目が覚めたら奇妙な同居生活が始まりました。気にしたら負けなのでこのまま生きます。

kei

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目覚める前の遣り取りー①

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「‥‥‥‥、…‥」
「‥‥ ‥‥」

 (‥…う…‥? だ…れ‥…)

 ボソボソと話し声がする。頭がぼんやりとして良く聞き取れない。低音の声色からは困惑や後悔が滲じ出ている。きっと良くない話なのだろう。

 だが小声でボソボソは聞こえそうで聞こえない、地味にウザい。身体も頭も重怠い今は静かに寝かせて欲しいのだ。

 ‥‥‥うるさいなぁ眠いんだけどぉああ…眠いよぉ‥‥‥ぐぅ


 睡魔に抗うも虚しく意識を失くしたアイナの横で会話を続ける二人の人物。もう何を話そうが彼女の耳に届くことは無かった。



 

 「導師様、彼女の容態は‥‥‥その、助かりますか」

 神官の声色には深い後悔と申し訳なさが滲み出ている。

 「ああ命に別状はない。どうやら魔力を使ったからか衰弱と疲労が酷い。このまま寝かせて於けば良いだろう。‥‥だが一つ尋ねたい。どうしてこうなったのだ」

 導師の声は冷たく苛立ちを含んで、どこか神官を咎めている。静かな問いかけではあるものの少しばかり怒気が漏れ出でていた。問われた神官は身を縮こませ震えるばかり。だが今は正直に導師の問いに答えるしかないのだと贖罪の念で応える。

 「も、申し訳ございません。実のところ私も良く分かっていないのです。孤児院長であるジェーンがこの子を連れて魔力を教えて欲しいと尋ねて来たのです」

 一旦言葉を終えた神官は溜息を吐いて気を取り直した。戸惑いと困惑の浮かんだ表情は差し詰め『なぜ自分が?』と言ったところか。導師は何も言わず神官の言葉を静かに待つ。

 「私はこの子の前で魔法を見せ簡単ですが取り扱いの注意点を述べ…‥え、ええっと‥‥その」
 「なんだ? 続きを」

 言い淀んだ神官にジロリと視線を向けた導師の表情には『何を隠している』の言葉がありありと浮かんでいた。目をキョロキョロさせ怯えた態度が疚しさを匂わせる。

 肝心の神官は導師の真剣な表情がいつもの強面の5倍増しの顔が怖いだけなのだが、神官の内情を知らない導師には『後ろめたい男』と勝手に不審人物認定していた。導師の顔が今にも殺しにかかってきそうだとビビりまくった神官は泣きたくなるのをグッと堪える。


 「は、はい、それで私の目の前で魔力を動かすように‥‥‥魔力操作をさせました。‥…ですが上手く扱うことが出来ず私も魔石を使って教えようと思い魔石を取りに部屋を出ました。そして戻ってみれば二人が倒れて‥…彼等に何があったのか見当もつきません…‥その、役立つ話ではなく申し訳ございません」

 神官は恐縮し過ぎで背丈のある男が子供のように見える。己の仕出かしを理解した男だ。導師はここまで恐縮しちょっと怯えもある男に何故このような事を仕出かしたのか不思議に思って動機が知りたくなっていた。問い詰める気は更々無いのだがこの怯えよう『何かあるな』導師の勘だ。


 「このガキは五歳に満たないと見るが。まさか洗礼式を終えているのか?」
 「い、いえ…‥記憶の無い子供でありますがまだ未洗礼で間違いないかと」
 「そうだろなあ。で、未洗礼とわかっていながら魔力を扱わせたのか。しかも俺が引き取る子供なのにか?」
 「! も、申し訳ございません! 導師様に逆らう気など滅相もないです! 私もなぜそのような行いをしたのか分からないのです。あの時はそうしなければ…‥この子の魔力が暴発するのではないかと強く感じ…‥私がいれば大丈夫だと判断したのですが‥…今にして思えば何故あの時そう判断をしたのか、自分が下したとは思えないのです。‥…導師様、私は如何様にも罰を受けます。今回は無事で済みましたがもしまかり間違ってこの子が命を落していたと思えば、私の行いは許させることではありません。本当に申し訳ございませんでした」

 すっかり項垂れた神官は逆らうことなく導師の判断を仰ぐ。

 「‥…お前の懺悔は理解した。だが答えを出すのは早計だ。事実を詳らかにするのも神官の定め。事実を明らかにするぞよいな」
 「はい。如何様にもお使い下さい。導師様」
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