目が覚めたら奇妙な同居生活が始まりました。気にしたら負けなのでこのまま生きます。

kei

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呪夢ー④

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 シナリオの全貌を掴むため当面はアレンジなしで演じろと命じられた。と言っても私はお初アバターの身、シナリオ展開を知らないのだ。
 好き勝手に動いても無問題! 先生は詰めが甘い。

 
 と言うことで、今はランチタイム!

 この王侯貴族が集う学園には舌の肥えた坊ちゃん嬢ちゃんを唸らせるシェフが常勤しているとネタを掴んだ。私の情報収集手腕を以ってすればこの手のネタはお茶の子さいさい。うふふ、食べ損ねた焼き菓子のリベンジ! 待ちに待った実食タイム!

 「フローレンス様、******様がお呼びです」

 さて今から美味しそうなお肉の一切れをお口に入れる寸前で、不用意な一声が

 (くっ! 何、この子。どっから湧いた!?)

 「******様をお待たせするのですか。流石、高慢な女性だ」

 何たるタイミングの良さ。様子を窺っていたとしか思えない。断腸の思いとは、この事か。人生の肥しを一つ積んだ。



 大人しくドナドナされた先は貸し切り個室。在学中の王子様専用の伏魔殿だ。気が進まないが王子の命令だ。観念して扉を叩く。

 コンコン

 「フローレンスです。お呼びでしょうか」

 「‥‥」

 コンコン

 「‥‥」
 「お留守ですね‥…出直しましょうか」
 「待て、******様のお手が空く迄ここでお待ちしろ」
 「‥…は? と言うことはお部屋にいらっしゃるのですね。そうですか」

 コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン、ココン、ココン、コンコンココン、コンコンココン。ちょっと楽しい。

 
 「う、うるさーい! しつこいぞ!!」
 
 勢いよく開け放たれた扉の先には顔を真っ赤にした浮気王子が。
 あっ、怒ってる? サルみたいに真っ赤な顔の王子、幾ら顔が良くてもおサルの王子にはときめかないな。
 
 「な、何なんだお前は!」
 「おサル殿下‥‥ウホン、王子殿下、お呼びでしょうか」


 

 



 今は放課後。早速今日の出来事を先生に報告だ。『報・連・相』は大事。ご褒美のおやつを所望したい。

 
 向かうは先生の研究室のある魔術科専門棟。
 教室がメインの建物が学生棟。座学中心となる。後は専門課程別に棟が別れているのだ。興味ないから知らないけど。

 魔術科って聞いた時は鼻で笑っちゃった。ファンタジー過ぎる設定に微笑ましくなる。ニマニマしてたら先生「真面目に!」って怒られちゃった。

 (うわお、ガチでキャストに成りきってる!)

 先生の熱意に脱帽したよ。その熱意で是非とも義妹を誑かして頂きたい。

 「貴女、また禄でもない事考えているでしょ?」

 妙に勘のいい人だな。へらり笑って誤魔化した。


 「どう? 何か掴めたかしら」
 「先生、わかりました! あの殿下、小物です!」
 「‥…そんなことは知っているわ。それで何があったの?」

 何故か先生のテンションは低い。そして眉間にくっきりの皺。

 「聞いて下さい~、酷いんですよあの人。お昼時間に私を呼び出して‥‥」

 私はお昼の出来事を先生にぶちまけた。

 呼び出しの内容は単なる嫌がらせ。個室で王子様専用の食事を義妹と仲良く食べている姿を私に見せつけたくて呼び出したのだ。その所為で私はランチを食べ損ねた。焼き菓子の次はランチ。悉く私の食の楽しみを奪う王子は敵だ。

 幼稚な嫌がらせを平気で行う王子様ってどうなんだろう。
 百年の恋も冷めるどころか恨みを買うよ。現に私は恨んでいる。そう『食い物の恨みは恐ろしい』を地で行く計画を練るほどに。

 その話を先生にすると目糞鼻糞を笑う的な事を言われた。何でよ。

 
 「貴女、シナリオ無視しているわね」

 ヤバっ、先生眉間の皺がまた深くなったよ、栞挟めそう。

 「‥…まったく。でもシナリオと違う動きが出来るとわかったわ」
 「? 先生、今までは出来なかったんですか?」
 「そう‥‥と言うより違う動きをしようと思わなかったが正しいわね。頭に靄が罹ったように物事が考えられなくて惰性で動いていたの。でも貴女が現れてから、こうやって自由に考え動けてる。ふふ、貴女のおかげね」

 美形の微笑、眼福、眼福。

 

 シナリオ追随も確かに手だが、枠から外れることも手ではないか。先生も思うことがあったのか「貴女の好きなようにしなさい」と若干見放された感が否めない。折角自由裁量を得たのだ。好きにしよう。

 「非常識な事はしないので安心して下さい」

 先生の心の安寧の為、言ってみた。気遣いは大事だ。

 「‥…報告だけはしてよね」

 気の所為かな。疑いの眼で私を見てない?



 「貴女、学業の出来は大丈夫なの? フローレンスは成績上位者よ。それも殿下は気に食わないのでしょうね」

 フローレンスは座学は勿論、実技の魔術も好成績を修める才女だそうだ。

 「‥‥‥まじゅつ? やだな~先生、魔術なんて使えるわけないじゃないですか。もう、成りきり過ぎですよ~」
 「は? 貴女何言ってるの。学園生が魔術出来ないわけないじゃない。私が教師なんだから成績悪いの許さないわよ」
 「ほ? ‥…マジなの?」

 この世界、魔術あるあるの世界だって

  (…‥何それ聞いてないよ!)

 
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