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第十四章 王が住まう場所

想いをー①

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義兄は話の前に馬車を止め、ミリアとダルに御者台で待機を命じた。

あ、これ、聞かれちゃ拙い話するやつ?

表情は優し気だが、油断はならない。きっと俺に衝撃波ヤバい話をぶちかます気だ。

「レティ、少々確認したいことがあってね。先ほどの話は今日届いた調査報告を踏まえた内容だった。先日、お義祖父様が話された内容と若干の差異を感じ、不安になった? ほら、珍しくレティが感情を震わせたでしょ? 何か思う事があるのなら話を聞くよ?」

あれ、思ってたのと違う?

「みっともない姿をお見せしてしまい、恥ずかしいですわ。もう、お忘れくださ・・・・・・え? お祖父様のお話とのサイ? 才? ・・・差異? え?」

〈義兄〉「え?」
〈レティ〉「え?」
〈二人〉「「・・・・・」」

・・・ふぃぃぃー、思わず見つめ合っちゃったぜぃ。

で、何て?







むう、お互い齟齬があったのか。それすら気付いていなかったよ。とほほ。

「そう。話の食い違いをレティが指摘しなかったのはミリアの手前、遠慮したのだと思っていたよ。それも私の思い違いか。成程。・・・では猶更、感じたことを話して欲しいな。普段、感情を出さない君が、魔力の制御が乱れるぐらいだ。・・・気持ちが昂ったのかな?」

「あ・・・はい。自分の事ですが、少し驚いてます。第一夫人の仕業に憤ったのですが、今にして思えば、そこまで怒りを露わにせずとも。当の夫人を目の前にしたわけでもないのに、感情が抑えられないとは己の未熟さに恥じ入るばかりです」

しょんもり。

これには義兄も。

「私の前では、感情を出しても平気だよ。それに親戚による犯行で、被害者はレティだ。裏切りと非道さに怒りを表しても、この場に咎める者はいない。思う事があるのなら、ここで吐きだせばいい」

と、さり気なく慰めるところが、高・好ポイント。

「それにしても」と考え込むこの切り替えの早さ・・・まあ、大目に見てあげる。

お祖父ちゃん、何言ってたっけ?! と記憶を呼び起こすのに必死だからね。

「もしや、あのキャンディーの影響? 魔量の多いレティだからか? ・・・もう少し検証が必要」

原因を手繰り寄せた義兄と、ギブアップした俺の声は同時だった。

「なんのこっちゃ・・・お義兄様、お祖父様の仰った差異とは何ですの? おーい、聞いてますぅー? お義兄様ー」

もどってこーい。




ハッとした義兄は、俺を見て、咳払いで誤魔化した。あ、テレた? テレたね?

「レティも知っての通り、情報は力だ。価値あるモノから相手を翻弄するモノまで。貴族に限らず情報戦術は昔から使われる手でもある。・・・お義祖父様は、敢えて真実を伏せ、あたかもレティと義母上がファーレン家の家名に泥を塗ったのだと説明なさった。・・・ごめんね、レティ。ファーレン家の調査がまだ終わっていなくて、反論できなかった。それに、お義祖父様の腹の内を探るのを優先して、レティの心情を慮れなかった。ごめんね」


義兄が。そう、義兄が、だよ? 申し訳なさ気に反省の姿を晒している。衝撃的シーンに、つい前世の反省サルを彷彿させたのは、墓場まで持っていかねばならぬ秘密だ。

「ぐふっ・・・。お義兄様、そのように謝らないで下さい。情報の使い方は、重々承知しておりますわ。ですがお義兄様は、お祖父様がわたくしに罪悪感を植え付け、自発的に協力するようにと誘導した。あの口ぶりは、わたくしに祖国を捨てた裏切者ではなく、ファーレン家の者として迎え入れ、武勲を立て凱旋させる腹積もり。だから、指示に従えと仰った・・・そう仰りたいのかしら? お義兄様」

お祖父ちゃんがそうだってなら、義兄だってやりそうだ。あ、でも、義兄に逆らう気はございません。

「流石はレティ。そこまで気付いていたのか。ふふ、頼もしいお姫様だよ。でもね、お義祖父様の場合、歴然とした事実があるからね。お義祖父様は終始、家門のお汚名を雪ぐためだと仰っていたが、ファーレン家に致命傷を与えた第一夫人と実子達の罪状を隠していたでしょう? 調査結果が届いたお陰でレティに対するファーレン家お義祖父様の姿勢が判明したね。正妻と嫡男を廃するほどの罪をレティに償わせるなど。被害者を誰だと思っているのかとお義祖父様に抗議できなくて、すまない」

義兄が謝る必要ないよ。
それと、実子達? 嫡男だけじゃないの?


