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第五章 もうゲームとは別物です。
共闘
しおりを挟むジオルドはレティエルについての質問を続けていた。興味本位であったが友人の娘の危機に無償で手を貸したいのは素直な気持ちだ。
「父が言うにはかなりの特殊魔力らしいの。護衛の為に父の私兵を寄越してくれたわ。ライラもそのうちの一人よ。ティに何かあれば彼女が身代わりになる指示が出ていたの。グレインはライラにティの癖を教えていたから、思えば影武者を視野に入れていたのかもね。彼女」
「成程、だからその二人が利用されたんだね」
ジオルドとカレンシアは何故あの二人だったのかと腑に落ちた。
だがアドルフは内情が漏れていたことに憤りを感じていた。ネズミの侵入が許容できるのは情報操作の駒としてだ。敵陣に嘘を掴ませるのに重宝していたのだ。だが今回は違う。エリックの仕業で娘の情報が流され攫われたのだ。怒りが爆発しそうだ。彼は腹の中で憤怒をマグマの様に煮え滾らせ、地獄の炎で燃えカスとなったエリックを想像して溜飲を下げていた。
公爵夫婦もジオルドも解決すべき問題に繋がりを感じていた。
特にジオルドは長い間、打開策を模索していた身。折角の好機到来だ。アドルフ達には悪いが引き込む気満々で今を迎えていた。
夫婦の宝である愛娘にちょっかいをかけた狼藉どもを自分の敵と併せて粛清できれば御の字かと思うジオルドは暫しの共闘を持ちかけた。
「私も君達に協力しよう。僕はエリックの居場所を知っているんだ。ヴァンダイグフ伯爵家。ご老人が孫がやっと見つかったって喜んでいたよ。その当人は怪我と衰弱で療養中。本当かなぁ」
ニヤニヤ厭らしい笑みのジオルドだ。恐らく裏を取った上での発言だろう。
今迄の会話は一体何だったのだ。エリックを消せば済む話を散々謎解きをさせられたのだ。時間と労力を費やして迄のアレの話をしたのは何故か。只の嫌がらせか! 何とも苦々しく思うアドルフであった。
「肉親の情で唆されたか。ヴァンダイグフの爺さんとの繋がりは深そうだ‥‥」
思うことは多々あるが公爵はグッと堪えジオルドにそう言って会話を終わらせる。
「これで誰の差し金か理解したかなアドルフ」
ジオルドがニヤニヤしながらアドルフに謎解きを解いてやったと仄めかすように問うた。ああそうだジオルドは面倒臭い上にうざい奴だったと彼のやり口を思い出した。開き直りも時には大事だとアドルフは自分に言い聞かせる。
アドルフは苦虫を潰したような顔でジオルドの悪趣味を疎ましく思い口を硬く結ぶ。答える気がないという意思表示だ。
「ああ、そうそうアドルフの息子君。どこにいるの?」
ジオルドは唐突に話を切り替える男だ。慣れていても苛つく。今更何の話を持ち出すのだとアドルフは怪訝な顔で答える。
「‥…なんだ。聞いていないのか城の牢だ」
「ははは。面白い冗談言うね。僕を騙そうとしても無駄だよ。牢の中にいるのは別人でしょ」ジオルドは悪戯が成功したガキのように、してやったりと笑う。
「葬儀の時に挨拶した彼が本物でしょ? で、牢の彼は偽物。何時から入れ替わってか知らないけど僕面会にいったんだよ。驚いたよね~魔力の無い彼が魔術展開しているんだからねぇ。あれ、幻影魔術でしょ? また面白いの使役しているんだね」
「はぁーーー。まったくお前はどこまで掴んでいるのだ。お前が知る必要はないだろう」
「あれぇそう言うこと言う? ふーん。そう」
ジオルドは何かを思い付いたと言わんばかりの顔で切りだした。
「ああ、そうそうレティエルは本当に大丈夫なのかい? ネズミが潜り込んでいるんでしょ?」
嫌な事を言い出すジオルドは本当に質が悪い男だとアドルフは溜息を吐く。
「大丈夫だ護衛が付いている。今のところ異変はない。目途が立つまでこのままだ」
「そうかい。わかったよ」
わかっていない顔で返答するジオルドの真意が読めないと警戒するアドルフであった。
ジオルドは勝ち誇った顔で「今なら精神系魔術と変装魔術の使い手がいるよ。技量は僕らが忍び込んだことで実証されたよね」
とんでもないことを言い出した。
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