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第十章 クリスフォード・ラックスファル侯爵領

魔法陣の図録じゃなかったの?

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「吸引した魔力を魔石に移せる?」

えっ? 何て?


「レティ、これも実験だから、気楽にね」
「はあ…わかりましたお義兄様」

義兄の意図が読めず、首を傾げながらも言われた通り実行する。手渡された小粒の魔石は直径2センチ程度の大きさ。微量だしこれで十分とみたのか。あ~確かに、このサイズなら一瞬で済むわ。


「お義兄様、終わりました!」
「えっ、もう? 流石優秀なレティ。早いね。今手渡したばかりなのに」

『おっ?』って感じに目を軽く見開いた義兄。魔石の出来栄えに満足したのだろう。にっこり笑って褒めてくれる。うん、遠慮せずもっと褒めて、褒めて。

ふふふ 魔力注入は練習の甲斐あって手慣れたもんよ。でもこれが?


「障壁だけを吸引、これは? できる?」
「あっ多分無理ですわ。同じ魔力で作られていますもの」
「やはりか。‥‥そうなると魔法陣ごとに分けるのは…‥ふむ」

目的が浮かばない俺は黙って説明されるのを待つしかない。説明義務のある当人はジェフリーとの話し合いに夢中で、俺は放置である。ああ、この感じ。この疎外感はやだな。以前は気にもしなかったのに。浮かれた気分が一気に萎えた。何でだろう? 
自分の意気消沈ぶりを悟られるのが何とも癪で、取り繕った笑顔を張り付けた。
ふん、俺はちょっと拗ねてるんだぞ?


「レティ、待たせてごめんね。ああ、機嫌を損ねたかな? ごめんね。レティを除け者にしたわけじゃないよ? ‥‥許してくれないのかな? そうだね、これからはレティも一緒に考えてくれるかい? そうだよ? レティの力が必要だからね」

拗ねた俺のご機嫌を伺う、低姿勢の義兄。
隠したはずの感情が隠れていなかったようだ。

‥‥あれ? バレてる? おっかしーな? ご令嬢面はなかなか心情がバレないって定評あったのに(当家比)
‥‥でも、まぁ、そこまで言うのなら許してあげても良いよ? 

レティエルは良い子だからね!


俺達を半眼で見守るジェフリーの隠しきれない感情…お前、隠す気ねえな?




「ふふ、ご機嫌は治ったかい、お姫様?」

仕方ないね~、これからはちゃんと気を付けてよ? いい? わかった?

義兄の『ごめんなさい』で気を良くした俺。もう気にしてないよ。
半眼のジェフリー、何? おねむなの?



「では、話をしてもいい、レティ? 吸引した魔力が残っていれば再現可能だったね? あの能力の発動条件を調べてみたい。‥‥どうだろうレティ、実験してみない?」

あ~、それってギルガの手背の紋章だよね? ふざけて吸引しちゃったやつか。

‥‥にしても発動条件? え、何それ? 俺も知りたい。

知的好奇心に抗えるわけがないじゃん! 
義兄の申し出をあっさり受け、面白実験を了承した。



「でも、その前に図録に目を通して類似がないか見て欲しい。少し負担をかけてしまうけれど、レティにしか頼めなくてね‥‥どうだろう?」

ふふん、そうだよね~レティエルじゃないと出来ないよね~、いいよ、いいよ、やったげる。あっ、でも後でちゃんとご褒美ちょーだい!

気前よく二つ返事で請け負った。
義兄のお願いだし。媚と恩を売りたいからね? 売れる時に売っとく精神だからね? 俺は。
そんなお義兄にいちゃん想いの俺に、言い聞かせるようなジェフリーの声。

「あ~あ、お嬢様ってチョロイですね~、簡単に騙されそうで俺心配ですぅ」



嘘こけ。








側に居るだけで義兄の浮かれた雰囲気が伝わってくる。これは珍しいね。
静かにワクワクしてらっしゃる。
やっぱ未知な魔法陣を知るチャンスだもん、期待値爆上がりじゃね?

こうしてみると、魔法術関連が大好きってよくわかるよ。
記憶の中の義兄は親父の後継として多忙な生活を強いられた姿が多かった。それだけに今の姿は新鮮だ。
‥‥今の義兄って、きっとあれだよ。
嬉し過ぎて内心で腹踊り…じゃなくて小躍りしてんだ。



「レティ、一般的な専門書や参考資料には契約魔法陣は掲載されていない。それ以外を載せていてね‥‥と言うより掲載すれば処罰されてしまう」
「えっ?」
「人目に晒せば術を解く者が現れ、契約魔法が使えなくなるからね。技術は門外不出とされている。‥‥と一般的にはね」
「で、でしたら、お義兄様、図録を見ても‥‥えっ?」

どういうこと?! 載ってないのに俺に見せてどうするの? あっ、だから類似って言ってたのか! 似た物を探せってことなの?



…‥冷静に考えればそりゃそうだ。そう言えば、ジェフリーが教えてくれてたっけ‥‥


「あ~、やっぱりお嬢様、お忘れでしたか。もしやと思いましたが俺が正解でしたね~」
「うぐぅ」
「ふふ、気にしなくていいよ、レティ? 一般的な話だからね?」
「‥‥‥‥」


「レティ、見てご覧」

ふぁ~~と目の前に淡い緑色の発光が。
突如、現れた光に目を奪われた。

「わぁ~!」

発光はホンの一瞬の出来事で、直ぐに収束したのだが…‥

えっ? 何これ?!


「レティ、魔法陣の図録集は隠匿と擬態の術を施した魔道具でね。本来は調合器具だよ。ふふ、驚いた?」
「お、お義兄さま‥‥、これ、これが? 調合…器具?!」



いや、どうみても、これは‥…

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