目が覚めたら奇妙な同居生活が始まりました。気にしたら負けなのでこのまま生きます。

kei

文字の大きさ
71 / 71

異界ー2

しおりを挟む

「この場所は…‥俺の生まれ故郷に似ている」
「…そうか」

お互い呟くような小声ではちびっ子アイナには届かないのだがそれに気付かない二人は黄昏たまま。アイナにしてみれば聞こえなかった会話よりも今目の前で起こった怪奇現象?を是非とも共有したい気持ちで溢れている。そう、一人よりも三人で分かち合いたいのだ。だから遠慮はしない。

「あれ~この建物、サイズ的におかしくないですか?」
「「……」」

お前いたの?みたいな視線を向けられたアイナは、グッと詰まる。二人のしんみりムードに水を差した自覚はある、あるけれど。
これは口で説明するより見せた方が早いかと思い直す。

「ほら、よーく見てください。奥行きがあるんです!」

ものすごーく嫌そうな顔をした髭オジと訝しむクルクカーンをせっついて内部に入った。

「は? これは…どういうことだ?」
「あ…れ? こんな部屋でしたっけ?」(何か変だよね?)

先に入ったクルクカーンは驚きで硬直し、アイナも自分の記憶と照らし合わせてどうだったか頭を傾げる。
後から入ってきたラグザスは、何かに気づいたか警戒心露わに二人を守ろうと前に出た。彼にしてみればクルクカーンとアイナは守る対象なのだ。

「…お前ら俺の傍を離れるなよ。それと騒ぐな。…どうやら俺達は招かれたみたいだぞ」

ゴクリと嚥下の音が聞こえる。クルクカーンだろう。ラグザスはこの事態に思う事があるのか音量を抑えた声音で二人に注意した。だがアイナは招かれた発言を聞き漏らさなかった。

「あ…オジサ…師匠のお知り合いのお家ですか? もしかしてカラクリ屋敷ですか? すごい、私初めて見ました! 手が込んでますねー。大がかりじゃないですか! へーどういう仕組みなんだろ?」
「クソガキィィ今すぐその口を閉ざせ。出なければお前の口に物を突っ込むぞ」

(うひゃ、怒られた)

低い怒りの沸点の髭オジに大人げないなーとアイナは両手を口に当てお口チャックの仕草で肩を竦める。その様を見たラグザスが内心で呑気でアホな幼女を本気で猿轡してやろうかと苛立っているなど思いもしないで、アイナは隈なく周囲を見渡し、目覚めた場所がどこだったかな? と意外と冷静だ。

「おい、ラグザス。このように変化できるものなのか? …一度、建物から出た方がよくはないか?」
「…いや様子を見た方がいい」

この場の異常性に緊張する二人は気付いていないのかと、アイナはちろりと上目遣いでラグザスを見る。お口チャック中なのだ、目で語ろうとアイナは視線で訴える。

「…何だ? クソガキ。言いたいことがあるのか? お前、ふざけたことぬかせばその口縫うぞ」
「おい、ラグザス。そのような幼子にきつい物言いをするではない。アイナよ、構わぬ、話しなさい」
「あ、お許しでたので。私たちが入ってきた入口は消えてます。壁になってます。ここから移動するならあっちに向かうしかないみたいですよ」

そういってアイナは視線の先にある扉を指さす。入ってきた入口とは違う扉なのは誰が見ても明白。このままここに留まるのがいいのかいつの間にか現れた扉の先に向かうのがいいのか。判断は…

(んー、こういうの何だっけ? 小瓶の液体飲んで体が小っちゃくなって、お茶会に誘われて時計を持ったウサギが走ってる物語)

「ラグザス、お前さきほど口にしていたな…あれは」
「…ああ、転移の前に見た。嘆きの女神が招いた…実は導師の間で語られる伝承があるんだ。神話の時代、神々の争いが起こり世界が分断された…」

(え? 唐突に語り出したよこの人)

アイナはギョッと目を瞬き、思わずといった感じでラグザスを見た。

(壊れちゃった?)

この人、ヤバい人だったかと顔が引きつるアイナ。同調するかのように聞き入るクルクカーンを見上げて溜息がこぼれた。

(私がしっかりしないと!)

アイナは無事元の場所に戻るためには自分が頑張るしかないと。そう決意した。

しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

処理中です...