まさに割れ鍋に綴じ蓋だ、何とも世の中上手く出来ている。
‥…打ちひしがれた元カノさん。見ているこっちまで辛くなる。
『男は他にもいるよ! いっぱいいるよ! 彼奴だけが男じゃないよ!』
恋愛経験皆無の私の言葉は俄には信じられないかも知れないだろうがそこは安心して欲しい。恋多き姉の実体験の言葉だから太鼓判を押すよ。
―――失恋の痛手は新しい恋で癒すのが鉄則! さっさと次の男をゲットしなきゃ時間の無駄だって。別れた男は自分を大切にしてくれるイイ男を捕まえるための捨て石ぐらいに思っていればいいのよ。経験が目を肥やすのよ! 失恋の一つや二つで自分の価値を下げるなんて馬鹿らしいでしょ、可能性を摘むのは勿体無いって!
恋多き姉が語っていたっけ。懐かしい。そうだった姉は自分を大事にしない男はどんなにイケメンでも容赦しなかった。女性側に理想を押し付けてくる男はサイテーだとも言ってたっけ。‥‥お姉ちゃん元気かなぁ旦那さんと仲良くしているだろうか。ちょっと懐かしさで目頭が熱くなる‥‥気がした。
懐かしい姉の恋愛観を思い出して目の前の哀愁漂わせた女性に、声にならない声を張り上げてしまった。励ましたい私の気持ちは届いただろうか。
‥…今は悲しいだろうけど
過去の恋愛を引き摺るのは心理的にも身体的にも良くないと姉や兄から教わっている。出来れば早く立ち直って欲しい。彼等の恋バナを散々聞かされただけの聞き齧りでごめんなさい。私は経験ないので知りません。でも元気になって欲しいのは本当の気持ちなんだよ。
次の恋を推奨する私の声は彼女に届いただろうか。無性に応援したくなったのは決して彼氏いない歴=年齢の愛奈だからではない。同じ女性としての応援なの!
背を向けていた筈の女性と目が合った。
彼女の瞳は私を見ていた。私を見つけその視線で捕らえられたのだ。
えっ!? 何で彼女と目が合うの!?
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