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第十章 クリスフォード・ラックスファル侯爵領

不気味なものの正体はー①

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うう~む、これ、どう説明しよう‥‥

魔法陣の様式を拙い説明で間違って伝わってはと口籠もる。
‥‥悩ましい。
どうしたものかと躊躇う俺に、悪趣味な装飾の本が差し出された。

‥‥どっから出したソレ?! あっ、そっか。【財布型空間収納】からね。

「レティ、これは現存した魔法陣の図録でね。最終章に術式用の記号や数字が一覧で記載されているからこれを参考にしてご覧?」

義兄の手にはA3サイズの黒みが強い焦げ茶色の革の表紙の書物が‥‥重そう。
趣味の悪い表紙に誂えたのは、頭がトチ狂ったからか? なぜに皮表面を反射の強いクリスタルでデコらせる? 小粒の宝石を散りばめたかのようにキラッキラッ光らせる必要あった?! 

義兄のセンスは壊滅的じゃなかろうか‥‥ちょっと義妹としては心配だわ。



「レティ、ご覧?」

開かれた頁に目を向けると、そこには多彩で綺麗に描かれた魔法陣が紙面に品よく納まっていた。カラフルだけどバランスも良く綺麗な仕上がり。これを書いた職人さんってセンスいいよね?

この世界、印刷技術はまだ開発されていなくて、漸く活版印刷が帝国で広まり始めた。そんなハンドメイドな世界の書物である。これはかなりの高額本とお見受けするよ。そんな本を素手で触って手脂ついちゃったらどうしよう。

魔法術の造詣の深さは、この本から得たのかな? 俺もこれを読んで勉強すれば魔法に詳しくなる? なるなら、これ、欲しい。
いいな~いいな~大事にするからさあ~ 義兄のお下がりでいいからさ~、これちょうだい!


「レティ、そんな欲しそうな目をしてもこれは駄目だよ? まだ魔法術の勉強してないでしょ? さぁ、それよりもいいかい? 時代の新しい魔法陣は頁の初め、遡るほど後半で、最終章は記号などの一覧表だよ。先ずはこれを見て該当記号を捜そうか?」


ちぇ、オネダリな上目遣いでも効き目なしか。



「…この中から探せばいいのね? それなら口で説明するより確実ね」
「お嬢様~、複数でしたよね? 魔法陣。見慣れないと一つ一つ見比べるのは時間が掛かり過ぎて非効率ですよ~」

確かに。でもお前、さり気なく「若なら手早く済みますけど」って言うなや。



「ふむ、では的を絞ろうか。レティ、魔法陣の正確な数や形態はわかる?」
「数に形? えぇ~とぉ、形はサークルね。大きいのが一つに小さいのが、…? やだ、なにこれ?」
「レティ? どうかした?」
「お嬢様、カウント間違えましたね?」
「‥‥‥‥違うわよ」




今まで漠然だった魔法陣を『正確に』と精度を上げるべく集中した。意識を張り巡らせた魔力に向けた途端にネットがサーチ機能を果たしたのか。数と大きさを把握したのだ。

‥‥ほぉ~。自分の優秀さに驚嘆だわ。

もしや、レティエルってハイスペック女子?
学業成績は前世の記憶のおかげで上位成績者。記憶力も良い。淑女教育の賜物、マナーもお手本に成れるほど。自慢じゃないがレベルは高いよ?
‥‥でも、これは? 魔力感知に長け過ぎじゃなかろうか。どんどん感知精度が上がってるよね? それとも元から? 
成長を続けるレティエルの伸び代は未知かも知れない。今度密かに調べよう。


「数は、大小合わせて八つ‥‥でも一際小さいのが‥‥他と異なる形を‥‥あっ、これ! 不快で不気味なものはこれよ!」

最初の漠然さは消え、今でははっきり識別できる。
不気味に感じたものの所在を明確に感知できたのは、ラッキーだった。

明らかな仕様違いの魔法陣、その意味するものは? 考えなくてもわかるだろう、これが術の本体とみて間違いない。‥‥だよね?



「一つだけ異形か‥‥本体の可能性が極めて高いね。レティ、触れずに形態を感知できる?」

用心深い義兄が引き止めず詮索を続けると決めた。レティエルの能力なら問題ないと危険視を止めたか。‥‥判断基準ってなんだろう。


「お義兄様、既に包囲しましたから‥‥これ? 球体だわ」


…‥詮索序でに、このままマルっと包み込んじゃったらダメかな? パックリ食っちゃっうの、あり?


「お嬢様、間違ってもパクッてしないで下さいね? うっかりやっちゃたわ~は無しですよ?」
「…‥‥‥‥‥‥‥…‥‥‥‥‥‥‥わかってるわ」
「何ですか? そのお返事の間。ぷぷ、隠しきれてませんよ?」


隠してねえよ。

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