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エリーゼの祭り
しおりを挟む「それは本当か!?いつだ!いつ彼女をルルシオまで乗せたんだ!」
喜びと急からイフェイオンは男に詰め寄った。
男はそんなイフェイオンを怖いと感じつつも聞かれたことについて答えた。
「五日前、です。ルルシオ、から帰って、きたばかり、です」
声が裏返る。
男は足の力が抜けてその場に座り込みそうになるが、肩に置かれたイフェイオンの手のせいでそれは叶わなかった。
(五日前か……)
今から向かっても、まだそこにいる可能性が高い。
イフェイオンはようやく手に入れた情報に喜びを噛み締めていた。
「ルルシオに行った目的は何か知っているか?」
「いえ、わかり、ません」
男は小さく首を横に振った。
「そうか。教えてくれて感謝する。これは礼だ」
イフェイオンは袋に入った大金を男に渡し、その場から立ち去った。
男は袋の中身を確認するとあまりの大金に驚いて今度こそその場に座り込んだ。
「こ、こわい」
大金をもらったこともだが、イフェイオンの圧も恐ろし過ぎて男には耐え難い時間だった。
「ユリウス。今どこにいる。彼女の場所がわかった。今すぐ宿に戻ってこい」
通信魔法でユリウスを呼ぶ。
「了解です。すぐに戻ります」
ユリウスの返事を聞くと通信を切り、出発の準備をした。
ユリウスは出発の準備が終わる前に帰ってきた。
何も聞かずに出発の準備をし始めた。
二人でしたおかげか、すぐに準備は終わりルルシオに向かって出発した。
荷馬車でルルシオまで四日かかるが、馬なら二日で着く。
だが、イフェイオンたちは戦場で何日も魔物と戦いながら馬の操縦もしていた。
今いるところからルルシオまでの距離なら一日で到着できる。
はやる気持ちを抑えきれず、イフェイオンは馬の速度を上げた。
※※※
「お嬢様。準備はできましたか」
シオンはなかなか準備が終わらなかった私を心配そうに尋ねた。
ここを離れたくないと思っている私に気づいているのだろう。
だが、同じ場所に留まり続けるのは危険だ。
オルサーストのときは、偶然だがイフェイオンがきた。
もし、見つかっていたらと思うと怖くて仕方ない。
いや、イフェイオンだったら気づいていても何も言わず、気づかないふりをしてくれたかもしれない。
これが父親だったらと思うと怖くて仕方ない。
きっと無理矢理連れて帰られ、ひたすら殴られるだろう。
気が済んだら金になる家に売り飛ばされるかもしれない。
間違いなく今も私を探しているだろう。
私がここにずっといれば、街の人たちにも迷惑をかけることになるかもしれない。
それだけは絶対に駄目だ。
迷惑をかけるわけにはいかない。
それになにより、嫌な娘でなく、旅をしているお嬢ちゃんと思われていたかった。
「うん。できたわ。次の場所へ行きましょう」
お世話になった人に別れの挨拶をし、私は二度と乗りたくないと思っていた荷馬車に乗って新たな街へと向かった。
その次も、またその次も、私はシオンといろんな街を訪れた。
国境も越えた。
海が有名な所、音楽が栄えている所、芸術家が多く存在する所、ファッションの最先端をいく所。
数多くの場所を訪れた。
その中でも最も印象に残っている場所はカルオシアの街だ。
ここを訪れたととき、丁度祭りの日と被った。
エリーゼの祭りと呼ばれ、百年も続いているそうだ。
この祭りは少し変わっていて、平民が貴族の真似をして楽しくダンスをする。
外でやるため、会場となる場所は貴族が中でするものとは比べ物にならない質素だ。
だが、それが妙に心地よく美しく見えた。
そもそもこの祭りができたきっかけは、平民のふりをしてこの時期に訪れた貴族の恋人たちだった。
二人は貴族といっても互いに身分差があり、周囲からは祝福されない関係だった。
そんなとき身分を隠して街へ訪れ、仲良くなった平民たちと踊り、自分たちの愛を確かめた。
それがこの祭りができたきっかけだと言われている。
本当の話かはわからない。
その貴族が実在しているのかも。
でもそんなものはどうでもいいのかもしれない。
この祭りはみんなが笑っていて、楽しいのだから。
社交界とは全然違う。
偽りの仮面を被り、人を陥れ、嘘ばかり吐くような場所とは。
似て非なるものだ。
彼らが羨ましい。
貴族なんかに産まれなければ、私も幸せな日々を暮らせたのだろうか。
そんな想いがふと頭をよぎったが、すぐに消えた。
そんな'もし'の世界は存在しないし、今の自分が消えるわけでもない。
今の私にできることは残りの時間を精一杯生きること。
悲しみは捨て楽しいことだけに集中した。
知らない人と踊り、たくさん話した。
社交界で貴族たちが踊るような踊りだけでなく、腕を組んでクルクル回り、パートナーを変えて踊るという初めての体験もした。
間違いなく私は旅をした中で、この日が一番楽しかった。
一番印象に残っている。
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