転生先は小説の‥…。

kei

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第十二章 分水嶺

⑭・貸し一つー1

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「確かな筋からの情報です。タッカーソンの子息ヴォルグフは特殊能力の回復系。ええ、治療ではなく回復を促進する効果を調合に付与の、回復系ですよ? それも、ふふ、折角タッカーソン当主が必死に隠していた秘蔵の調合師をこんな形で露見してしまうとは当主も何と間が悪い。それをファーレン家に知られ彼の身柄を‥‥ふふ、タッカーソンの事業を傘下に収めてしまえばそれも杞憂ですね」

へ? なんですと? 回復系? って希少な光系統の魔力を持つ人が使える系?
ヴォルグフって水系統だったような? あれ? ちょっと混乱してきたわ。

レアな能力に一瞬脳がフリーズしちゃった。

でもお祖父ちゃんの「何故知っている」と地を這うような低い声を耳にしてハッとした。喉の奥をグウゥと唸らせたとこ、まさに野獣。今にも喰いつきそうな圧を放ってる。

肝心の義兄はお祖父ちゃんの凄みも歯牙にもかけず俺と向き合う。



「レティ、彼は回復魔法は使えないよ。魔力系統が違うからね。水系統の魔力と固有の能力で調合すると回復薬の効能が高くなってね。回復速度が速く効果がテキメンとタッカーソン家の回復薬に付加価値を付けたのが彼」

おーすごい能力! そりゃ七つの魔法陣でガッチガッチに守るわけだー、なるほど納得。解説ありがとう。

‥‥ってか心読んだ?



顔に出てたらしい。







「申し訳ないのですがお義祖父様、確かな者からの情報ですとしか言えません。それから…‥」

お祖父ちゃんがグッと強張った。義兄が何を言い出すのかと身構えたのがわかる。逆に義兄は凪いだ表情でお祖父ちゃんを丸裸にしかかった。鬼だ、爽やかな鬼だ。

「ギルガ…ギルベルト・グリンジャ・タッカーソン。彼もまた密命を受けています」
「ふぉ?!」

思わず声が出ちゃった。二人から何とも言えない視線が。おおぅ、邪魔してごめんなさい。


「彼とはましたら、すっかり、ございます。ふふ、自ら近衛魔導騎士『青の盾』所属だと正体を明かし、証である紋章まで見せて下さったのです。清廉な方だと印象付け、その上で身内に起った悲劇のために奔走した情深さを強調したようでしたが。ふっ。」

んー、紋章? あ、あれか! そういえば手の甲に刻まれた紋章で身元確認したっけ。あの時、思わず紋章を吸引しちゃった。怒られるかなって身構えたけど魔石に移して義兄に手渡したら喜ばれた。そうそう一時的に預けたねぇ。



「皇帝陛下が偲ばせた内偵の者。そう私は愚考致しました」
「…‥」
「え? 内偵? それって仲間を調査する人のことでしょ? まさかギルガはわたくし達の調査を?」

うえー、スパイにスパイされてる事実を聞いたばかりなのに。今度は調査員? どれだけ探られんのよ。

辟易した顔を見たお祖父ちゃんが気まずくなったのか、それは違うと説明が始まった。

ギルガの仕事は皇室の監視。近衛隊に潜む内偵の正体は皇帝しか知り得ないことだそうだ。お祖父ちゃんも今回に限り皇帝から教えられたという。それは計画遂行のためであり、そして「監視ですねお義祖父様」としれっとお祖父ちゃんの役割をポロリした。ポロリ犯は睨め付ける眼光をサラッと躱し涼し気で企んでいる。

義兄、益々お祖父ちゃんに遠慮しなくなってない?


『フゥ――――』肺が空っぽになるほどの溜息を。いやこれもう肺活量測定なみの呼気だよね? そんなに? 大袈裟な落胆にビックリ。

「ラムよ、どうやって知り得たのじゃ。これは皇帝陛下と本人しか知らんことじゃぞ」

ちょ、お祖父ちゃんの雰囲気がガラリ。義兄の返答次第では斬捨て御免、って武士モードに替わってた。
お隣の爺は氷の刃を長ーく拵えて‥‥いや何やってんの?!
後ろの背後のへばり付いた野郎からは息を押し殺した緊張がビシビシ刺さる。一瞬で室内の空気が殺伐とした重いものへと‥‥。


こ、これ、ど、どうしよう!!



「お義祖父様、あまり気を張り巡らすとレティが怯えて「おお?! す、すまんすまんティや」‥‥」
「うひゃい‥‥怒らないでお祖父様」

内心で白目向いた。恐怖で。

凪いだ表情の義兄は今しがた殺気に晒された人だと思えない。

「‥‥符牒。それを紐解いただけです」

にっこり。そう、にっこりとお祖父ちゃんを見つめた。それだけで通じたみたい。俺はわからないけどね!

「‥‥そうか、お主なら可能か」

‥‥ポッキリ。

あ、心の何かが折れた音が、音がした。
え? 何のって?
お祖父ちゃんの虚勢を張る心が、ポキパキ折れた音。
ってのは冗談だけど、両肩が下がった姿を見るとハズしてないと思う。



お祖父ちゃん、どーんまい!
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