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第十二章 分水嶺
⑨・語るじいじー2
しおりを挟む当時、兄の皇帝が崩御され現皇帝に代替わりした後で国が安定していなかったそうだ。
「皇帝陛下は逆風の中じゃった。儂は陛下を支えるべく粉骨砕身したわい。丁度王国との交易で利を得たのが大きかった。得た富で陛下を支援したんじゃ。それもあって王国への制裁はできんかった。儂らにもしもなどありゃせんが、敢えて当時の陛下にお力があったのなら、王国は即攻め入れられ王族は処罰じゃっただろうな。運が良かったのか儂らの間が悪かったのか‥‥」
「そんなことが‥‥」
「先王時代にも失態を犯していたのですねあの王家は」
底冷えしそうなほどの冷たい声、不機嫌を隠す気もないらしい。
きっと王族を懲らしめる‥‥いや、根絶やしにしそうな予感がビシバシ、戦き顔を背けた。
「王の死があったから儂も溜飲を下げたんじゃて。儂は死因は気にならんかったが皇帝陛下は暗殺説を仄めかされ簒奪者の実力を見たいと望まれたわい。真の力を持つ為政者か権力に魅了されただけかを見極めたいと…‥隙を伺っていたわけじゃ。虎視眈々とな」
な、何かスゴイ人だよね、皇帝って。
それにしても王国は病死説で定着してるのにどうして暗殺と思ったのか。
「‥‥どうして暗殺と思ったの‥‥」
自然と疑問が声に出てた。
「…気になるか? 陛下のご兄弟も御子らも暗殺や不審死で身罷られた経験からじゃろう。それに当時の王太子には婚約者がおらなんだが、何故か急遽選ばれたのが伯爵位の娘じゃった。何ぞ急ごしらえな感が拭えんかったかの。加えて侯爵位の娘が側妃となれば、密約があったと思うのが貴族じゃ」
生家の持つ権力によってはギリ伯爵位OK。でも義兄もお祖父ちゃんもそうじゃなかったと口を揃えて否定した。不自然。では百歩譲って‥‥恋愛としよう。あ、めちゃ渋顔で見られた、違うのね。
王家を支えるのは婚家の役割でもある。王妃や側妃が王族として生家の援助を受けて盛り立てる。レティエルがクリスフォードの婚約者にと、決定打はお金だよ。うちお金持ちだからね。めっちゃ現金な婚約だったのよ。金で買った王妃位? うわ、サイテー。
貴族の婚姻は利害関係重視。悲しいかなこれが現実。
「じゃが‥‥愚か者の子は愚か。いや、一人だけ愚か者か? ううむ、まあよいわ。国益を見越してティと婚約を結んだ馬鹿王子が馬鹿をしおって。これではシアだけじゃなくティまでも王国の者は軽く扱いおってからに。相手を挿げ替えてでもティを王妃にすると示せばまだ許されたかもしれんが。兎に角王国は対応を間違えよった」
ん? お祖父ちゃん不機嫌? どうした?
「儂の可愛い娘を愛妾じゃと?! 愛くるしい孫に婚約破棄じゃと?! 小国の分際で舐めおってからに! 陛下も一度ならず二度もファーレン家を蔑ろにした王国を見逃すわけにはいかんと決断されたんじゃ。舐められたままでは陛下の治世に陰りが差すでのう、甘い対応は足元を掬われるんじゃ」
握った拳が。
「儂に雪辱を晴らす機会を与えて下さった。此度、お主らが良い働きを示せば帝国で厚遇される。でなければ…特にティは軽く扱われてしまう…婦女子には辛い生活が待っておるじゃろう」
え? 何を言ってるのかわからないわ。あ、話はわかるんだけど頭が受け付けない。
何その婦女子に辛い生活って? キョトンとすれば、めっちゃ禍々しいオーラ―を放つ義兄が、
「だからこそレティが」
どうやら恥を雪ぐのは決定事項です。はい。
原因が自分にあったとは露知らず、強制参加をぼやいてゴメンナサイ。自業自得でした、トホホ。
物思いに更ける間に、気が付けばお祖父ちゃんがムカッ腹。
あ、それは‥‥ごめん断罪イベントだからって言っても通じないか。
「ファーレン家を、帝国を甘く見よって。皇帝陛下も攻め入る口実が欲しかったところにティの件じゃて。今度こそはと気が逸ったが皇室の事情で陛下も挙兵できんかった。不穏な動きがあったしのう。それに魔力持ちの誘拐事件も頭痛の種となっておった」
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