「・・・調査結果の内容を教えてください。判断材料は多い方が良いのでしょ?」
「もとよりそのつもりだよ。・・・事情が変わったからね。帝国が王国に仕掛けた以上、両国の関係は修復不可能。奇跡が起こって今回の危機を回避できたとしても両国に禍根は残るだろうね。レティ、酷なことと怒らないで。私に悪意はないよ」

へ?! 義兄に悪意がない?! 

「辛いだろうが、レティは父上王国母上帝国のどちらかを選ばなくてはならなくなった。この選択によって、私達の行動は変わる。部下の今後も考慮しなければならない。辛い決断を強いていると、私も理解した上で話をしている。それは、わかってくれるかな?」
「ええ」

ガチだ。これ、ガチなやつだわ。

「その前に、レティに聞きたいことがある。答えてくれるかな?」
「・・・何かしら」

車内が、張り詰めた空気に満たされていくのを肌で感じる。そして、その空気を容赦なく切り裂く義兄の衝撃的な発言が・・・。

「レティは王国の次期女王になりたいの?」

「ぶっふぉ!! ななななな、そそそそそ、いいいい一体、なっ、何を?!」

びっくりしすぎて、脊髄反射で答えちゃった。

・・・そういえば、お祖父ちゃんが、皇帝がなんちゃらって・・・あ、あの話か!

「コホン、失礼。そのお話は、お義兄様がお祖父様に交渉下さって、わ、わたくしの、伴侶は、す、好きにと・・・ですので、わたくしはもう自由(婚活は)だと思っておりましたわ」

うひゃー、カミカミ。

「レティ・・・もしかして、既に好きな男がいるのかな? おかしいな、そのような悍ましい存在を見逃すことはないのだが・・・」

ん? 後半聞き取れなかったよ? 
 
「そのような殿方はいませんわ! やっとの思いで、あのアホ・・・コホン、元殿下の尻拭い役から解放されたのですよ? しばらくは、いえ、あと四年は独り身でいたいの」

義兄はホッとした後、苦虫噛み締めたことないけど、そんな表現がぴったりな顔をしてた。でもその顔、どんな気持ちなの?

「レティに王国を統治する意志はない。のか。実は、レティは優しい子だから、周囲を慮って自分さえ我慢すればと悔しさを呑み込んだのかと思ってね」

うん?

「ほら、レティは長い間、王子妃・・・将来の王妃となるべく努力を重ねてきたでしょ? それこそ趣味に宛がう時間さえも惜しんで。あのアホの補佐を押し付けられ社交に身を投じ、おまけに、社会奉仕に慈善活動と神殿のご機嫌取りも丸投げされたよね?」

おおぅ、あったあった。断罪イベを乗り越えるためだと必死に頑張ったなー。

派閥との関係性も強固なものとすべく、坊ちゃん嬢ちゃんに貢物(スイーツや子供向け商品エトセトラ)配りまくったっけ。地方の特産物とかも取り上げ、領主さんから、めちゃ喜ばれたなー。神殿の奉仕活動は、総神殿長(前)に味方になってもらうためだったけど。

・・・あれ? 話の流れが?

「まだ少女の身でありながら大人顔負けの活躍をしてきたレティは、根底に次期国母だと自覚が芽生えていたからこそ、ではなかったのかな? ねぇ、レティ。君はお義祖父様の前で帝国では魔法術を習い自由を謳歌したいと希望を述べてはいたけれど、本心は別にあったのではないかな?」

ひょー?! 誤解? 誤解されてる?! な、なんで?!

い、言えない! 今更、断罪されたくないから頑張ってただなんて、口が裂けても言えない! 自白の強要で自白剤を飲まされ・・・レティエルは状態異常を無効にしちゃうから、うん、大丈夫だな。 

「お義兄様は、そのように思われたのですね」
「私はね、レティの費やした時間、労力、努力の全てを無駄にさせたくない。そう思っているよ。だけれど、君が笑って朗らかに生きていて欲しいとも願っている。そのためにはどんなことでも・・・」

ひょー、そこまで!

「お義兄様・・・そこまで思って下さっていたのですね。ありがとうございます。で、ですが、わたくしのために無茶はしないで下さい。絶対ですよ?」
「ふふ、レティが無茶をしなければ、問題ないな」
「うう、善処しますわ」


ちょっと、面映ゆい。
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