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第十四章 王が住まう場所

生きてるけど

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ちょい汚部屋でわくわく気分を味わってたら、ふと『はっ、これはもしやロストテクノロジーは再現できない流れでは?』と冴え渡る頭脳が恐ろしい現実を叩きつけてきた。
ぬおおおーぬか喜びぃぃ?! 
期待からの落胆、振り幅が大きい。悔しさでぐぬぐぬ喉を鳴らす。
でも義兄は、できないことを安請け合いするようなタイプじゃない。

…どういうつもり?

少々、というか、かなり訝る。
表情を取り繕う気もないので折角の美少女が台無しな顔でじとり目を向ける。
これには義兄も察したのだろう。わりと早口で釈明をしだした。

「通説だから。だけど軍事開発の研究者の中では技術の伝承は成されているよ。と言っても理論の上だけれど。先人達の研鑽の賜物を後世の者がその知識と技術を廃れさせてはと研究資料や論文の閲覧は国の許可さえあれば可能だよ? その代わり完成すれば技術提供が課せられるがね。それでも挑まんとする研究者や技師は少なくないんじゃないかな? ふふ、かくいう私も」


このまま一人語りが始まりそうだったので、それは勘弁してとぶった切った。
うん、説明よりも現物ね。
それか作業を見せてよ。

だって説明されてもね。俺が作るわけじゃないし。俺に生産スキルはないよ? 勿論、知識チートな展開もないない。いたってレティエルは普通の公爵令嬢だからね? 白魚の手を労働で荒れさせてはダメな生き物だよ? お嬢様は不労な生き物だからね。基本、養われる生物だから。まあ、ちょこっと小遣い稼ぎやってるけど。


「レティ? どうかした?」
「あ、お気になさらず」



驕ってても魔道具技師として研鑽してんだ。そういうとこエライなと思う。驕ってても。
そういえば、帝国では有名なんだよね? 技師としての名声も。忘れがちだけど義兄って帝国側にとって喉から手が出るほど欲しい逸材。
皇帝も有能で有益な人材義兄を帝国に取り込みたいはず。
でも当時、まだ義兄は王国の公爵家次期当主の身分。いくら皇帝でもごり押し要求は非常識だと理性が働いていたか、魔道具技師として誉めそやすだけ。そう、皇帝のお気に入り技師と周知しただけで済ませた。それに仮に技師として契約を交わしたとしても身柄が王国にあれ…ん? あれば? んん?

…あれ? 今俺、物凄い核心に触れなかった?


疑念が一気に浮上した。
死んでないけど、義兄の暗殺事件。
あれってもしかすると帝国関係者が裏で手を引いてたとか? 誰かは知らないけど帝国に寝返った貴族もいるわけでしょ? 工作活動に手を貸すぐらい平然とやるだろう。

金魚のフン野郎ジェフリーが影武者だって情報も、お祖父ちゃん側から抜かれてたかもしれないじゃん。お祖父ちゃんの秘書ザクワン爺がジェフリーの祖父だよ? 能力バレしてそうじゃん。いや絶対確実にバレてるって。

…お? これは確信突いちゃった感じ? ふふん、自分の冴えまくる頭脳が怖い。魔道具作成から暗殺事件の黒幕に辿り着いちゃった(妄想)よ。ふははは。



「お義兄様の暗殺は、皇帝が黒幕ではございませんの?」

どう? どう? ふふ、想像もしなかった? 

「レ、レティ? 急にどうしたの? …さっきの話、まだ怒ってるの?」
「うわ~、若、殺されちゃってますよ~。ぷっ」

義兄がおろおろしだした。流石に唐突すぎたね。
でもこの際だから…


「お義兄様のファーレン家への養子のお話ですが、そもそもザックバイヤーグラヤス家の後継たるお義兄様に、お母様がお勧めなさったのは本当でしょうか? その…考えれば非常に可笑しなお話ですよね? まさかこうなること義兄の除籍をご存じでいらしたみたいに……? お義兄様?」

突然の話題転換に嫌な顔もせ……えーと、何その顔。

「………ふふ、さあ、どうだろうね?」

うおう、漏れてる漏れてる。ちょい黒い笑み、零れてますよー! 邪悪な何かが漏れてますよー!
これ絶対何か掴んでるよね?!

本来なら、次期当主。そう、牢で暗殺されなければ生きてるけど既定路線はそうだった。
でも、経緯がどうであれ結果的に義兄はファーレン家の養子に…戸籍を使うしかない。
このまま王国で生きるとしてもお家の跡継ぎにはなれない。だって義兄の生存が公になればジオルドの冤罪が露見してしまう。これ、冤罪吹っ掛けた奴にしてみれば、義兄の生存はあり得ないことだ。

そう、生存宣言してない時点で、怪しさ満点なわけ。公爵家の醜聞…どころか攻撃材料になっちゃう。貴族はいついかなる時も利を求める生き物だからね。隙を見せれば食らいつかれるよ? 追い落とせるチャンスは見逃さないよ。

義兄ってちょいちょいお手手真っ黒クロスケにしちゃうからね。叩けば埃どころか闇が出るから。
ん? あ、そっちの線もあったね。単なる恨み妬みからってのも捨てがたい。

…どっちだろ。

まあ、今更か。



母さんやお祖父ちゃんの魂胆は読めないけど。恐らく義兄は留学中の利便性を考慮してだと思う。公爵子息(養子)の立場がおいしいのはわかる。だってマウントとっても許されるからね。いや寧ろマウント取って下さいって強請られる身分だし。しょぼい王国貴族公爵子息でブイブイいわすより、帝国貴族でブイブイいいたかったんだな。きっと。
それにしても。

…これ誰得?

ぞわりとした。

…ファーレン家って、味方なの?

少なくとも義兄は我が家を継ぐ気でいた。暗殺されるまでは。生きてるけど。

「フフ、やられっぱなしって面白くないよね?」

俺の心境を読んだみたい。
にたり。にたりって。
その笑顔を見せられてスンとなった。
うん、ちょっといろいろな感情が…。


どうやら義兄はヤル気のご様子。…何が?と聞いてはいけないやつだ。うん、世の中知らない方がいいこと沢山あるからね。良い子の俺は清濁併吞にっこり笑顔で微笑んだ。



さてそろそろ作業を再開してもらおっか。

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