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僕こと王太子ルシフには悩みがあった。
悩みの種は僕の婚約者であり、王家に次いで尊いとされる公爵家の令嬢アーデルハイトだ。
僕とアーデルハイトは幼少期の段階から、国王である父上によって決められた婚約関係にあった。
そう、王命によって仕方なく付けられた婚約だ。
彼女はそんな僕に、一滴の愛情も注いでくれなかった。
さらに優秀さ、美しさ、淑やかさから、貴族たちに『この世で最高の淑女』『王妃に最も相応しい女性』と褒め称えられていた。
そんな彼女に、僕は事あるごとに叱られていた。
話し方がなっていない。
文字の書き方がなってない。
頭の下げ方がなっていない。
食べ方がなっていない。
歩き方がなっていない。
彼女が近くにいる場所でため息をひとつ吐いただけで、嫌味を言われるほどだ。
顔を合わせるたびに今度はどんな説教を受けるのか、考えるだけで憂鬱だった。
しかしそんな灰色の日常は、あの日から少しずつ彩られていった。
貴族の息子・娘や、市民の中でも優秀な人間の通う名門校。
王族である僕も通っているのだが、今年の新学期にズレアバという女子生徒が入学した。
入学式で彼女と出会ってから、僕は生まれて初めて恋というものを経験した。
ズレアバは王城から出ることの少ない僕に、街の色んなことを教えてくれて、彼女の話はとても楽しかった。
そして至らないながらも、王太子として頑張っていることに対して尊敬してくれた。
彼女との時間はこれまでにないくらい幸せなものだった。
そんな日常が過ぎていくなかで、ある日ズレアバが僕に相談を持ちかけてきた。
なんとズレアバは、僕と仲良くなりだした頃から、アーデルハイトに嫌がらせを受けるようになったのだという。
ズレアバは孤児院から養子に出された元平民、さらに実家は男爵家であることで、その出自と家族を罵倒され、いじめられているそうなのだ。
僕は驚き、激怒した。
常日頃僕を叱りつけているのは、王太子という重い立場だからというのは分かる。
だが彼女は違うだろ。
王族の役割は彼女たち国の民を守り、導いてあげること。
完璧なレディと謳われていた女性のやることか?
僕からズレアバを…ようやく手に入れられた幸せを奪うつもりか?
許せなかった。
だからズレアバに約束した。
僕とアーデルハイトが学園を巣立つ今年の卒業式。
その後に開かれるパーティーで、奴に婚約破棄を告げる。
ズレアバを虐げた悪行を断罪し、僕たちで新しく婚約を結ぼう。
ズレアバは二つ返事で承諾してくれた。
そして自力で調べてきたらしき数々の証拠を僕に預けてくれ、これだけあればアーデルハイトを断罪できると確信し、卒業式が一週間後にまで迫る。
喜びを押さえきれない。
学生生活最後の日、僕の念願がふたつも叶う。
僕はアーデルハイトの呪縛から解放され、ズレアバとの幸せをこの手につかめるんだ!
「いいやその幸せ、間違いなく破綻するぞ。」
……そんなとき、あの男が現れた。
悩みの種は僕の婚約者であり、王家に次いで尊いとされる公爵家の令嬢アーデルハイトだ。
僕とアーデルハイトは幼少期の段階から、国王である父上によって決められた婚約関係にあった。
そう、王命によって仕方なく付けられた婚約だ。
彼女はそんな僕に、一滴の愛情も注いでくれなかった。
さらに優秀さ、美しさ、淑やかさから、貴族たちに『この世で最高の淑女』『王妃に最も相応しい女性』と褒め称えられていた。
そんな彼女に、僕は事あるごとに叱られていた。
話し方がなっていない。
文字の書き方がなってない。
頭の下げ方がなっていない。
食べ方がなっていない。
歩き方がなっていない。
彼女が近くにいる場所でため息をひとつ吐いただけで、嫌味を言われるほどだ。
顔を合わせるたびに今度はどんな説教を受けるのか、考えるだけで憂鬱だった。
しかしそんな灰色の日常は、あの日から少しずつ彩られていった。
貴族の息子・娘や、市民の中でも優秀な人間の通う名門校。
王族である僕も通っているのだが、今年の新学期にズレアバという女子生徒が入学した。
入学式で彼女と出会ってから、僕は生まれて初めて恋というものを経験した。
ズレアバは王城から出ることの少ない僕に、街の色んなことを教えてくれて、彼女の話はとても楽しかった。
そして至らないながらも、王太子として頑張っていることに対して尊敬してくれた。
彼女との時間はこれまでにないくらい幸せなものだった。
そんな日常が過ぎていくなかで、ある日ズレアバが僕に相談を持ちかけてきた。
なんとズレアバは、僕と仲良くなりだした頃から、アーデルハイトに嫌がらせを受けるようになったのだという。
ズレアバは孤児院から養子に出された元平民、さらに実家は男爵家であることで、その出自と家族を罵倒され、いじめられているそうなのだ。
僕は驚き、激怒した。
常日頃僕を叱りつけているのは、王太子という重い立場だからというのは分かる。
だが彼女は違うだろ。
王族の役割は彼女たち国の民を守り、導いてあげること。
完璧なレディと謳われていた女性のやることか?
僕からズレアバを…ようやく手に入れられた幸せを奪うつもりか?
許せなかった。
だからズレアバに約束した。
僕とアーデルハイトが学園を巣立つ今年の卒業式。
その後に開かれるパーティーで、奴に婚約破棄を告げる。
ズレアバを虐げた悪行を断罪し、僕たちで新しく婚約を結ぼう。
ズレアバは二つ返事で承諾してくれた。
そして自力で調べてきたらしき数々の証拠を僕に預けてくれ、これだけあればアーデルハイトを断罪できると確信し、卒業式が一週間後にまで迫る。
喜びを押さえきれない。
学生生活最後の日、僕の念願がふたつも叶う。
僕はアーデルハイトの呪縛から解放され、ズレアバとの幸せをこの手につかめるんだ!
「いいやその幸せ、間違いなく破綻するぞ。」
……そんなとき、あの男が現れた。
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