目が覚めたら奇妙な同居生活が始まりました。気にしたら負けなのでこのまま生きます。

kei

文字の大きさ
42 / 71

呪夢ー⑧

しおりを挟む

 謹慎後からの学園生活は針の筵。アウェイ感半端ない。

 
 先生はフローレンスから賄賂を受け成績操作をしたとして懲戒解雇だと後で知らされた。序でに私も「教師に賄賂を贈り味方に付けようとしても無駄でしたね」と。冤罪かーい! 私達は学園の誰かにしてやられたのだ。


 フローレンスは逆境にも負けず奮闘し、その頑張りを成果として知らしめた。
 卒業まで学年首位をキープして努力の賜物を惜し気なく見せつけたのだ。

 王子との婚約は卒業しても解消どころか破棄もされず今に至る。
 最大の謎である。印象操作で悪評を流された令嬢を王子妃にするのか。一体何を考えているのだろう。

 仮に政治絡みであれば義妹でと頭の挿げ替えを進言したが王子は一考もなく却下した。別れ話も耳を貸さない。煩わしさから関りを断てば他に好きな男がいるのかと執拗に絡まれたのは誤算だ。この王子、何がしたいのだろう。






 卒業して1年。

 不仲の王子との関係改善は徒労に終わり滔々婚約式を迎える羽目に。

 美しく成長を遂げた彼女は殿方から露骨に秋波を向けられていた。それは婚約者の王子が居ても構わずにだ。
 異性からの熱い視線やアプローチに不慣れな彼女は終始胸がドギマギ。頬を染める彼女の横でギロリと睨み威嚇を止めない王子がキモくて萎えた。やはり彼を理解するのは難しい。


 ある日、側近の一人から婚約解消されないのは王命だからであってお前の為ではない調子に乗るなと釘を刺された。

 地盤強化を目論む王家の求めに応じた政略結婚。お相手は公爵家直系の血筋であれば尚良し。それだけでフローレンスに白羽の矢があたったのだ。決して王子の意向ではない、勘違いするなと忠告を受けた。

 王子の当たりの強さは劣等感と抗えない無力感からか。くだらない。
 立場の弱いフローレンスに八つ当たりをしたのだろう。
 だがこれは王家の望んだ縁組。せめて開き直って良好な関係を築き上げて欲しかった。そう思うのは私の我儘だろうか。


 恋愛だけが愛情じゃない。
 王子よ、情けは人の為ならずだ。せめて友愛の心情は持って欲しかった。
 それも無理なら…将来自分を支えてくれる部下だと認識を改めて欲しい。
 彼女は貴方の敵ではない。拗れた関係を修復するのは‥‥一人では難しい。







 鬱々と迎えた結婚式の日。
 これ程、憂鬱な結婚式を迎えるとは。
 人生初の体験がトラウマを生み出すレベルだとは夢にも思わなかった。
 思い描いた結婚と乖離し過ぎて泣けてくる。


 あれから一度も先生に会えていない。これは予想外だった。てっきり何処かの場面で助けてくれるかと期待してたのに。残念。出来れば今日、会いたいな。

 
 いよいよ結婚式の場面。

 妙な緊張で手汗掻きそう。やだな手汗の酷い花嫁って。大聖堂で挙式とは。いやはや激しい動悸で口から心臓が飛び出そう。目前に白亜の殿堂である大聖堂。この聖堂に足を踏み入れるのか。望んだ結婚ではないが感慨深く建物を見てしまうのは、思わずか。



 ドオォォン ドオォン ドン! ドン!


 突如、響き渡る爆音。
 吹き上がる炎と硝煙の匂いと共にその場は騒然とした。動揺が走り逃げ惑う人々の悲鳴や怒声が飛び交う。逃げる群衆に紛れた怪しい人達が攻撃を始めたのだ。混乱を極めた群衆が逃げ道を塞ぐ。一瞬にして外は大混乱だ。
 騒ぎに乗じてこの場を離れなければ我が身が危うい。数人の護衛に守られながらその場を後にした‥‥‥


 ドンッ! 


 何が起こった!? 

 突然背中に強い衝撃が、遅れて激痛が身体を蝕む。身を捩らすことも出来ない。思わず呻き蹲る私の背後で誰かが叫び泣いていた。

 喧騒でよく聞き取れない‥…

 身体が‥‥動かな…‥‥さ、寒い‥…

 だ…れ…か‥‥

 

 



 ガラ―ン ガラ―ン ガラ―ン 



 遠のく意識に教会の鐘の音だけが鮮明に聴こえる。

 

 後は‥…








 「うぇぇぇぇーーー? えっ!?」

 

 目覚めた先はまさかのガーデン。
 既視感のあるテーブル席にちょこんとお座りしていた。

 
 「今のは…‥…」


 思い出すと身の毛がよだつ。仮想世界と言えど疑似死したのだ背筋に冷たい汗が伝わる。全身に震えが走り思わず背中に手を回し傷跡を確認した。

 無傷…でも、まだ心臓がドキドキしてるよ。

 「こ、こわ…‥」

 幾ら過去だとしても殺される体験はもう御免だ。勘弁してよ。
 ‥‥手の震えは止まらないし指先も冷え切ってる。
 恐怖は‥‥感情は心に刻まれるわけか。

 
 「と、とと取り敢えず、喉を潤そうか‥…」

 恐怖に打ち勝つ手段は‥‥

 「よ‥‥おしぃ‥‥お菓子食べて、元気出そう‥‥」

 取り敢えずお腹を満たせば震えは止まるか…‥止まればいいな。

 まだ暖かい紅茶を一口。バターの良い香りを放つ焼き菓子を摘まんでお口にポイっとすれば、ちょっとホッとする。味わう事で現実を感じたい、ちょっとした願望だ。

 
 「ふぅー、落ち着いたよ。あ~ここってはじまりのガーデンだよね。うん、間違いない。‥‥ここに戻ってきちゃったか~」

 大きな溜息と一緒に胸に詰まらせた苦痛を吐き出す。怖がっていてはこの世界をクリア出来ないのだ。これから起こる未来に負けられないと己を鼓舞する。

 
 「そう言えば、この後、義妹が登場するんだよね。はぁアレ面倒なんだよね。あ~前途多難かなぁ~」

 私は雲一つない青空を見上げ、再び理不尽なフローレンスの人生を送るのだと心を決めた。

 「ああ、お菓子、美味し―!」
  

 この後、強制的に繰り返されるやり直し人生が待っているだなんてこれっぽっちも考えていなかった私は心ゆく迄お菓子を頬張った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

処理中です...